事件番号・通称事件名 |
広労委平成27年(不)第9号
山陽測器不当労働行為審査事件
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申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成28年12月9日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、組合の組合員であるA2に対して、平成27年
11月13日付けで行った解雇(以下「本件解雇」という。)は、A2が組合加入したこと、組合員であること又は正当な組合活
動をしたことを理由として、会社が不当労働行為意思を持って行ったものであり、不当労働行為に該当するとしてに救済申立てが
なされた事件である。
広島県労働委員会は、会社に対し、平成27年11月13日付け解雇の取消し及び原職復帰並びに組合への文書交付を命じ、そ
の余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人会社は、申立人組合員A2に対する平成27年11月
13日付け解雇がなかったものとして取り扱い、同人を原職に復帰させなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から2週間以内に下記の文書を申立人組合に交付しなければならない。
記
年 月 日
組合
執行委員長 A1様
会社
代表取締役 B1
当社が、貴組合所属の組合員のA2に対して、平成27年11月13日付けで解雇したことは、広島県労働委員会において、労
働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないようにします。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 申立人組合のその余の申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 組合活動の正当性
A2は、26年3月15日の組合加入後、本件申立てに至るまで、6回の団体交渉に出席し、2回の社前闘争に参加している
が、これらは正当な組合活動と認められる。
2 解雇について
(1) 解雇の合理性について
① A2組合員のミスを書きとめたとする報告書によっても、A2組合員のミスが毎日のようにあったとまではうかがわれず、ま
たA2組合員の主たる業務内容からして、そのミスが解雇に値する程度のものとは認められない。
② 会社が能力不足について、回復の見込みが乏しいと判断するためには、社員の能力不足を改善するため、十分な教育指導をす
る努力が求められるが、本件解雇に至るまで十分な教育指導が行われたとはいえず、回復の見込みが乏しいとまで認めることはで
きない。
③ 会社が、A2組合員の配置転換等を検討するなど、何らかの措置を講じたことを認めるに足る疎明はなく、A2組合員の雇用
関係を維持する努力を十分にしていたものとはいえない。
④ A2組合員に対する指導のほとんどは口頭によって行われていた中で発せられた「わかりません」「できません」「やめてく
ださい」といったA2の発言をもって、再三の注意に従わず、社員として協調性にかけるとまで認めることはできない。
したがって、会社の主張する解雇理由は、客観的に合理的な理由に該当しない。
(2) 解雇の相当性について
会社は、要望書の提出もまた解雇の相当性を根拠づけるものと主張するが、従業員から要望書が提出されたことが、直ちに解雇
の相当性を根拠付けるものとは認められない。
(3) 以上のことから、会社の主張するA2の解雇理由に客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性を認めることはできな
い。
3 不当労働行為意思の存否
会社は、26年4月9日解雇予告を26年4月18日に撤回した後も、当該解雇予告を決定することとなった解雇相当の評価は
変わらず、その後も解雇の意思を持ち続けているが、本件解雇はA2組合員が組合員であることと無関係であると主張する。
① 報告書の作成について
B1社長は、26年4月18日の第2回団体交渉において26年4月9日解雇予告を撤回した直後から、社員の労務管理のた
め、社員のミス等を記録する報告書の作成を役員及び役職者に指示したが、報告書は、A2組合員だけを対象にしたものではな
かったと主張する。
しかし、報告書を作成した時期は同団体交渉直後であり、また、同組合員と職場を同じくするB5社員やB6社員は役職者でな
いにもかかわらず、報告書の作成に関わっていたことを考え併せると、同団体交渉において、訴訟になった場合に解雇の正当性を
立証する証拠が不足していることから26年4月9日解雇予告を撤回せざるを得なかった会社が、解雇を正当化する証拠を集める
ため、同組合員を狙い撃ちにした報告書を作成し、解雇のための証拠集めを行ったと認められる。
② B3部長の発言から、会社は組合活動を嫌悪する意思を持ち続けていたと認められる。
③ 会社が、A2組合員の解雇又は配置転換を求める社員の要望書を奇貨として、直ちに、C1弁護士と協議し、27年10月
26日の役員会で解雇を決定しており、会社の不当労働行為意思が認められる。
④ 本件解雇は、27年10月1日の第1回社前闘争、同年11月5日の第2回社前闘争等、組合活動が極めて活発な時期等に近
接し、相前後して決定、実施されたものである。
また、会社は、26年3月11日解雇予告の決定の前に遅刻を理由とする懲戒(譴責)処分を行い、さらに当該解雇予告時期に
は、退職日を半年程度猶予していたが、組合加入後の26年4月9日解雇予告では、解雇日を同年4月30日とし、さらに本件解
雇では、27年11月13日に即日解雇したものである。
以上のことから、本件解雇は、会社が組合活動を嫌悪し、社内の唯一の組合員であったA2を早急に会社から排除しようとした
ものと認めるのが相当である。
4 不当労働行為の成否について
以上のとおり、A2組合員の解雇について、解雇に客観的に合理的な理由や社会通念上の相当性は認められないこと及び会社に
組合を嫌悪する不当労働行為意思が認められることから、A2が組合員であること及び正当な組合活動をしたことを理由とした不
利益取扱いであると認めざるを得ず、労働組合法第7条第1号に該当する。
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掲載文献 |
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