概要情報
事件番号・通称事件名 |
愛労委平成27年(不)第3号 不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y(個人) |
命令年月日 |
平成28年3月28日 |
命令区分 |
却下 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、Yが、組合からの、YによるA組合員に対する平成22年2月1日付け協定書第7項違反の行為の中止等を求める団体交渉の申入れに応じなかったことが、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、救済が申し立てられた事件である。
愛知県労委は、Yは労組法上の使用者に当たらないとして、申立てを却下した。
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命令主文 |
本件申立てを却下する 。 |
判断の要旨 |
1 争点(1)(Yは、労組法上の使用者に当たるか。)について
ア 労組法第7条第2号において使用者が団交を義務づけられる相手方は、原則として 「現に使用者と雇用関係にある労働者」 の代表者をいうものであり、このように解するのが同号の 「使用者が雇用する労働者」 という文言からも適切であるといえる。
また、同号が基礎として必要としている雇用関係には、現にその関係が存続している場合だけでなく、解雇され又は退職した労働者の解雇又は退職の是非やそれらに関係する条件等の問題が雇用関係の終了に際して提起された場合も含まれると解される。
更に、雇用関係継続中に個別労働紛争を含む労働条件等に係る紛争が顕在化していた問題について、雇用関係終了後に、当該労働者の所属する労働組合が団交を申し入れた場合についても、雇用関係がある場合と同様に解すべきである 。
イ これを本件についてみるに、平成22年2月1日以降本件結審時までYの雇用する従業員に組合の組合員がいないことが認められることから、本件団交申入れ時に「現に使用者と雇用関係にある労働者」は、存在しない。
また、組合の本件団交申入れ事項は、YによるA及びその両親に対する協定書第7項違反の嫌がらせ及び誹謗中傷行為の中止等を求めるものであり、その内容はいずれもAの退職後新たに発生した問題に関するものであって、組合員の解雇若しくは退職の是非やそれらに関係する条件等の問題又は雇用関係継続中に個別労働紛争を含む労働条件等に係る紛争が顕在化していた問題に関するものとは認められない。
ウ 以上より、組合は、Yが団交を義務づけられる相手方とは認められず、Yは、労組法上の使用者に当たらない。
エ なお、組合は、平成24年9月5日中労委命令を引用し、本件団交申入れが、退職前の-雇種用関係に起因した 「退職者の生命・健康にかかわるなどの客観的に重大な案件」の発生に係るものであるとして、Yは団交に応ずる義務がある旨主張するので、念のため検討する。
同命令は、退職した労働者が在職中のアスベストばく露作業により悪性胸膜中皮腫を長期間の潜伏期間後発症し、労災認定を受け、これらに起因して発生した生命・健康にかかわる重大な案件に係る紛争に関し、退職前に当該紛争が顕在化しなかったことが客観的にみてやむを得ない事情があったとして、例外的に「雇用関係が確定的に終了したとはいえない場合」 とみなし、退職した労働者を 「雇用する労働者」 に準ずるとしたものである 。
一方、本件は、上記イで述べたとおり、YによるA及びその両親に対する協定書第7項違反の嫌がらせ及び誹謗中傷行為の中止等を求めるものであり、その内容はAの退職後新たに発生した問題に関するものであって、仮に、Aの在職中にYとの間でセクハラ・パワハラ等の問題が発生していたとしても、本件団交申入れの対象たるYのA及びその両親に対する言動は、客観的にみて当該在職中の問題とは全く別個の問題といわざるを得ず、同命令とは事案を異にしている。
したがって、同命令と本件を同列に論ずることはできず、上記組合の主張は採用できない。
2 争点(2)(協定書第7項違反の議題は、義務的団交事項に当たるか。)について
上記1(3)ウのとおり、Yは労組法上の使用者に当たらないことから、争点(2)については判断するまでもない。
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掲載文献 |
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