労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  アドバンストコミュニケーションテクノロジー 
事件番号  都労委平成23年不第12号 
申立人  全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合、同ACTユニオン支部 
被申立人  株式会社アドバンストコミュニケーションテクノロジー 
命令年月日  平成25年9月17日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①組合員X3を派遣して行わせる予定で交渉を進めていた申立外A社での業務に係る契約案件を断り、同人に自宅待機を命じたこと、②X3に係る上記業務等を議題とする団交で不誠実な交渉態度をとったこと、③組合員X4に対し、従前の業務が終了になった後、社内教育訓練を選択する機会を与えないまま、自宅待機を命じたこと、④組合員X5の給与を減額した後、同人が教育担当業務を行ったり、単価が高い業務を行ったりしたのに、元に戻さないこと、⑤組合員に対する平成22年度下期賞与の支給額が全社員の平均額よりも低額であったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は会社に対し、1 組合員X3に対する上記①の自宅待機命令をなかったものとして取り扱うこと等、2 組合員X4に対する上記③の自宅待機命令をなかったものとして取り扱うこと等、3 文書交付、4 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社アドバンストコミュニケーションテクノロジーは、申立人全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合及び同全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合ACTユニオン支部の組合員X3に対し、平成22年10月1日からの自宅待機命令をなかったものとして取り扱い、同人に対し、同日以降、自宅待機中の賃金相当額と既支払賃金額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合の組合員X4に対し、22年4月6日からの自宅待機命令をなかったものとして取り扱い、同人に対し、同日から同年6月20日までの間、教育訓練を受けた場合の賃金相当額と既支払賃金額との差額を支払わなければならない。
3 被申立人会社は、本命令受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合及び同全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合ACTユニオン支部に交付しなければならない。
(記 省略)
4 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
5 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X3に係る契約案件を断り、自宅待機を命じたことについて
 被申立人会社は、取引先と交渉中であったX3の業務に係る契約案件について、採算が取れない(赤字になる)ため、断った旨主張している。しかし、認定した事実によれば、会社は会社における申立人組合の支部準備会の発足当初から、合同労組である組合を嫌悪していたと推認されることに加え、会社の主張する採算性の説明が合理性に欠けること、IT技術者が顧客との面接を通過した後で会社から契約を断った事例は過去に存在しないことなどからすれば、会社が上記契約案件を断った理由は、X3の採算性ではなく、組合に加入して自らの雇用と労働条件を守る姿勢を見せている同人を疎ましく思い、あえて仕事を与えないためであったものとみざるを得ない。X3は自宅待機を余儀なくされ、月給も減額されたのであるから、会社が上記契約案件を断ったことは組合員であるが故の不利益取扱いに該当する。
2 X3に係る契約案件等を議題とする団交における対応について
 当該団交における会社の対応については、当初、前記1で判断したような会社の真の意図を隠すために、A社から断ってきたと事実と異なる説明をした上、理由を採算性に変更した後も、当初はそれについての説明を拒否し、その後も不適切な資料を提出するなど、誠実なものとは到底いえない。したがって、不誠実な団交に該当する。
3 組合員X4に対する自宅待機命令について
 会社は、X4に教育訓練を与えなかった理由として同人の勤怠状況が悪いことを挙げているが、当時はそのことは問題となっておらず、そもそも勤怠状況の管理さえ行われていなかった。また、会社がX4に対する適切な教育訓練について検討しないまま、賃金が60%しか支払われない自宅待機を命じていることに合理的な理由は存在しない。X4に対する取扱いが特異な例であり、他に理由が見当たらない以上、その取扱いは同人が組合(支部)の中心人物であること、また、前記1のとおり、会社は支部準備会の発足当初から組合を嫌悪していたと推認されることから、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるといわざるを得ない。
4 組合員X5の給与の減額について
 組合は、会社はX5の貢献度を正当に評価していないと主張する。しかし、X5には教育担当者としての経験がなく、会社が3か月間を見習期間と判断し、売上及び評価を0円としたことは不自然とはいえない。また、X5の申立外B社での業務については客先単価が通常よりも高額の契約となったが、それには営業評価(営業面の要因による単価の増額分)も含まれている。さらに、X5の減給は支部準備会が結成される半年以上前に他の社員と同様、賃金規程に基づき前年度の貢献度を基に正式に給与の改定としてなされたものである。これらのことを総合考慮すれば、X5に対する会社の取扱いについては、その不合理性や組合員であるが故の不利益性を裏付けるに足る具体的な疎明はないというべく、会社が同人を組合員であるが故に不利益に取り扱ったとする組合の主張は採用できない。
5 平成22年度下期賞与について
 組合は、会社の賞与の算定は社員の貢献度、すなわち各人の売上高と会社にかかるコストとの差額に基づき行うとされているが、売上高は客先単価ではなく、社長の一存で決定される「社内評価単価」で査定され、恣意的な評価を可能とするルールになっている旨主張する。しかし、X3ら4名の組合員について貢献度の算定状況を検討すると、X3について前記1の自宅待機がなかったものとして再計算がなされるべきであることを除いて、不当又は不自然であるとはいえない。
 また、4名とも全社員の平均支給額に達していないが、非組合員の社員においても平均支給額以下の者が11名いたことが認められ、支給対象社員が48名という規模の会社において組合員4名の支給額が平均支給額よりも低いということのみをもって、それが組合員であるが故の不利益取扱いであるとまではいえない。
 以上のことを総合考慮すれば、組合員であるが故の不利益取扱いが行われたとはいえない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第75・78号
アドバンストコミュニケーションテクノロジー不当労働行為再審査事件
棄却 平成28年6月1日
 
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