労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  島崎エンジニアリング 
事件番号  都労委平成24年不第26号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合東京地方本部、同島崎製作所支部 
被申立人  株式会社島崎エンジニアリング 
命令年月日  平成26年7月15日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成24年2月22日、申立外会社Aは、破産手続開始の申立てをするので、全従業員を解雇すると発表し、同日付で従業員らは被申立人会社との間で臨時就労契約を締結した。Aは、破産手続の中で、営業権と工場の資産を会社に事業譲渡した。その後、従業員らを組織する申立人組合は、会社に対して団交を申し入れた。会社は同年7月30日付けで経営陣を一新した上、8月上旬、従業員と面談し、9月1日、正式な雇用契約を締結した。
 本件は、①24年2月22日から12月4日までの間に、組合が申し入れた労使関係のルール作り等に関する団交について会社が誠実に対応したか否か、②会社の社長及び取締役が組合の支部執行委員長らに対して組合からの脱退を強要したか否か、③12月4日付け会社回答書記載の文言が組合支部の組織・運営に対する支配介入といえるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は会社に対し、文書交付及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社島崎エンジニアリングは、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人全日本金属情報機器労働組合東京地方本部及び同全日本金属情報機器労働組合東京地方本部島崎製作所支部に交付しなければならない。
年  月  日
  全日本金属情報機器労働組合東京地方本部
  執行委員長 X1 殿
  全日本金属情報機器労働組合東京地方本部島崎製作所支部
  執行委員長 X2 殿
株式会社島崎エンジニアリング
代表取締役 Y1
  平成24年8月2日の面談で、貴組合の組合員であるX3氏、X2氏及びX4氏に対し、当社の取締役が、リーダーへの就任を受諾する場合は組合を脱退してほしいと発言したこと、並びに当社が、12月4日付回答書に、「今後、当社に対する申入れ、要求等については、島崎エンジニアリングにおける労働組合として行うよう求める。また、今後は当社として島崎製作所支部としての申入れに対しては回答義務のないものとし、回答をしない場合のあることを付言する。」と記載したことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
  (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)

2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団交における被申立人会社の対応について
 認定した事実によれば、平成24年2月24日、3月2日、同月13日及び同月28日付けの団交申入れに対して、会社の前社長Y2は、知らない、交渉は申立外会社Aの社長とやってくれなどと回答し、団交が開催されても、A側から社長及び弁護士等が出席するのみで、会社側は欠席しており、結局、会社は団交申入れに一切応じていない。したがって、上記団交申入れに係る会社の対応は、会社においてAから事業譲渡がされたことによる運営上の混乱が生じていたとしても、正当な理由のない団交拒否に当たると評価せざるを得ない。
 しかし、会社はその後、対応に遅れを取ったことを率直に認めている。また、7月30日にY2は退任し、新たな役員が就任した。そして、本件申立て後の6月13日に開催された第3回団交以降の団交については、会社の委任を受けた弁護士のほか、7月30日に就任した役員等も団交に出席し、申立人組合からの要求に対し、一応の回答をして誠実に対応していることが認められる。したがって、会社の上記団交拒否については、現時点においては、もやは団交を命じる必要性は消滅しているし、この点についての文書交付を命じる等の救済措置を講じる必要性も認められないというべきである。
2 組合支部執行委員長X3らに対する脱退強要について
 平成24年8月2日、会社は、X3と面談し、管理職として品質保証チームのリーダーへの就任を依頼し、会社の取締役Y3が、受諾する場合は組合を脱退してほしいと伝えたところ、X3はリーダーへの就任を承諾した。その際、X3が本件申立てが一段落するまで組合活動を続けたいと申し出たところ、会社の社長Y1はこれを了承し、X3が支部執行委員長にとどまったまま、リーダーになることを認めている。
 以上の事実を考慮すると、上記Y3の発言は、即座に組合からの脱退を求めるものではなく、支部執行委員長と管理職の併存をも認めるものであり、会社が組合からの脱退強要を企図して行ったものであるとまで評価することはできない。
 しかし、組合を脱退してほしいというY3の発言自体が組合からの脱退を勧誘して組合活動に影響を及ぼすものであり、リーダーに就任することを理由として組合を脱退するよう求めて、本来、組合員の範囲という組合の自主的な決定に委ねられるべき事項に介入する行為として看過することはできず、支配介入に該当するといわざるを得ない。
 当時の組合支部副執行委員長X2らに対するY3の発言についても、同様である。
3 会社の平成24年12月4日付け回答書記載の文言について
 24年12月4日、会社は組合に対し、年末一時金等の要求に対する回答書を提出した。そこには、「今後、当社に対する申入れ、要求等については、島崎エンジニアリングにおける労働組合として行うよう求める。また、今後は当社としてA支部としての申入れに対しては回答義務のないものとし、回答をしない場合のあることを付言する。」という記載があった。
 会社は、これについて、会社の従業員が雇用契約を締結した以後に労働組合を結成した事実がなく、会社の従業員により結成された労働組合という実態を有した団体が存在していないことを理由として求めているものであるとの見解を示している。
 しかし、支部が会社に雇用される労働者によって組織された労働組合であることについて、会社が組合との団交や文書のやり取りを通じて認識し得たことは明らかである。確かに、当時の支部の規約には「この支部は、・・・株式会社A及びその関連会社に働く・・・の組合員で組織します」という記載があったが、形式上の問題にとどまるというべきで、組合が団交の当事者となり得ないほどの不備であるとはいい難い。また、11月6日の団交において、Y1が「組合の名前を変えてほしい」と発言し、その上で、会社の上記回答書が提出されていることから、会社は、組合支部の名称についても問題視していたものといえる。
 したがって、会社の上記回答書記載の文言は、組合支部からの団交等の申入れに対しては回答義務のないものとする可能性を示唆して、本来、支部が自主的に決めるべき事項に不当に介入したものであって、組合の自由かつ自主的な判断を侵害する支配介入であると評価するのが相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成26年(不再)第45号
島崎エンジニアリング不当労働行為再審査事件
棄却 平成28年10月5日
 
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