労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成25年(不再)第75・78号
アドバンストコミュニケーションテクノロジー不当労働行為再審査事件 
再審査申立人(75号)  Y(「会社」) 
再審査被申立人(75号)  X1 
再審査被申立人(75号)  X2(「支部」) 
   X1~2と併せて「組合」 
再審査申立人(78号)  X1 
再審査申立人(78号)  X2(「支部」) 
   X1~2と併せて「組合」 
再審査被申立人(78号)  Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年6月1日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社の下記行為が労組法7条の不当労働行為に当たるとして、組合が都労委に救済を申し立てた事案である。
 (1) 取引先での業務を終了した組合員Aに対して、教育訓練を受講させることなく、平成22年4月6日(以下、「平成」の元号を省略)ないし同年6月20日の間、自宅待機を命じたこと(同条1号、3号)。
 (2) 実績評価に基づき21年4月1日付けで給与の減額改定を行った組合員Bに対して、その後、取引先の契約単価が比較的高額とされる業務等に従事したのに、減額改定前の給与額に戻さなかったこと(同条1号、3号)。
 (3) 22年10月1日から予定されていた取引先へのCの派遣を断り、Cに対して、同日ないし23年9月25日の間、自宅待機を命じたこと(同条1号)。
 (4) 前記(3)のCの派遣を断ったこと等に関する22年9月29日、同年12月2日、同月28日の各団体交渉における対応(同条2号)。
 (5) 組合員AないしDに対する22年度下期賞与の減額支給(同条1号、3号)。
2 初審都労委は、前記1のうち(1)、(3)、(4)の各行為は不当労働行為に当たるとして、A、Cに対する各自宅待機命令がなかったものとしての取扱い及びバックペイ並びに同(1)、(3)、(4)に係る文書交付を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社及び組合は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文   本件各再審査申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 Aに対する自宅待機命令の労組法7条1号、3号該当性
 会社においては、取引先でのシステム開発等の業務を終了した社員に対して、次の取引先に派遣するまでの間、教育訓練を受講させることになっていたところ、Aのみに対して、合理的な理由もなく、教育訓練を受講させずに、22年4月6日ないし同年6月20日の間、自宅待機を命じ、その間の給与について、教育訓練を受講させた場合と比較して、3割程度減額して支給したことは、21年11月15日に発足した支部結成準備会を問題視し、会社に対する批判や要求を疎ましく思っていたことから、同準備会メンバーであったAを社外に排除するために行われたというべきであり、労組法7条1号の不利益取扱いに当たり、組合活動を萎縮させ、会社の社員に対して組合への加入を思い留まらせる効果を有するから、同条3号の支配介入にも当たる。
2 Bに対する給与の回復(昇給)を行わなかったことの労組法7条1号、3号該当性
 21年4月1日付け給与減額改定(3万8000円減額)の通告時における社長(当時)の頑張れば元に戻る旨の発言は、会社への貢献によって昇給の可能性がある旨の賃金規程の当該規定と同趣旨を述べたにすぎず、昇給に関する合意が成立していない以上、会社は、Bに対して、昇給させる義務を負っていたと認められないのであるから、Bに不利益が生じたと認めることはできない。上記義務を負わない以上、会社が組合運営に介入したとはいえない。したがって、Bに対して、給与の回復(昇給)を行わなかったことは、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たらない。
3 Cに対する自宅待機命令の労組法7条1号該当性
 IT業界では、取引先の面接に合格した時点において、契約することを前提とした取扱いを行うことが実態であったところ、会社は、社員が取引先の面接に合格した場合、契約を断ることは基本的になかった上、支部結成準備会発足当時から組合を嫌悪し、その活動を疎ましく思っていたこと等から、22年10月1日から予定されていた取引先へのCの派遣を断り、Cに対して、同日ないし23年9月25日の間、自宅待機を命じ、その間の給与について、派遣した場合と比較して、3、4割程度減額して支給したことは、労組法7条1号の不当労働行為に当たる。
4 前記3のCの派遣辞退等に関する各団体交渉における会社の対応の労組法7条2号、3号該当性
 会社は、22年9月29日の団体交渉において、条件が良くなかったので積極的にやりたい仕事ではなく、取引先の事情で他社の者に決まったのでやむを得ないと判断した旨、会社から断ったのではない旨回答したところ、同年12月2日の団体交渉において、上記回答は虚偽であったことを認めた上、Cの派遣を断った理由について、採算が合わないからである旨回答し、その後、採算性について、資料を作成して、同月28日の団体交渉で説明を行ったが、その資料は、杜撰な試算により殊更採算性を悪く表示したものであり、いずれの団体交渉においても、会社の対応は不誠実であったと認められ、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。かかる会社の対応は、組合員ないし会社の社員に対して、組合の交渉力等に対する疑念等を生じさせることを通じて組合の運営に支配介入するものということができるから、労組法7条3号の不当労働行為にも当たる。
5 AないしDに対する22年度下期賞与減額支給の労組法7条1号、3号該当性
 会社の社員は、それぞれ異なる取引先で異なる業務に従事し、査定対象期間において業務に従事した期間やその契約単価等も異なることから、これらを捨象して支給額のみを比較するのは適当とはいえないこと、非組合員44名のうち、Dの支給額7万5500円を下回った社員が7名(うち4名はA、Cと同じ0円)、Bの支給額11万4000円を下回った社員が上記7名以外に4名いたこと、組合員4名が会社における実績評価において平均的な社員として処遇を受けるべきであることを認めるに足りる証拠もないことを勘案すれば、組合員4名の各支給額が支給対象者48名の平均支給額20万8333円に達しなかった事実をもって、不利益が生じていたと認めることはできない。したがって、会社が、組合員4名に対して、組合加入等を理由として、実績を低く査定して、22年度下期賞与を支給したとはいえず、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たらない。  
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成23年(不)第12号 一部救済 平成25年9月17日
 
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