労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第30号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社({会社」) 
命令年月日  平成28年8月26日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社から解雇を予告され、その後、解雇を撤回された後、組合に加入した組合員の採用時の部署への復帰等を求める平成27年1月19日の団体交渉(以下「27.1.19団交」という。)、同年2月27日の団体交渉(以下「27.2.27団交」という。)、及び同年3月31日の団体交渉(以下「27.3.31団交」という。)の中で、会社が、①採用時の部署への復帰を前提とする協議は行わない旨回答し、②解雇に関しては解決済みであるとして解雇理由を説明せず、③当該組合員の担当していた業務等について事実と異なる虚偽の説明を行うなど、誠実に対応しなかったことが不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件であり、大阪府労委は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 27.1.19団交、27.2.27団交及び27.3.31団交における会社対応は、不誠実団交に当たるかについて
(1)会社が、A組合員の貿易部への復帰に関する協議に応じなかったとの組合の主張について
① まず初めに最初の2回の団交における会社対応について見ると、会社は、2回の団交において、組合の要求に対してそれが出来ないこと及びその理由についての会社見解を述べ、A組合員に不足している点を指摘するなどしており、組合の要求に対し、誠実に対応しているといえる。
② 次に、27.3.31団交における会社対応についてみると、同団交には、組合の求めに応じて社長が出席し、社長からも、会社には「営業・業務・配送」の仕事しかなく、A組合員の仕事ぶりからして、A組合員の雇用を継続するためには、向いているかどうかの問題ではなく、配送の仕事しか残っていない旨等、説明したことが認められ、会社はA組合員を貿易部に復帰させることができないこと及びその理由について、会社としての見解を述べているといえる。
③ 加えて、27.3.31団交の終了に至る経緯を見ると、社長が、本件解雇予告とその撤回に至った経緯を説明したところ、A組合員が「もう話す気はない、とても残念だ。都合がよいように組み立てているだけだ。」と述べ、さらに、組合は、会社の対応を受け、今後の展開については、訴訟を含め組合として考える旨述べて、団交が終了したこと、が認められる。
 そうすると、組合と会社との間で、A組合員を貿易部に戻すことについての議論が平行線になった結果、組合が自ら団交を打ち切ったものといえる。
 なお、組合は、27.2.27団交で会社に対して書面による回答を求めたところ、会社が27.3.11文書で、A組合員を貿易部に復帰させることを前提とするのであれば、協議に応じかねる旨回答してきたことが、団交拒否というものである旨主張するので、併せて検討すると、同文書には、確かにA組合員を貿易部に復帰させる前提の協議には応じかねる、との記載があり、現時点において、会社は貿易部への復帰の可能性を論ずることすら意味がないと考えているとの見解が示されてはいるが、他方、会社と組合との見解の隔たりが相当大きいことを踏まえてなお、組合が団交で議論を求める場合は、拒否しない旨、記載されていることが認められ、さらに、会社は、27.3.18団交申入書の提出を受けて、27.3.31団交に応じていることから、同文書の回答内容が、直ちに団交を拒否しているとはいえない。
④ 以上のとおりであるから、A組合員の貿易部への復帰に関する協議について、本件3回の団交における会社の対応は不誠実であったとはいえないため、組合の主張は採用できない。
2 会社が、本件解雇予告に関する疑問点等について回答しなかったとの組合の主張について
① 確かに、27.1.19団交において、組合が本件解雇予告について、不明な点が多いとして、事実関係について確認したいと求めたところ、会社は、当初、本件解雇予告は撤回されているので解決済みと考えている旨、回答したことが認められる。
 しかしながら、本件解雇予告が撤回された際、A組合員は社長に対し、同通知に至った経緯に疑問があるとしつつも、本件解雇予告の撤回に感謝し、大阪において、会社に貢献できるよう業務に取り組みたい旨のメールを送っていることが認められ、また、その後、26.12.26団交申入書の要求事項には、本件解雇予告の問題点の指摘はなく、27.1.19団交までの間に、A組合員及び組合がこの点について、会社に説明を求めた等の事実の疎明はないのであるから、会社がこの時点で、本件解雇予告については、解決済みであると認識していたとしても不自然であるとはいえない。
 さらに、27.1.19団交において、上記回答後、A組合員及び組合の質問に対し、会社は、A組合員が貿易部の職務を全うできなかったため、チャンスを与えるために名古屋に異動させたが、そこでも職務を全うできなかったので、本件解雇予告に至った旨及びそれを撤回した経緯を、説明していることが認められることから、組合が主張するように、会社がこの件について、27.1.19団交において回答を拒否したとはいえない。
② なお、念のため、その後の団交におけるやりとりについてみると、27.2.27団交においても、組合が解雇を撤回した背景を知りたい旨述べたところ、会社はA組合員がチャンスを求めたからであると理由を説明したことが認められる。
 さらに、27.3.31団交においても、会社は、組合の求めに応じて社長が出席した上で、本件解雇予告とその撤回については、社長は、A組合員に提案した配送の仕事を拒否されたため、3か月猶予を与えるから他社に就職してもよいと勧めたが、この提案についても拒否されたので本件解雇予告を行うしかなかった旨、(略)自分がA組合員を貿易部長、人事部長に面談させることとし、貿易部以外でも良いというのなら、本件解雇予告を撤回しても良いと伝えたところ、A組合員が頑張る旨述べたため、本件解雇予告を撤回した旨、組合に説明したことが認められ、本件解雇予告を行った社長が、組合の要求に応じて、説明を直接行っているといえる。
③ 以上のことからすると、会社は、本件解雇予告の疑問点について、27.1.19団交の冒頭で、既に解決済みと考えている旨発言したものの、そのように発言したことに不自然な点はなく、これに加えて同団交は勿論、その後の2回の団交においても、組合が事実確認等を求めたことに対して、その都度、一定の回答を行っており、誠実に対応していたと言うべきである。さらに、27.3.31団交では、社長自らも団交に加わり、より詳細かつ具体的に経緯や会社の見解を繰り返し回答するなど誠実に対応していることが認められるから、この点にかかる組合の主張は採用できない。
3 会社が事実と異なる内容を述べたとする組合の主張について
  組合が、虚偽の説明とする8項目はいずれも、会社が、3回の団交を通して、組合の要求や追求に対し、本件解雇予告から撤回に至る経緯及び貿易部に戻すことができない理由等について、自らの認識や見解とそれらを維持する理由を組合に説明していたものと見るべきであって、組合とは異なる見解を団交の場で発言したことが、直ちに不誠実な態度に当たらないのは明らかであり、組合のこのような主張には理由がない。
4 以上のことから、組合の主張はいずれも採用できず、27.1.19団交、27.2.27団交及び27.3.31団交における会社対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるとはいえない。  
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成28年(不再)第47号 棄却 平成29年10月4日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約257KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。