労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成26年(不再)第12号
日本郵便(東京多摩支店)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X(「組合」) 
再審査被申立人  Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年6月15日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社の下記行為が労組法7条の不当労働行為に当たるとして、組合が都労委に救済を申し立てた事案である。
 (1)直近の雇用契約期間が6か月間であったAないしJ10名の平成23年4月1日(以下、「平成」の元号を省略)以降の雇用契約期間を3か月間に短縮して契約更新したこと(同条1号、3号)。
 (2) 23年6月24日ないし同月30日、組合ではなく、CないしJ8名に雇止め理由証明書を交付したこと(同条3号)。
 (3) 23年6月30日付けでBないしJ9名を雇止めとしたこと(同条1号、3号)。
 (4) 23年8月11日等における担当課長のAに対する言動(同条3号)。
 (5) 23年9月30日付けでAを雇止めとしたこと(同条1号、3号、4号)。
 (6)AないしJ10名に対する雇止め等に関する団体交渉における対応(同条2号)。
2 初審都労委は、組合の申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 AないしJ10名の雇用期間を短縮して契約更新したことの労組法7条1号、3号該当性
 会社は、上記10名を含む短期雇用者(22年7月1日付けでいわゆるペリカン便事業を承継し、ゆうパック事業に統合した際、業務量の変動に伴う一時的な処理要員として採用した期間雇用社員)約90名全員の23年4月1日以降の雇用期間を3か月間として契約更新したものであり、上記10名のみが雇用期間を6か月間として契約更新されなければならない特段の事情は認められないこと、上記契約更新決定当時、組合結成(23年6月10日)に向けた準備活動が行われていたと認められないこと等から、上記10名が組合を結成しようとしたこと等の故をもって、上記契約更新がされたと認めることはできず、労組法7条1号の不当労働行為に当たらない。組合結成の妨害を意図したものともいえず、同条3号の不当労働行為にも当たらない。
2 組合ではなく、CないしJ8名に雇止め理由証明書を交付したことの労組法7条3号該当性
 厚労省告示や会社人事管理規程によれば、会社は、雇止め理由証明書を速やかに請求者本人に交付しなければならないのであり、組合や組合員から提出された書面にも、請求者本人に交付するよう求める旨記載されていたこと等から、会社が、組合ではなく、請求者本人である上記8名に雇止め理由証明書を交付したことが、組合の運営に介入すること等のためであったと認めることはできず、不当な対応であったといえない上、組合運営にする影響を及ぼす行為であったと認めることもできないのであるから、労組法7条3号の不当労働行為に当たらない。
3 BないしJ9名に対する雇止めの労組法7条1号、3号該当性
 会社は、業務量に応じた適正な要員配置を段階的に実施するとの方針に基づき、23年6月30日付けで期間雇用社員15名を雇止めとすることとし、その対象者として、上記9名を含む短期雇用者15名を選定したことに格別不合理な点はなく、相応の理由があること、上記9名に対する雇止め予告通知時点において、組合結成に向けた準備活動が行われていたと認められないこと等から、上記9名が組合を結成しようとしたこと等の故をもって、雇止めが行われたと認めることはできず、労組法7条1号の不当労働行為に当たらない。組合結成の妨害を意図したものともいえず、同条3号の不当労働行為にも当たらない。
4 担当課長のAに対する言動の労組法7条3号該当性
 組合は、担当課長が、Aとの面談において、「アルバイトの分際で組合なんか作りやがって。」などと暴言を吐いた旨主張する。しかし、上記面談後の団体交渉において、会社が、担当課長のAに対する暴言の事実はないと考えている旨回答したことに対し、Aは、担当課長の暴言の直後に、その内容をメモ帳に記録していると反論しているが、本件初審及び再審査において、組合は、上記メモ帳を証拠として提出していないこと、その他担当課長の暴言の事実を認めるに足りる証拠はないことから、組合の上記主張は採用できない。したがって、担当課長のAに対する言動は労組法7条3号の不当労働行為に当たらない。
5 Aに対する雇止めの労組法7条1号、3号、4号該当性
 Aを含む期間雇用社員6名に対する雇止めは、業務量に応じた適正な要員配置を実施するために行われたものであり、格別不合理な点はなく、相応の理由があること、同6名中2名は別組合(会社における多数組合であるK労組)の組合員であり、組合の組合員を標的とした雇止めと認めることはできないこと等から、Aの組合活動や本件当初の救済申立て(前記事件概要の1(1)ないし(3)と、(5)の一部分)を理由に雇止めが実施されたと認めることはできず、労組法7条1号、4号の不当労働行為に当たらない。組合運営の妨害を意図したともいえず、同条3号の不当労働行為にも当たらない。
6 AないしJ10名に対する雇止め等に関する団体交渉における対応の労組法7条2号該当性
 組合は、会社が、上記雇止めが行われた東京多摩支店の損益や、当時在籍した期間雇用社員の勤務成績の各開示に応じなかったことは、不誠実な態度に当たる旨主張する。しかし、会社は、上記雇止めは、会社の22年度営業利益1034億円の赤字(東京多摩支店の赤字ではないこと)等の経営上の事由によるものであり、対象者の選定に当たり、勤務成績は考慮していないこと、支店毎の収支決算は行っていないことについて、関係資料を配付して説明しており、そうすると、上記各開示がされなければ団体交渉の実効性が確保されないとはいえない。したがって、会社の対応は不誠実であるとはいえず、労組法7条2号の不当労働行為に当たらない。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成23年(不)第70号 棄却 平成26年1月14日
 
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