労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成26年(不再)第49号
杉森学園不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y学園(「学園」) 
再審査被申立人  X1 
再審査被申立人  X2組合(「組合」) 
命令年月日  平成28年3月16日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 学園が、組合の執行委員長A1、副執行委員長A2及び書記長A3(「A1ら」) に対し、学園及びB1校長(「学園ら」)を被告とする損害賠償請求訴訟(「本件訴訟」)を提起したことを理由に担任及び副担任、校務、クラブ顧問を担当させなかったこと(「担任等外し」)が、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事案である。
2 初審福岡県労委は、担任等外しが不当労働行為、に当たるとして、学園に対し、担任等外しが不当労働行為に該当すると認定された旨を記載した文書の手交及び掲示を命じ、併せて、A1につき、担任等外しがいまだ解消していないと認められるとして、新聞部顧問にしないとの不利益取扱いの禁止を命じたところ、学園は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  1 本件再審査申立てをいずれも棄却する 。
2 初審命令主文第1項を下記のとおり訂正する。
  被申立人学校法人Y学園は、 申立人組合執行委員長A1を、 同人が正当な組合活動を行ったことを理由として、新聞部顧問にしないとの取扱いをしてはならない。  
判断の要旨  1 担任等外しの不利益性
 平成16年度以降、A1らが担任等を担っていたところ、平成25年度はこれらを一切担当させなかった。 担任等を外された同人らは、生徒との交流や指導の機会が従前より減少することで教師としての誇りを傷つけられ、また、これらの活動を通じて教師としての経験を積み重ねて研さんしていく機会をも奪われたと評価できるから、担任等外しは、A1らに職業上及び精神上の不利益を与えるものであった。
2 担任等外しはA1らが正当な組合活動を行ったことによる不利益取扱いか
 (1) 学園は、平成25年1月の幹部会において、本件訴訟への対応を検討する中で担任等外しを行う方針を決定し、また、B1校長は、A1らに対して担任等外しを通告した際、理由として、組合役員であるA1らが主導して、学園に対する本件訴訟を提起したことを挙げていることからすれば、担任等外しが、A1らが組合役員として本件訴訟提起に関与したことを理由としてなされたことは明白である。
 (2) 本件訴訟は、組合内部の協議を経て提起されたものであり、組合員個人のみならず、組合をも原告とする訴訟であること、その内容も B1校長が組合員を含む教職員に対し、2学科の募集停止に反対する組合の立場に沿う市民集会への参加という、組合活動の性質を有する職務時間外の行為を業務命令で禁止したことや、学園が組合に対し、「警告書」により、業務命令に違反した労働者は厳罰に処する旨を通告したことなどが違法である旨が請求原因であることなどからすれば、本件訴訟提起は、まさに組合活動の一環としてなされたものである。 そして、本件訴訟は、組合及び組合活動に関連して組合員が被った損害賠償を求めるものであって、A1らが担任等外しにつき損害賠償を求めて提起した別件訴訟 ( 「別件訴訟」)の確定判決も、本件訴訟が正当な行為であると判断していることも認められる。 したがって、本件訴訟提起は正当な組合活動であると評価できる。
 (3) 上記(1)及び(2)によれば、担任等外しは、A1らが本件訴訟提起という正当な組合活動を行ったことを理由とする取扱いであり、A1らに対して職務上及び精神上の不利益を与えるものであるから、労組法第7条第1号の不当労働行為に、また、担任等外しにより、組合活動を萎縮あるいは組合の運営を妨害する行為であるから、労組法第7条第3号の不当労働行為にも当たる 。
3 救済方法
 A1が新聞部顧問として実績を残しており、不適格であることを窺わせる事情も見当たらない中、A1の意向に沿わないクラブの顧問を委嘱し、要求について何ら回答することがないという学園の対応からすれば、A1を新聞部顧問に委嘱しないという不当労働行為はなお解消されていない。 新聞部顧問を含む担任等外しが不当労働行為として問擬されるのは、それが正当な組合活動を理由としてなされたためであって、組合活動とは関わりのない合理的な理由の有無を問わず、A1に新聞部顧問を委嘱し続けなければならない旨の命令は、本件の救済方法として相当とはいい難い。 そこで、上記趣旨を明確にするため、初審命令主文第1項を訂正するのが相当である。  
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡県労委平成25年(不)第9号 全部救済 平成26年8月25日
 
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