概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成26年(不再)第42号 富山通運不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
組合 |
再審査被申立人 |
会社 |
命令年月日 |
平成28年10月19日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、会社が、① 平成25年4月9日に富山県労働委員会(「富山県労委」)のあっせんにおいて、組合員であるAら5名について、今後、就労を依頼しない旨を述べたことが解雇の通告であって労働組合法(「労組法」)第7条第1号の不利益取扱いに当たり、② Aら5名に対する解雇等を議題とする団体交渉申入れに対し、平成24年12月28日付け回答書によって拒否し、その後も応じなかったことが同条第2号の団体交渉拒否に当たる不当労働行為であるとして、組合が、平成25年8月6日、富山県労委に救済申立てを行った事件である。
2 初審富山県労委は、平成26年8月8日、本件救済申立てを棄却する命令書を交付したところ、これを不服として、組合は、平成26年8月19日、本件再審査申立てを行った。 |
主文 |
本件再審査申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 会社が、平成25年4月9日に富山県労委のあっせんにおいて、Aら5名について、今後、就労を依頼しない旨述べたことは、解雇を通告したといえるか。解雇を通告したといえる場合、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たるか。
(1) Aら5名の就労は、月平均6日を限度とするものであり、中には月平均で1.5日という者もおり、就労期間も長期とはいえず、全く就労していない月もあったこと、就労の依頼に応じるか否かについては各人の意思に委ねられていたものであることが認められる。そして、組合の「出勤ができる時には返事をして仕事に就いていました」というビラの内容からすれば、Aら5名も、日々雇用の労働者として上記のような就労の実態を承知した上でこれを前提に会社で就労していたと認められることも併せ考えれば、会社がAら5名に対して将来にわたって就労を依頼すべき雇用関係があったとはいえず、会社がAら5名に就労を依頼しないことについて、従前の雇用関係を前提とする解雇あるいは雇止めなどとは評価できないというべきである。
このように、会社がAら5名に就労を依頼しないことについて、従前の雇用関係を前提とする解雇や雇止めなどとは評価できない上、富山県労委のあっせんは、組合側と会社側に個別に事情を聴取するという形で進められたものであり、組合が指摘する会社の発言は、このような手続の中で、会社があっせん員に対してその考えを述べたものにすぎない。
(2) また、会社がAら5名に就労を依頼しなくなった(平成24年7月20日以降)のは、そもそも同人らが組合に加入したことを認識する(同年10月3日)前なのであるから、会社が、同人らに就労を依頼しないことは、組合員であることや組合活動を理由としたものとはいえず、不当労働行為意思は認められない。
(3) 以上によれば、会社が富山県労委のあっせんにおいて就労を依頼しないと述べたことは、解雇の通告とはいえないし、実際にも就労を依頼していないことについて、会社の不当労働行為意思は認められず、労組法第7条第1号に当たるということもできない。
2 会社が、組合に対し、Aら5名に対する解雇等を議題とする団体交渉申入れについて、団体交渉に応じるつもりはない旨の平成24年12月28日付け回答書を送付し、その後も団体交渉に応じなかったことは、労組法第7条第2号の団体交渉拒否に当たるか。
(1) 平成24年10月3日付け団体交渉申入書を皮切りとするAら5名の解雇(就労の依頼をしなくなったこと)の撤回等を求める組合に対し、会社は、同月9日付け回答書等により、Aら5名は日々雇用のアルバイトであるから、同人らに就労を依頼しないことは解雇に当たらない旨をその都度説明し、続く同年12月4日の団体交渉においても同様の説明を繰り返し行っている。
そして、会社は、同団体交渉において、以上の説明に加えて、Aら5名は日々雇用のアルバイトであるから、継続的に就労を依頼すべき関係にはないこと、就労を依頼しなくなったのは、Cを通じた就労の依頼をめぐるトラブルの発生や弁護士からの違法行為になるとの指摘を受けて、法的に疑義のある方法ではなくハローワークを通じた正規の手続により求人を行うようになったことなどが理由であるとして、就労の依頼をしなくなった経緯や理由について説明してもいる。これに対し、組合は、就労の依頼をしないことは不当であるとして従前のようにAら5名に就労の依頼をするよう重ねて要求したが、会社はそれには応じられないとして、結局交渉は進展しなかった。
以上に加え、上記1でみたとおり、そもそも会社がAら5名に対して将来にわたって就労を依頼すべき雇用関係があったとはいえないことも加味すれば、会社は、同団体交渉終了時点において、就労の依頼をしなくなった理由や就労を依頼すべき雇用関係がないことについて書面及び口頭での回答を既に尽くしたというべきであり、就労を依頼すべき関係の有無という前提問題において大きな見解の隔たりが存在していた以上、それ以降の団体交渉の進展も見込まれない状態に至っていたといわざるを得ない。そして、同団体交渉後の労使間でのやり取りをみても、以上の状態に変動が生じ、改めて団体交渉の開催が必要となったと認めるべき事情も見当たらない。
したがって、会社が、労使双方の見解の違いを理由として、団体交渉に応じるつもりがないとする同月28日付け回答書を組合に送付し、その後も団体交渉に応じなかったとしても、正当な理由がなかったとまではいえない。
(2) 以上のとおり、会社が、組合に対し、Aら5名に対する解雇等を議題とする団体交渉申入れについて、団体交渉に応じるつもりはない旨の平成24年12月28日付け回答書を送付し、その後も団体交渉に応じなかったことは、労組法第7条第2号の正当な理由のない団体交渉拒否に当たるとはいえない。 |
掲載文献 |
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