労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  広島地裁平成29年(行ウ)第6号
山陽測器不当労働行為救済命令取消請求事件
原告  株式会社X(「X社」) 
被告  広島県(処分行政庁・広島県労働委員会) 
被告補助参加人  Zユニオン(「Z組合」) 
判決年月日  平成30年2月27日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、X社が、Z組合の組合員であるA1に対して、平成27年11月13日付けで行った解雇(「本件解雇」)は、A1が組合加入したこと、組合員であること又は正当な組合活動をしたことを理由として、X社が不当労働行為意思を持って行ったものであり、不当労働行為に該当するとしてに救済申立てがなされた事件である。
2 広島県労働委員会は、X社に対し、本件解雇の取消し及び原職復帰並びに組合への文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。
3  X社は、これを不服として広島地裁に訴訟を提起したところ、同地裁はX社の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 
判決の要旨  1 X社に不当労働行為意思があるといえるためには,本件解雇の動機が,A1がZ組合の組合員であること又はZ組合の正当な行為をしたことにあると認められる必要がある。
2 B1部長がZ組合のホームページの削除を求めた際の言動は,組合又はその正当な行為に対する嫌悪感が現れたものと評価することができる。また,本件解雇が決定される直前には,従業員からA1の解雇又は配置転換を求める要望書(「本件要望書」)の提出がなされているところ,その動機も,Z組合又はその正当な行為に対する嫌悪感が現れたものと評価することができる。
  B1部長がX社の取締役であることや,従業員が,X社代表者に対し,事情を説明の上,本件要望書を提出していることからすると,X社代表者は,これらの嫌悪感を認識した上で,本件解雇を決定したということができ,A1がZ組合の組合員であることやZ組合の正当な行為を行ったことが動機の一つであると推測することが可能である。
もっとも,X社は,A1がZ組合に加入するより前に,A1の解雇を決定し(前回解雇),その方針を変更することなく本件解雇に及んでいることから,本件解雇の動機の全てが,A1がZ組合の組合員であること又はZ組合の正当な行為にあるということはできない。
  したがって,複数の解雇の動機が推測できる場合において,不当労働行為意思があると評価できるためには,いずれの動機が決定的であるかを判断し,労働者が組合員であることや組合活動を行ったことが決定的であるといえる場合には,不当労働行為意思があると評価できると解される。
3 本件解雇の解雇理由書に記載された事実のうち,A1の勤務態度の不良をいう部分については,X社に採用された平成14年10月3日から前回解雇の決定された平成26年3月10日までの約12年間,解雇の決定がされることはなかったというのであるから,本件解雇が理由として掲げるA1の勤務態度の不良は,X社にとって重大な影響を与えるものであるとは直ちには評価できないこと、また,前回解雇の理由とされた遅刻については,前回解雇以降,本件解雇に至るまで発生していないから,本件解雇は前回解雇と比較すれば,A1の勤務態度に関していえば改善された上でなされたものと評価できること、さらに,X社は前回解雇の撤回からA1を解雇する方針を変更していないから,A1に対する指導は,解雇回避の可能性のない状況でなされた形式的なものにすぎないものである疑いが残ることから、本件解雇を決定したX社の動機においても,A1の勤務態度の不良が決定的な理由に当たるとみることには疑問がある。
  他方,本件解雇の解雇理由書には,その理由として従業員がA1の解雇を要求している状況を挙げているけれども,従業員による解雇要求の動機は,別件救済命令の存在及びZ組合が行った社前闘争にあることがうかがえるから,従業員によるA1の解雇要求を,A1の普通解雇の理由と捉えるのは表面的に過ぎ,その動機にA1がZ組合の組合員であること又はZ組合の正当な行為を行ったことにあると位置付けるのがより本質的であると評価できる。
  そして,X社代表者は本件要望書を受け取った当日である平成27年10月13日にB2部長やB3弁護士との打合せを行い,同月21日にもB3弁護士と協議をしてA1を解雇する方針を決めていることからすれば,本件解雇の契機は本件要望書が提出されたことにほかならず,その上,X社代表者は本件要望書の作成等のきっかけが別件救済命令の報道であるとの説明も受けていたから,本件解雇の時期の決定は,A1がZ組合の組合員であること又はZ組合の正当な行為を行ったことにあると推測することが可能であり,この推測を覆すに足りる事情は認められない。
4 以上によれば,X社が本件解雇をした動機は,A1がZ組合の組合員であること又はZ組合の正当な行為をしたことが決定的であると認められるから,本件解雇は,X社の不当労働行為意思をもって,すなわち,A1がZ組合の組合員であること又はZ組合の正当な行為をしたことの故をもってされたことを認めることができる。したがって,広島県労働委員会の判断は相当であるから,本件救済命令は適法である。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広労委平成27年(不)第9号 一部救済 平成28年12月9日
 
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