労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成26年(不再)第40・41号
アイ介護サービス不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y(「会社」) 
再審査申立人  X(「組合」) 
再審査被申立人  X(「組合」) 
再審査被申立人  Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年4月20日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、① 会社の顧問社会保険労務士であるB1社労士とA1組合員との面談(「本件面談」)において、B1社労士が組合からの脱退工作、組合不信を煽る言動を行ったこと、会社が、② 本件面談及び同人の契約更新に係る団体交渉を誠実に行わなかったこと、③ 同人との間の有期労働契約を更新しなかったこと(「本件雇止め」)が、それぞれ不当労働行為に各該当するとして救済申立てのあった事案である。
2 初審東京都労委は、本件面談におけるB1社労士の言動及び本件面談に関する団体交渉における会社の対応が不当労働行為に該当するとして、会社に対し、これらに係る文書交付及び文書掲示等を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社及び組合は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。なお、組合は団体交渉に係る再審査申立てをしていない。 
命令主文   本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件面談におけるB1社労士の言動について(争点1)
 本件面談は、就業時間中に会社の相談室において、面識のない会社の顧問社労士と二人だけで約1時間にわたって行われ、B1社労士が、A1組合員に、会社とうまくいっていないようだが会社を辞めたい気持ちがあるなら転職先を紹介することもできる、組合に入っていると聞いたが本当か、組合は法律的なことしか扱わないので相談ができないのではないかと発言したことは、会社からの退職という不利益を示唆しながら、A1組合員の組合加入を問題視し、併せて組合の役割や機能を軽視する発言によって、同人の組合活動を抑制しようとするものと評価され、支配介入行為に当たる。
 本件面談においては、会社がB1社労士にA1組合員と会社間の始末書未提出に係る労働問題の処理を依頼し、同社労士によって支配介入行為が行われたのであるから、同社労士の行為は会社の行為というべきであり、会社はその不当労働行為責任を免れることはできない。
 以上から、本件面談におけるB1社労士の言動は、A1組合員が組合に加入していることを問題視し、その組合活動を抑制しようとするものであり、組合を弱体化させるおそれのある不当な行為として、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
2 本件面談に関する団体交渉における会社の対応について(争点2)
 本件面談に関する第1回団体交渉におけるB3社長の回答からすると、会社は、B1社労士による退職強要に関する発言を認め、退職強要や組合脱退強要について会社にも連帯責任があるとしたら謝罪するとしていたが、その後、B3社長名で、謝罪及び撤回はいずれも行わないとの見解を組合に通知し、第2回団体交渉にB3社長を出席させず、同社長が出席しない理由や謝罪しないとの見解に至った経緯や理由を何ら説明していない。
 このような会社の交渉態度は、第1回団体交渉における会社の回答について的確に説明するべき立場にあったB3社長を出席させていないこと、組合の謝罪及び撤回要求にはいずれも応じないと一方的に通知したにもかかわらず、第1回団体交渉終了時の見解と異なる見解に至った経緯や理由を具体的に説明しなかったことから、誠実な対応を通して組合の理解を得ようとする姿勢に欠けるものといわざるを得ず、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
3 本件雇止めについて(争点3)
 本件雇止めに至る間の労使事情をみると、会社はA1組合員に、業務用レターケースにビラを入れたことについて始末書の提出を求め、同人は提出をしなかったこと、本件面談が行われ、これを議題とする第2回団体交渉において、会社と組合の間で意見が対立したことが認められる。
 しかし、会社は、会社のルールに従わないA1組合員の勤務上の態度を問題としたのであって、上記ビラを組合ニュースと認識し同人の組合活動を抑制することを目的として始末書の提出を求めたとはいえず、また、団体交渉を行い、雇止めの理由等を説明していることからすると、本件面談及び第2回団体交渉における会社の対応が不当労働行為に当たることをもって本件雇止め自体がA1組合員や組合の活動を嫌悪して行われたとまでみることはできない。他方、A1組合員は、直近契約期間において、会社のルールに従わず、再三会社から注意や指導を受け、これに従わないなどの態度もみられたものであり、本件雇止めには相当性があるといえる。
 上記のとおり、本件雇止めに至る間の労使事情をみても、会社が組合やA1組合員の組合活動を嫌悪して本件雇止めを行ったとは認められないこと、本件雇止めには相当性があると認められることから、本件雇止めは、会社の不当労働行為意思に基づいて行われたものとはいえず、不利益取扱いに該当するとはいえない。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成24年(不)第40号 一部救済 平成26年6月17日
 
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