概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成27年(不再)第28号 桐蔭学園不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
学園 |
再審査被申立人 |
組合 |
命令年月日 |
平成28年10月5日 |
命令区分 |
取消 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、学園がAを実習担当から外したこと及びAの雇用を継続しないことについて審議するとしたことが労組法7条1号の不当労働行為に当たるとして神奈川県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審神奈川県労委は、学園がAを実習担当から外したことは、Aが組合の組合員であることを理由とする処分であり、労組法7条1号の不当労働行為に当たるとして、学園に文書手交を命じ、その余の申立てを棄却する旨の初審命令書を交付したところ、学園がこれを不服として再審査を申立てたものである。 |
主文の要旨 |
初審命令を取り消し、これに係る再審査被申立人の救済申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 学園がAを実習担当から外したことは、同人に対する不利益な取扱いといえるか
実習担当から外されることは、専任講師としての経験・実績を積み、評価を受ける機会を逸することを意味するから、明らかに不利益である。
専任講師が担当科目から外されたという事実を学生や他の教職員に知られた場合、精神的不利益を被る可能性も否定できない。
2 学園がAを実習担当から外したことは、同人が組合の組合員であることを理由とするものといえるか
(1) 学園がAを実習担当から外す決定をした時点で、学園はAを組合の組合員だと認識していたか
ア 学園がAの組合加入通知を受領したのは25年7月16日であり、学園がAを実習担当から外す決定をした後である。
イ 学園は、上記決定以前、Aを学園の運営等について批判的・非協力的な教職員グループの一員であると認識していた上、そのグループの主要メンバーの組合加入通知を受領してはいたが、通知のあった主要メンバーは学園からけん責処分を受けた者と同一であり、Aはけん責処分を受けていなかったから、その通知をもって学園がAも同時に組合に加入したと認識したと認めるのは困難である。
ウ 学園は、上記決定以前、Aが大学構内で行われたビラ配布等の組合活動に参加したことは認識していたが、その組合活動には学生も参加しており、非組合員であっても労働組合の活動に賛同・協力することは一般にありうるから、Aが組合活動に参加したことを認識したからといってAも組合員であると認識できるわけではない。
エ 組合代表者は、上記決定以前、団体交渉において、Aは組合員である旨の発言をしたが、その発言の趣旨は必ずしも明確ではないし、その直後の学園と組合との間には学園がAを組合員であると認識したことをうかがわせるやりとりもない。
(2) 学園がAを実習担当から外す決定をした経緯及び理由について
ア Aが担当を外された実習はヨット操縦を内容としていることから、学園が受講生の生命等の安全確保が図れるか否かを判断要素の一つとしたことには十分合理性がある。
イ Aを実習担当から外す決定をした時点では、学園がAを前記教職員グループの一員であると認識し、上記決定以前、教授会において、学科長が組合を誹謗中傷する発言をし、学部長がその発言を黙認したことが認められる。
しかし、学園は、Aが前記組合活動に参加した後にAを実習担当に指名し、実習の安全性に疑問が呈された後も、いきなり上記決定をしたわけではなく、学科長からAに安全性に関する疑問点を具体的に指摘し、その解消に向けて再考を促したにもかかわらずAの対応が不十分であったことなどから、実習中止を決めたが、その後、Bから主担当となって実習を実施してもよい旨の提案があったことから、それを機にAを担当から外して実習を実施することを決めたのであり、学部長や学科長が上記決定を主導したわけではない。
ウ 以上によれば、Aが組合の組合員であることを理由に学園がAを実習担当から外す決定をしたと認めるのは困難である。 |
掲載文献 |
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