労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成26年(不再)第57号
国立高等専門学校機構不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  組合 
再審査被申立人  機構 
命令年月日  平成28年8月3日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、平成24年2月に、国家公務員の給与が臨時的に減額されることになり、文部科学省(以下「文科省」という。)から機構に対し必要な措置を講ずるよう要請したことを受けて、機構が、組合に対し、教職員の給与について、国家公務員に準じた措置(以下「臨時減額支給措置」という。)を実施する旨の提案を行ったことを端緒とした事案で、① 国(文科省)が、機構を含む国立大学法人等における給与減額に関する団交を拒否したこと(労組法第7条第2号)、及び機構に対して給与減額の要請等を行ったこと(同法第7条第3号)、② 機構が、同年5月28日、6月13日及び同月22日の給与の臨時減額支給措置に係る団交(以下、順に「第1回団交」、「第2回団交」及び「第3回団交」といい、これらを併せて「本件団交」という。)において誠実に対応しなかったこと、第3回団交をもって交渉を打ち切り、以後6月30日までの団交に応じなかったこと(同法第7条第2号)が、それぞれ不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労働委員会は、国(文科省)は労組法上の使用者に当たらず、また、機構の団交における対応は不当労働行為に当たらないとして、申立てを棄却したところ、組合が、機構に対する申立てを棄却した部分を不服として、再審査を申し立てたものである。  
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件団交における機構の対応は不誠実団交に当たるか。
 (1) 機構は、本件団交及びその事前交渉において、組合が要求した資料そのものではないとしても、組合の要求の趣旨に沿って、各交渉日までに準備できる範囲の資料を提示し、また、資料の提示に代えて、組合の求める繰越金や積立金の現状等を説明し組合の理解を求める対応をとっており、これらの資料等をもとに実質的な交渉が可能であったといえることから、資料提示に関する機構の対応は、不誠実であったとまではいえない。
 (2) 機構は、組合に対し、運営費交付金が削減される可能性があることや、人件費7.8パーセント相当分の削減の根拠等につき、適宜資料も示しながら具体的に説明しており、これらの説明をもとに交渉が可能であったといえるから、臨時減額支給措置の提案根拠の説明に関する機構の対応は、不誠実なものであったとはいえない。
 (3) 臨時減額支給措置の不実施を求め、物件費の削減による人件費減額の抑制等の対応を求める組合に対し、機構は、本件団交において、臨時減額支給措置の早期実施が必要であること及びその実施時期の根拠等を一定程度説明し、また、これに加えて、同措置の実施時期を遅らせることにより、実質的に組合の要求に一定程度対応したとみることができ、こうした機構の対応は、不誠実なものであったとまではいえない。
 (4) 以上に述べたような機構の対応は、不誠実なものであったとまではいえず、労組法第7条第2号の誠実交渉義務に違反するものとはいえない。
2 第3回団交をもって交渉を打ち切り、以後の団交に応じていない機構の対応は正当な理由のない団交拒否といえるか。
 (1) 第3回団交までの経過をみると、組合は、機構に対し、代償措置に関して質問等は行っていないし、具体的な意向等も示していない上、第3回団交の時点でも、臨時減額支給措置について、運営費交付金の削減は想定や予想の話であり、削減されてから対応すべきである旨の主張を行っている。また、第3回団交における組合の機構に対する団交申入れをみても、組合は、6月30日までに次回団交を開催するよう申し入れてはいるが、臨時減額支給措置の7月1日実施のための具体的提案があるのかとの機構の質問に対し、持ち帰り検討したいと述べるのみで、代償措置等への言及はなされておらず、次回団交における具体的な交渉事項も何ら明示していなかったのであるから、組合の団交申入れは、それまで機構が組合に申し入れて行った3回の団交におけると同様に、臨時減額支給措置の実施そのものを団交事項とするものであったと解するほかはない。
 (2) そうすると、臨時減額支給措置の必要性やその実施時期に関わる組合と機構との交渉は既に十分になされてきたところ、第3回団交の終了時点においては、機構は、財政面での努力が限界に近づいた状況にあった上、同措置の実施手続面でも時間的に切迫していたことから、財政面でのさらなる対応を図る時間的余裕が乏しくなっており、しかも、機構としてはかかる状況につき団交において具体的な説明や回答を行ってきたのであるから、そのような中で、従前と同じ団交事項についてこれ以上交渉を重ねても交渉の進展は見込まれず、交渉は行き詰まりの状態に達していたものと認めることができる。
 (3) 以上のとおり、第3回団交の時点において、組合と機構の交渉は行き詰まりの状態に達していたものと認められるのであるから、機構が組合の6月30日までの次回団交開催の申入れに対し、臨時減額支給措置の7月1日実施を前提としない限り拒否するという対応をとり、それ以後の団交に応じていないことは、正当な理由のない団交拒否とまではいえず、労組法第7条第2号の団交拒否には当たらないと判断される。  
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成24年不第45号 棄却 平成26年10月21日
 
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