労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成26年(不再)第20号
廣川書店不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  株式会社Y(「会社」) 
再審査被申立人  X1 
再審査被申立人  X2(「組合」、組合及びX1を併せて、「組合ら」) 
命令年月日  平成28年3月2日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、① A組合員を会社本社(以下「本社」という。)で就労させることを含む会社の継続雇用制度(以下「継続雇用制度」という。)の内容と運用の改善について組合らが申し入れた団体交渉に対する会社の対応及び② 会社がA組合員に対し、その定年退職前の労働条件より大幅に低下した再雇用の条件を提示したことが不当労働行為であるとして、組合らが、平成24年7月11日、東京都労働委員会(以下「都労委」という。)に救済申立てを行った事案である。
2 初審都労委は、平成26年2月18日付けで、会社に対し、① 組合らが申し入れた、継続雇用制度の改定を議題とする団体交渉に誠実に応じければならないこと、② A組合員を平成24年1月12日以降も会社従業員として継続雇用をしたものとして取り扱わなければならないこと、③ 組合らから、上記②の扱いに関し、A組合員の継続雇用に係る賃金や就労場所等の労働条件について、団体交渉を申し入れられたときは、会社が定めた従前の継続雇用制度の内容に固執することなく、団体交渉を通じて同人の適切な継続雇用の労働条件を定めなければならないこと、④ 上記①及び②に関する文書交付、⑤ 履行報告をそれぞれ命じることを決定したところ、会社は、これを不服として、本件再審査申立てを行った。 
命令主文  1 本件再審査申立てをいずれも棄却する。
2 初審命令を次のとおり変更する。
 (1) 会社は、組合らが申し入れた会社の継続雇用制度の内容と運用の改善についての団体交渉に誠実に応じなければならない。
 (2) 会社は、A組合員の継続雇用をしたものとしての取扱いについて、会社の従前の提案に固執することなく、組合らと上記(1)の団体交渉を行うなどして、本命令書交付の日から6か月以内に、同取扱いに関する事項を適切に定めなければならない。
 (3) 会社は、上記(2)の事項に基づいて、平成24年1月12日から平成28年1月11日まで、A組合員を継続雇用をしたものとして取り扱わなければならない。
 (4) 会社は、本命令書交付の日から1週間以内に、文書を組合らに交付しなければならない。 
判断の要旨  1 組合らが継続雇用制度の内容と運用の改善について申し入れた団体交渉に対する会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不誠実な団体交渉に当たるか。
 (1) 平成23年7月1日から同年12月22日までの間の10回にわたる団体交渉によっても事態が進展しなかった経緯を踏まえて、平成24年4月13日、「会社と組合との間で誠実に団体交渉を行うことによって健全な労使関係を形成する」との条項を含む協定が会社と組合との間で成立したことに鑑みると、協定は、会社が、継続雇用制度等の義務的交渉事項を議題とする組合の団体交渉の申入れに対し、自らの見解について具体的かつ合理的な理由を説明したり、組合の提案を真摯に検討した上で対案を示すなど誠実に対応することにより、団体交渉を通じて健全な労使関係を形成すべき旨を約したものととらえることができる。
 (2) ところが、協定成立後においても、会社は、組合の要求は認められないなどと単に結論を述べるにとどまり、自らの見解に関する具体的かつ合理的な説明をしておらず、また、組合の従前の提案について真摯に検討した形跡もうかがわれないばかりか、Y社長自ら、団体交渉の冒頭で、これまでの組合の行為について批判を行い、また、協定は代理人が勝手にしたなどと、会社が締結した協定の意義を反故にするような発言をも行っていたことからすれば、会社は、協定成立後においても不誠実な対応に終始したというべきである。
 (3) 以上のとおり、A組合員を本社で就労させることを含む継続雇用制度の内容と運用の改善についての協定成立後の団体交渉における会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不誠実な団体交渉に当たる。
2 A組合員の定年退職後の継続雇用をめぐる会社の対応は、労働組合法第7条第1号の不利益取扱い及び同条第3号の支配介入に当たるか。
 (1) 会社は、継続雇用制度の導入後、同制度の内容と運用をめぐって労使間で議論が紛糾している中、定年退職後の従業員の取扱いに関し、非組合員である管理職については、退職前の労働条件(就労場所、賃金、業務内容等)とほぼ同様の勤務条件で、継続雇用制度の申込みを行う期限である定年退職日の6か月前に近接した時期に取締役への就任を打診し、希望者全員を取締役に登用しているのに対し、A組合員や他の組合員については、継続雇用制度に基づく運用として(就業規則第24条及び継続雇用規定それ自体は、具体的な就労場所、賃金、業務内容等を定めていない。)、定年退職前の労働条件(就労場所、賃金、業務内容等)よりも大幅に低下する条件のみを提案し、A組合員や他の組合員を本社での就労から排除するとともに、事実上、継続雇用の申込みひいては定年退職後の就労を断念させたといえる。
 (2) 継続雇用制度の内容と運用をめぐる労使間の長引く対立があったことに加え、会社と組合との間の労使関係がそれ以前から良好ではなかったという事情をも踏まえれば、管理職と非管理職との間で存すると考えられる一般的な職務遂行能力や責務の違い等を勘案してもなお、上記でみた管理職である非組合員とA組合員との取扱いの差異(就労場所、報酬(賃金)、業務内容等)は、会社が、A組合員が組合員であるが故に、継続雇用制度に基づく運用として、管理職である非組合員との対比において大幅に低下した労働条件でのみ継続雇用の提案をすることによって、同人に継続雇用の申込みひいては会社での定年退職後の就労を断念させることを企図して行ったものと推認でき、したがって、A組合員の定年退職後の継続雇用をめぐる会社の対応は、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いに当たる。
 また、会社の上記対応は、組合員であると定年退職後の処遇に不利益が生じ得ることを従業員に示すこと等によって、組合への加入及び組合員の組合活動をけん制ないし抑制しようとしたものであり、また、そのような影響を及ぼすようなものでもあったといえるから、同対応は、労働組合法第7条第3号の支配介入にも当たる。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成24年(不)第44号 全部救済 平成26年2月18日
 
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