労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  福岡労委平成27年(不)第2号
EMGマーケティング不当労働行為審査事件 
申立人  X労働組合西日本合同分会連合会(「組合」)  
被申立人  Y合同会社(「会社」) 
命令年月日  平成28年5月6日 
命令区分  却下・棄却 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人会社が申立人組合の平成16年10月4日付け、18年9月5日付け、20年8月1日付け、21年7月21日付け、22年5月6日付け、同年7月30日付け、26年3月10日付け、同年4月17日付け、同年6月11日付け、同年9月25日付け及び27年2月23日付けの各団体交渉要求(以下「本件団交要求」という。)に対し、団体交渉に応じなかったことが、労働組合法7条2号に該当するとして、27年3月5日、組合が救済を申し立てたものである。
 福岡県労委は、本件申立日から1年以上前になされた6回の団交要求に応じなかったことに対する救済申し立てを、労組法27条2項により却下し、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 平成16年10月4日付け、平成18年9月5日付け、平成20年8月1日付け、平成21年7月21日付け、平成22年5月6日付け及び同年7月30日付けの各団体交渉要求に係る申立てを却下する。
2 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 本件団交要求のうち16年10月4日付けから22年7月30日付けまでの団交要求について
 組合は、16年10月4日付け団交要求から27年2月23日付け団交要求までの計11件の本件団交要求に対し、それぞれ会社が拒否した行為は、同一の不当労働行為意思に基づく複数の行為であるから、労組法27条2項に規定する「継続する行為」に該当すると主張し、11件すべての団交拒否を不当労働行為として救済を求めている。
 労組法27条2項が規定する「継続する行為」とは、行為自体は複数であっても、全体として一個の不当労働行為が継続している場合、すなわち、継続して行われる一括して一個の行為をも含むものと解することが相当である。複数の団交要求と団交拒否が「継続して行われる一括して一個の団交拒否に該当するか否か」は、団交事項の同一性、各団交要求の時聞的隔たりの程度、団交要求に関する当事者の対応などを総合して判断する必要がある。
 本件団交要求についてみるに、要求された団交事項は必ずしも同一のものではなく、16年10月4日付け、18年9月5日付け、20年8月1日付け、21年7月21日付け及び22年5月6日付けの各団交要求の間には、それぞれ1年11か月、1年11か月、11か月及び9か月の間隔があり、22年7月30日付けから26年3月10日付け団交要求までに至っては、3年7か月が経過していることが認められ、各団交要求の間に、当事者間で団交開催に向けた協議・折衝等が継続していた事実も認めることができない。したがって、本件団交要求に係る団交拒否について「継続して行われる一括して一個の行為」と判断することはできない。
 よって、本件申立てのうち、本件申立日から1年以上前になされた16年10月4日付けから22年7月30日付けまでの計6回の団交要求に対し会社が団交に応じなかったことについての救済申立ては、労組法27条2項により却下するのが相当である。
2 本件団交要求のうち26年3月10日以降の団交要求について
ア 会社は、上記のとおり、組合が労組法7条2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」に該当しない旨主張している。
 労組法が予定する団交とは、使用者が、その雇用する労働者の属する労働組合の代表者と、労働者の待遇及び労使関係上のルールについて合意を得ることを目的として行う交渉であり、団交を通じて早期に正常な労使関係が樹立されることを目的としている。したがって、使用者が団交を義務付けられる相手方は、原則として、「現に当該使用者が雇用している労働者」であると解される。もっとも、現実に派生する労働条件等を巡る問題は様々で、雇用関係の前後にわたって生起する場合もあり、団交を通じた早期の正常な労使関係の樹立という上記労組法の趣旨を踏まえれば、使用者が、かって存続した雇用関係から生じた労働条件を巡る紛争として当該紛争を適正に処理することが可能であり、そのことが社会的にも期待される場合をも含むものと解される。そして、その認定に際しては、i)当該紛争が雇用関係と密接に関連して発生したこと、ii)使用者において、当該紛争を処理することが可能かつ適当であること、iii)団交の申入れが、雇用関係終了後、社会通念上合理的といえる期間にされたことを要素として判断することが相当である。
イ そこで、本件において、26年3月10日付けから27年2月23日付け団交要求までの各団交要求における要求事項(団交議題)との関連も踏まえ検討する。
(ア)組合は、26年3月10日付けから27年2月23日付けまで計5回の団交要求書を提出しており、それら各団交要求書に記載された要求事項、各要求事項についての本部団交の開催状況及び各要求事項に関する命令、判決の状況について概要をまとめたものは別表「団交要求事項等一覧」のとおりであり、要求された団交事項を摘示すれば次のとおりである。
①再雇用要求の件
②不当解雇・不当処分撤回要求の件
③A6暫定分会の組合備品の件
④A4分会組合備品・掲示板不当撤去の件
⑤A7分会組合掲示板の件
⑥D油槽所閉鎖の件
⑦16年9月4日F油槽所タンク火災事故の件
⑧愛知県労働委員会命令(21年3月18日付け)不履行の件
(イ)(ア)①について
 (ア)①「再雇用要求の件」とは、A2、A1及びA3の定年退職後の再雇用を求める事項である。
 再雇用制度廃止自体の問題については、本部と会社との間において、6回の団交が行われており、23年11月2日、中労委が、これらの本部団交において団交は決裂し終了している旨判断している。各人の再雇用についての団交をみれば、A2の再雇用については11年1月19日に、A1の再雇用については12年1月17日、同年2月9日及び同年3月6日に、それぞれ本部と会社との間において団交が行われている。一方、組合がA2の再雇用を団交事項として要求したのは、A2の退職後3年以上を経過した後である。
 また、会社がA2を再雇用しなかったことが、不当労働行為に当たるか否かの争いは、26年3月10日の時点では東京高裁で審理中であったが、それ以前の13年5月23日、当委員会が不当労働行為に当たらないと判断し、23年8月3日、中労委がこれに係る再審査申立てを棄却し、25年10月30日、東京地裁が組合の請求を棄却していた。
 次に、会社がA1を再雇用しなかったことについでは、15年9月12日、広島労委が、不当労働行為に当たらないと判断し、23年11月2日、中労委での再審査でも同様の判断がされ、26年3月10日付け団交要求時には、不当労働行為に当たらないとの判断が確定していた。
 これら不当労働行為に係る争いとは別に、A2、A1及びA3が、再雇用について私法上の権利を民事訴訟等で争った事実はなく、A3は、11年1月1日に会社の再雇用制度が廃止された後、3年以上が経過した14年4月30日に定年退職し、組合が、A3の再雇用について団交要求したのは、20年8月1日が初めてであり、同人の退職後6年以上経ってからであった。以上の事実からすれば、(ア)①「再雇用要求の件」について、前記ア記載のii)使用者において、当該紛争を処理することが可能かつ適当であること、iii)団交の申入れが、雇用関係終了後、社会通念上合理的といえる期間にされたことのいずれも認められない。
(ウ)(ア)②から⑧までの要求事項について
 (ア)②から⑧までの要求事項については、組合の組合員に会社従業員がいなくなってから14年以上が経過しており、26年3月10日付け団交要求時点までに経過した期間は以下のとおりである。
②「不当解雇・不当処分撤回要求の件」とは、本部の他の下部組織に所属する組合員に対する不当解雇、及びA3に対する処分の件であり、A3が退職した14年4月30日から11年以上。
③「A6暫定分会の組合備品の件」については、E油槽所の閉鎖から12年以上。
④「A4分会組合備品・掲示板不当撤去の件」については、物品等の撤去から14年以上。
⑤「A7分会組合掲示板の件」については、A7分会の組合員に会社従業員がいなくなってから14年以上。
⑥「D油槽所閉鎖の件」については、D油槽所が閉鎖されてから13年以上。
⑦「16年9月4日F油槽所タンク火災事故の件」については、同火災事故から9年以上。
⑧「愛知県労働委員会命令不履行の件」については、その内容は15年8月29日H油槽所工事労働者死亡事故の件であり、同死亡事故発生から10年以上。
 このように、26年3月10日付け団交要求時点までにいずれも9年以上経過していることも踏まえると、(ア)②から⑧までの要求事項に係る団交の申入れは、前記ア記載のiii)団交の申入れが、雇用関係終了後、社会通念上合理的といえる期間にされたことと認められない。
ウ 以上からすれば、組合の26年3月10日付け、同年4月17日付け、同年6月11日付け、同年9月25日付け及び27年2月23日付けの5回の各団交要求について、組合は、使用者が団交を義務付けられる相手方に当たらず、会社が団交に応じなかったことは、労組法7条2号に該当しない。
 なお、会社は、組合は労組法7条2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」に該当せず、26年3月10日以降の団交要求に係る申立ては不適法なものとして却下することを求めているが、労働委員会規則33条1項5号の「組合の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき。」に該当するものとはいい難く、申立てを棄却するのが相当である。 
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