概要情報
事件名 |
国立高等専門学校機構 |
事件番号 |
都労委平成24年不第45号 |
申立人 |
全国大学高専教職員組合 |
被申立人 |
独立行政法人国立高等専門学校機構、国(文部科学省) |
命令年月日 |
平成26年10月21日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
平成24年2月、「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」が成立し、国家公務員の給与が臨時的に減額されることとなった。本件は、その後、①被申立人国が被申立人法人に対し、役職員の給与の削減を要請し、削減状況に関する調査を実施したこと等、②国が国立大学等法人の賃金引下げ問題についての団交を拒否したこと、③役職員の給与の減額に関する団交における法人の対応は、不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
東京都労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 被申立人国の使用者性について
国は、被申立人法人に運営費交付金を交付し、組合員にはこれを財源とする給与等が支給されていることから、法人の給与等支給額の決定について影響力を有していると認められる。また、国は、平成24年3月、法人に対し、役職員の給与について、国家公務員の給与見直しの動向を見つつ、必要な措置を講じるよう要請した。
しかし、これに伴い、法人が申立人組合と交渉し、給与の減額等を決定しようとしたのに対して、国がその減額の時期や金額を具体的に指示したとの事実を認めることはできない。また、国は、法人の人員配置、労働時間管理、服務上の規律等の人事労務管理を行っていない。
以上のとおりであるから、国が組合員の基本的労働条件等について雇用主である法人と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配決定することができる地位にあるとはいえず、労組法上の使用者に該当すると評価することは相当でないというべきである。したがって、国が使用者であることを前提とする組合の申立ては、その余の点について判断するまでもなく、いずれも採用できず、棄却を免れない。
2 団交における法人の対応について
組合は、法人が本件給与減額の提案について包括的抽象的な説明に終始していた上、平成24年7月1日実施を前提に話合いを行うのであれば、団交に応じるが、本件についてはこれで実施させていただくとして、6月22日をもって団交を打ち切ったことは極めて不誠実であると主張する。
しかし、認定した事実によれば、法人は給与減額に関して一定の説明をしており、また、組合の要求に応えるための物件費削減と人件費確保の努力についても説明し、組合からはそれ以上の具体的な追及や質問もなされていないのであるから、包括的抽象的な説明に終始していたとの組合の主張は採用することができない。
また、法人が同年3月21日の団交で給与減額を提案したのに対して、組合は、運営費交付金が減額されるかどうか分からない以上、提案を受け入れることはできないと主張した。組合はその後の事前交渉においても、法人の説明は仮定の話ばかりで協議にならないと述べ、6月22日の団交でも、削減は想定や予想の話であり、削減されてから対応すべきであると発言している。このような組合の基本姿勢からすると、これ以上団交を重ねても交渉は進展せず、行き詰まりの状態に達していたものと考えられる。
以上のとおりであるから、本件給与減額に関し、組合に対して一定の説明を行った上で、7月1日実施はやむを得ないとして6月22日をもって団交を打ち切った法人の対応は、不誠実な団交ないし正当な理由のない団交拒否に当たるとまでいうことはできない。 |
掲載文献 |
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