労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  杉森学園 
事件番号  福岡労委平成25年(不)第9号 
申立人  福岡県私立学校教職員組合連合、杉森学園教職員組合 
被申立人  学校法人杉森学園 
命令年月日  平成26年8月25日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   平成24年12月25日、申立人組合(単組)の執行委員長X2ら組合員である教員12名と組合は、ファッションデザイン科等2学科の募集停止に反対する市民集会への参加を禁止され、精神的苦痛を受けたなどとして、被申立人法人とその運営する高校の校長Y2を被告とする損害賠償請求訴訟を提起した。本件は、法人がX2ら組合員3名に対し、同人らが上記訴訟を起こしたことを理由として担任・副担任業務等の授業以外の業務を行わせなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は法人に対し、X2に対する不利益取扱いの禁止及び文書の手交・掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人学校法人杉森学園は、申立人杉森学園教職員組合執行委員長のX2を新聞部のクラブ顧問にしないとの不利益取扱いをしてはならない。
2 被申立人学校法人杉森学園は、本命令書写しの交付の日から10日以内に、下記内容の文書(A4判)を申立人福岡県私立学校教職員組合連合及び同杉森学園教職員組合に手交するとともに、下記内容をA1判の大きさの白紙(縦約84センチメートル、横約60センチメートル)に明瞭に記載し、杉森学園高等学校の職員室の見やすい場所に14日間掲示しなければならない。
平成 年 月 日
  福岡県私立学校教職員組合連合
  執行委員長 X1 殿
  杉森学園教職員組合
  執行委員長 X2 殿
学校法人杉森学園
理事長 Y1
  当学園が、杉森学園教職員組合執行委員長のX2氏、同副委員長のX3氏、同書記長のX4氏を担任・副担任業務、校務及びクラブ顧問から除外したことは、福岡県労働委員会によって労働組合法第7条に該当する不当労働行為と認定されました。
  今後このような行為を行わないよう留意します。 
判断の要旨  1 申立人組合の執行委員長X2らに対する業務外しの不利益性について
 被申立人法人は、X2ら3名に対する業務外しは不利益取扱いには該当しないとし、その根拠として①業務の割当てについては法人に広範な裁量が認められ、教職員には校務の分担を請求する権利が認められないこと、②同人らが経済的に不利益を被っていないことを挙げる。
 しかし、労組法7条1号にいう「不利益な取扱い」の判断については、当該職場における職員制度上の建前や経済的側面のみから判断すべきではなく、職場の従業員の一般的認識に照らしてそれが通常不利益なものと受け止められるか否かという観点から判断されるべきである。
 本件の場合、X2らが損害賠償請求訴訟の提起後の平成25年度において以前とは異なり、担任・副担任から外され、校務も任されず、クラブ顧問にも選任されなかったことは、生徒1人ひとりとの接触や指導の機会を減少させることにより職務上の不利益を生じさせ、教師としての生きがいと喜びを奪うことにより精神上の不利益を与えるものであって、教員の一般的認識に照らして通常不利益なものと受け止められるから、「不利益な取扱い」に当たることが明らかである。なお、法人に広範な人事裁量が認められるとしても、業務外しに不利益性があることが否定されるものではない。
2 業務外しの理由等について
 法人は、損害賠償請求訴訟を提起した労働者個人12名のうち首謀者であると法人が判断したX2ら3名を業務から外したのであり、組合活動等を理由としたものではない旨主張する。
 しかし、法人の高校の校長Y2がX2らに対して業務外しを通告した時の言動や職員会議閉会後に職員全員の前で述べた話の内容をみると、法人はX2ら3名が提訴を首謀したと判断したとしているが、同人らが首謀したと判断した根拠については、同人らが組合役員であることしか挙げていない。したがって、法人は、X2ら3名が組合役員であることを理由として業務外しを行ったものといわざるを得ない。
 なお、法人は、本件損害賠償請求訴訟は法人の信用を毀損する形態であり、かつ、法的合理性もなく、正当性に欠け、組合活動として正当な範囲を逸脱していると主張し、また、X2ら3名が不利益取扱いを受けることには合理的な理由があると主張する。
 しかし、そもそも組合員又は組合が法人らを被告として、市民集会への参加を禁止されたことを理由とする損害賠償請求訴訟を提起することは憲法32条で定められた当然の権利であるから、仮に提訴の時期、動機及び内容が法人の主張どおりであるとしても、このことから直ちに提訴が正当な組合活動を逸脱しているということもできない。また、X2らが以前から生徒を組合活動に巻き込むような活動を重ねてきたとの法人の主張は直ちにこれを肯定することができないし、同人らが本件提訴に関する立場を宣伝して、生徒を巻き込む危険があるとの法人の主張には理由がないというべきである。
3 結論
 以上のことからすると、法人が行ったX2ら3名に対する業務外しは、同人らが組合役員であることを理由としてなされた不利益取扱いであると言わざるを得ず、労組法7条1号に該当する不当労働行為である。また、当該行為は、組合活動を萎縮させるものであり、労組法7条3号の不当労働行為にも該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成26年(不再)第49号 一部変更 平成28年3月16日
 
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