概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成26年(不再)第43・44号 東海旅客鉄道(組合掲示物撤去等)不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人[43号] |
会社 |
再審査申立人[44号] |
組合 |
再審査申立人[44号] |
関西地本 |
再審査申立人[44号] |
本件分会 |
再審査被申立人[43号] |
組合 |
再審査被申立人[44号] |
会社 |
命令年月日 |
平成28年7月6日 |
命令区分[43号] |
取消 棄却 |
命令区分[44号] |
棄却 |
重要度 |
1 本件は、会社による以下の行為がそれぞれ不当労働行為に当たるとして、大阪府労委に申立てがあった事件である。
(1) 会社が、24年1月27日から同年2月27日までの間に、本件分会を含む6分会の組合掲示板から、6点の掲示物(本件掲示物)を延べ9回にわたり撤去(本件掲示物撤去)したこと。
(2) 会社が、① 本件掲示物撤去に関する関西地本の24年2月6日付け団体交渉申入れに応じず、② 苦情処理会議の非公開に関する組合の同月17日付け団体交渉申入れ(本件団交申入れ)に応じなかったこと。
(3) 会社が、本件掲示物撤去に関する9件の苦情申告(本件苦情申告)について苦情処理会議を開催しなかったこと。
2 初審大阪府労委は、前記1の(2)②は不当労働行為に当たるとして、会社に対して文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、会社は、救済部分(同(2)②)を不服として、組合、関西地本及び本件分会(組合ら)は、棄却部分の一部(同(1)及び同(3))を不服として、それぞれ再審査を申し立てた。 |
主文 |
1 初審命令主文第1項を取り消し、これに係る救済申立てを棄却する。
2 平成26年(不再)第44号事件再審査申立人らの本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 争点(1)(本件掲示物撤去は、組合らに対する支配介入に当たるか)について
(1) 本件掲示物は基本協約第291条及び第292条に違反するかについて
会社と組合が締結している包括的な労働協約(基本協約)第291条及び第292条には、苦情処理会議の非公開及び秘密厳守が定められているところ、基本協約上、苦情処理会議の内容を広く公開することが許されないことは、従前より会社における労使の共通認識となっており、組合らにおいても、苦情処理会議の内容については、少なくとも掲示物を掲出する方法では公開しないという取扱いをしてきたことが認められる。
会社においては、期末手当の額が勤務成績によって増減されることとされており、「勤務成績が良好でない者」とされた場合や懲戒処分を受けた場合には、一定の減率が適用されて(減率適用)、支給額が減額されるところ、本件掲示物には、苦情処理会議で明らかにされた組合員らに対する減率適用の理由が個別具体的に記載されていたのであって、基本協約第291条及び第292条の趣旨、従前の取扱い及び労使の共通認識に鑑みれば、本件掲示物は両条に違反するものであったといえる。 (2) 本件掲示物は基本協約第228条に定める撤去要件に該当するかについて
本件掲示物は、基本協約第291条及び第292条に違反するものであり、その掲出により職場規律を乱すおそれがあったといえる。また、組合らは、苦情処理会議の非公開に関する従前の取扱いや労使の共通認識を変更することについて、あらかじめ会社の了解を求めたり、協議を申入れたりすることなく、一方的に本件掲示物を掲出した。そうすると、組合が組合活動の一環として減率適用問題を重視し、これに取り組もうとしたこと自体は理解できるものの、その手段として本件掲示物を掲出することが相当であったということはできないから、本件掲示物は、基本協約第228条に定める組合掲示物の撤去要件のうち、「職場規律を乱す」との要件には該当するものであったといわざるを得ない。
(3) 本件掲示物の撤去手続について
会社は、関西地本及び本件分会らに対して、本件掲示物は基本協約に違反する旨通告し、自主的撤去を要請するなど、一定の手続を踏まえており、撤去手続が相当性を欠くとまではいえない。
(4) 結論
以上のとおり、本件掲示物は基本協約第228条の撤去要件に該当するものであり、その撤去手続も相当性を欠くとまではいえないから、本件掲示物撤去は、組合らの運営に支配介入するものであったとはいえず、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当しない。 2 争点(2)(本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか)について
基本協約第291条の解釈に関する本件団交申入れに対し、会社が幹事間折衝で先議した上で、例年8月から9月に行われる基本協約改訂交渉とは別に単独の団交を行わないとの方針を示したことは、協約解釈をめぐる過去の事例の処理や、本件申入れ事項の性質等に鑑みれば、不合理であるとまではいえない。そして、本件団交申入れ以降の組合の対応や、その後の基本協約改訂交渉において4回にわたり協議が行われ、会社が不当な意図をもって団交を延期したとも評価できないことも併せ考えると、会社が、本件団交申入れに対し、速やかに団交を開催しなかったことが、正当な理由のない団交拒否に当たるとまではいえないから、会社のかかる対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
3 争点3(会社が、本件苦情申告について苦情処理会議を開催しなかったことは、組合らに対する支配介入に当たるか)について
基本協約上、苦情処理会議は組合員個人の苦情を原則として対象としているところ、本件苦情申告の苦情は本件掲示物撤去に関するものであり、集団的労使関係に属する苦情であって個人の苦情とはいえないこと等からすると、本件苦情申告の事前審理において、会社側幹事が苦情処理会議の開催に同意しなかったことには相応の理由があるといえ、また、苦情処理の手続においても会社の対応に不当な点はないことからすると、会社が苦情処理会議を開催しなかったことは、組合らの運営に不当に介入するものであったとはいえず、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当しない。
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掲載文献 |
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