労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  鶴岡学園 
事件番号  平成26年道委不第2号 
申立人  札幌地区労連・ローカルユニオン結 
被申立人  学校法人鶴岡学園 
命令年月日  平成27年4月24日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人の運営する大学で専任教員として勤務していたX2及び同じく嘱託職員として勤務していたX3は、法人から平成25年3月末をもって雇用期間満了により退職となる旨の通知を受けた後、申立人組合に加入した。本件は、組合員X2及びX3の上記雇止めを交渉事項とする団交において、法人が①組合が理事長Y1ら3名の団交への出席を求めたにもかかわらず、出席させなかったこと、②組合が求めた、平成22年4月に定年年齢の変更を内容とする就業規則の改定がなされたときの労働者過半数代表の氏名の開示に応じなかったこと、③X2及びX3を再任用しないこととした理由等について虚偽の説明をしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 北海道労委は法人に対し、X2及びX3を再任用しなかった理由について十分な説明を行い、団交に誠実に応じること及び文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が申し入れたX2組合員、X3組合員に対する雇用期間満了に伴う雇止めを交渉事項とする団体交渉において、同人らを再任用しなかった理由について、事実に即して十分な説明を行い、団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、次の内容の文書を縦1メートル、横1.5メートルの白紙にかい書で明瞭に記載して、被申立人学園校舎の正面玄関に、本命令書写し交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
記(省略)
3 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人法人の理事長Y1ら3名を団交に出席させなかったことについて
 本件団交には、法人側から事務局長Y3、事務局次長Y4ほか3名が出席しているが、Y3及びY4はいずれも法人の理事であり、平成25年度の大学の人事に関する事務の担当者として本件団交事項に関する経過にかかわっており、また、事務局長の地位は法人の就業規則上、所属長として位置付けられていることからすると、Y3及びその補佐をする立場のY4は法人の見解を説明することができ、かつ、本件団交に関する権限を法人から委ねられていたといえる。したがって、申立人組合が指定したY1ら3名を団交に参加させなかったことをもって団交拒否あるいは不誠実な団交であるとはいえない。
2 労働者過半数代表の氏名の開示に応じなかったことについて
 X3に関していえば、組合が問題視する平成22年4月の就業規則の改定は、同人との雇用契約締結以前のものであるから、この改定によって同人の雇用条件が影響を受けることはなく、団交事項である同人の雇止めとの関連性は低いといえる。
 また、X2との関係でいえば、仮に同人に68歳まで雇用契約が継続される合理的期待を認めることができれば、定年年齢を65歳に切り下げる就業規則の改定は同人の雇用関係に影響するものといえるが、本件団交の直接のテーマは25年3月末をもって雇用期間を終了することの是非であるから、労働者過半数代表の氏名は本件団交事項と密接な関連をもつ事項とまではいえない。
 そして、法人は第2回団交において、こども発達学科の教授1名と事務方の者1名が労働者代表として署名している旨を説明しており、団交事項との関連性に鑑みると、この程度の説明があれば、不誠実な団交態度とまで評価することはできない。
3 団交における説明について
 X2及びX3を再任用しなかった理由について、法人は、任期満了を迎える者が受け持っていた授業に他の専任教員らが対応できる場合にはできるだけ雇用契約を更新しないという方針を採っており、X2及びX3が担当していた授業についても他の教員で対応可能だったので、理事会決議を経て再任用しない旨を決定したと主張し、組合は、法人の管理栄養士国家試験対策室長Y2の行う国家試験対策にX2及びX3が異論を唱えたことによって疎まれたことが実質的な理由である旨主張する。
 認定した事実によれば、法人が一般論として、任期満了を迎える者が受け持っていた授業を他の専任教員らが担当できる場合には雇用契約を更新しないという方針を採っていたことが事実であったとしても、単にその方針のみを理由にX2及びX3を再任用しなかったとは考え難く、管理栄養士国家試験対策に対する考え方の違いが再任用しないと判断した要素となっていることが認められる。このことからすると、法人が団交において、再任用をしなかったことと管理栄養士国家試験対策の問題とは関係がない旨を繰り返し述べていることは、事実に反する説明であるといえる。そして、X3及びX4は管理栄養士国家試験対策に対する考え方の違いがX2及びX3を再任用しないと判断した要素になっていたことを熟知していたと認められるから、団交での説明は事実に反することを知りながら意図的に行ったものであるといわざるを得ない。
 また、Y3及びY4の陳述書では、日本栄養改善学会が発表した「モデルコアカリキュラム」に沿ったカリキュラムを編成するための教員の採用枠を創出すべくX2及びX3の再任用をしなかったとの趣旨が述べられているが、もし、これが事実であれば、団交においても丁寧に説明されなければならないところ、この件については一切触れられていない。
 以上のように、事実に反する説明をした上、「モデルコアカリキュラム」に対応した教員採用枠創出の必要性について何らの説明もしなかった点において、法人の団交における態度は不誠実なものであるといわざるを得ない。よって、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成27年(不再)第22号 全部変更 平成28年7月20日
 
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