概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成27年(不再)第22号 鶴岡学園不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y(「法人」) |
再審査被申立人 |
X(「組合」) |
命令年月日 |
平成28年7月20日 |
命令区分 |
全部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、大学の期限付きの教授であったA組合員(雇止め時66歳)及びB組合員(同65歳)(「両組合員」)の雇止めを議題とする平成25年4月11日及び同年5月23日の団体交渉(「本件団交」)において、両組合員を再雇用しなかった理由等について事実と異なる説明を行ったこと、法人のC理事長ら3名を本件団交に出席させなかったこと等が不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
2 初審北海道労委は、法人が本件団交において両組合員を再雇用しなかった理由について事実に即した十分な説明を行わなかったことは、労働組合法(「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、法人に対し、誠実団体交渉応諾及び文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却したところ、法人は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件初審命令主文第1項(誠実団体交渉応諾)及び第2項(文書掲示)を取り消し、これに係る本件救済申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件団交における法人の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
(1) 両組合員の雇用契約に関する説明
両組合員について、それぞれの雇用期間の満了後も雇用が継続されることが約束されていたと認めるべき証拠はないこと等からすると、両組合員は特段の事情がない限り68歳までの雇用が約束されていたとする組合の主張は採用できず、この点につき、法人が事実と異なる説明をしたとは認められない。
法人は、本件団交において、両組合員の雇用契約の内容や大学における教員の雇用方針等について、組合の質問に対して相応の説明をしていたほか、組合の要求した就業細則や大学の職員数に関する資料の提出にも応じており、両組合員の雇用契約に関する説明に係る法人の対応が不誠実であったとは認められない。 (2) 両組合員の再雇用を審議した理事会及び人事調書の作成経過に関する説明
平成24年12月18日の法人の理事会で両組合員を再雇用しないことが承認された旨の議事録が作成され、両組合員が所属していた学部のD学部長は同議事録に押印していること等からすると、同日の理事会において両組合員の人事は保留となったとする組合の主張は採用できない。
法人が、本件団交において、両組合員の再雇用を審議した同日の理事会及び同理事会に提出された人事調書の作成経過について、事実と異なる説明をしたということはできず、かえって、これらの事項に関し、組合の質問に対して相応の説明をしていたものと認められるので、法人の対応が不誠実であったとはいえない。 (3) 両組合員を再雇用しなかった理由に関する説明
C理事長が、平成24年11月頃、管理栄養士の国家試験対策に非協力的であるとして両組合員以外に名前を挙げたE教授(両組合員と同じ学科の教授)については、同年12月18日の理事会において、その再雇用の扱いを保留とされ、再雇用の可能性が残されていた。また、B組合員は、平成23年12月頃から、管理栄養士国家試験対策室のF室長の方針と異なる意見を述べたことがあったが、その後の平成24年4月には雇用契約が更新されている。そうすると、法人は、両組合員の再雇用に当たって、国家試験対策への姿勢を特に問題にしていたとは認められず、このことが両組合員を再雇用しなかった理由であるとする組合の主張は採用できない。 法人が、本件団交において、両組合員を再雇用しなかった理由について、事実と異なる説明をしたということはできず、また、組合の質問に対して相応の説明をしており、これに対して組合が更なる質問ないし協議を求めたことは認められない。よって、両組合員を再雇用しなかった理由に関する法人の対応について不誠実であったとは認められない。
(4) 以上のとおり、法人は、本件団交において事実に即して組合の質問に答えているほか、組合の要求に応じて団交に必要な資料を提供する等相応の対応をしており、その対応が不誠実であったとは認められない。
2 したがって、本件団交における法人の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。 |
掲載文献 |
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