概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成26年(不再)第45号 島崎エンジニアリング不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
東京地本 |
再審査申立人 |
支部 |
再審査被申立人 |
会社 |
命令年月日 |
平成28年10月5日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、① 平成24年6月4日(以下「平成」の元号を省略)から同年12月3日までの間の6回にわたって申入れがなされた、労働条件や重要な経営施策の事前協議・同意制度に係る協定締結の要求等についての団体交渉に関する会社の対応、② 同年8月2日に取締役が支部組合員3名に対して行った、管理職に就任する場合には全日本金属情報器機労働組合(当時。28年1月31日に発足したJMITUの前身)(以下「JMIU」という。)を脱退してほしい旨の発言、③ 24年9月24日に取締役が支部組合員2名に対して行った、すぐにJMIUを脱退してほしい旨の発言、④ 同年12月4日に会社が組合に対して行った、申入れ等については会社における労働組合として行うよう求める旨の回答等が労組法7条の不当労働行為に当たるとして、東京地本及び支部(以下「組合」)が東京都労委に救済を申し立てた事案である。
なお、支部組合員は、申立外株式会社島崎製作所の元従業員であったが、同社の破産及び会社への事業譲渡に伴い、同年2月22日付けで同社を解雇され、同日付けで会社に雇用された。
2 初審東京都労委は、前記1の②及び④は不当労働行為に当たるとして、文書交付を命じ、その余の申立てを棄却したところ、組合は、棄却部分を不服として、再審査を申し立てた。会社は、上記命令を履行し、再審査を申し立てなかった。 |
主文 |
本件各再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 団体交渉に関する会社の対応の労組法7条2号該当性
組合は、会社が、回答書や団体交渉の席上において、労働条件や重要な経営施策の事前協議・同意制度に係る協定締結の要求に応じられない旨回答したことは、組合と会社との労使関係を否定するものであり、不誠実な対応であると主張する。
会社は、組合の上記協定締結の要求や、重要な経営施策について労使の共通の理解と合意に基づき協力して実行できる体制創設の要求に対して、24年6月12日付け及び同年10月3日付け各書面や団体交渉の席上において、いずれの要求にも応じられないと回答した。しかしながら、会社は、組合に対し、上記各書面において、労働条件の決定・変更及び解雇は法律上定められた手続に則って行うこと、事業所統廃合は経営上の必要性等に鑑みて迅速に行うこと等、組合の上記協定締結の要求に応じられないとする理由を明らかにし、また、経営施策について、労使の共通理解が望ましい点は否定しないとして、組合の上記労使合意に基づく実行体制創設の要求に一定の理解を示しつつ、あくまで経営の専権事項と考えるとの会社の見解を明らかにして、理解を求めていた。これに対し、組合は、団体交渉の席上等において、会社の組合の上記各要求には応じられないとする上記理由や上記見解に対して、何ら根拠を示して反論等を行うこともなく、一貫して、労働条件の変更は組合と協議して実施すべきであると主張して、繰り返し上記協定締結や上記労使合意に基づく実行体制創設を要求するばかりであり、交渉は歩み寄ることなく、平行線をたどった。 会社は、組合の上記協定締結の要求を受け入れ、あるいは、譲歩する義務まで負うものではないところ、上記経緯に照らすと、組合に対して、上記協定締結の要求に応じられないとする理由や見解を十分説明し、理解を求めていたのであり、合意には至らなかったものの協議は尽くされたと認められる。また、こうした会社の対応が、労使関係を否定する趣旨でなされたものと認めることはできない。したがって、会社が、組合の上記協定締結の要求に応じなかったことをもって、不誠実な対応であると評価することはできず、組合の上記主張は採用できない。
他に組合が不誠実であると主張する会社の対応をもっても、不誠実な対応であると評価することはできず、団体交渉に関する会社の対応は、労組法7条2号に該当しない。
2 24年9月24日に取締役が支部組合員2名に対して行った発言の労組法7条3号該当性
組合は、取締役が24年9月24日、支部組合員A及びBのそれぞれに対し、すぐにJMIUを脱退してほしい旨発言し、同人らは同日、JMIUを脱退したと主張する。なお、Aは、支部執行委員長であったところ、同月1日付けで管理職に就任したこと等を理由に、同月11日の支部執行委員会の場から、同席していたJMIU関係者の指示により退席させられ、その後、同月14日、支部執行委員長を辞任するに至ったものである。
取締役が、同月24日、支部組合員名簿を確認した際、Aの名前が記載されていたことから、Aに対し、組合の会議の場から退席させられたと聞いたけれども、まだ上記名簿に名前が載っているねと声を掛けたことが認められる。
この点について、Aの後任として支部執行委員長に就任したCは、① Aが、同日、取締役から早くJMIU脱退届を提出して来いと言われたので持ってきたと述べて、同脱退届を提出した旨、② Bは、同日、他の従業員に同脱退届の用紙を作成してもらい、これに署名し、当該従業員を通じて同脱退届を提出したところ、当該従業員は、Bが取締役から早く同脱退届を提出して来いと言われたと述べていた旨記載した陳述書を提出する。しかし、Cは、取締役の発言を直接聞いたものではない上、A及びBの各陳述書によれば、両名はいずれも会社から脱退工作を受けたことを否定しており、Aは組合から脱退を求められているように感じて、また、Bは支部と上部団体であるJMIUとの関係に不安を感じて、それぞれ同脱退届を提出したことに照らすと、Cの上記①及び②の陳述は信用できず、他に、同日、取締役がA及びBのそれぞれに対して、すぐにJMIUを脱退してほしい旨発言したと認めるに足りる証拠はない。
したがって、取締役が同日、A及びBのそれぞれに対し、すぐにJMIUを脱退してほしい旨発言した事実は認めることはできないから、労組法7条3号の不当労働行為は成立しない。 |
掲載文献 |
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