概要情報
事件番号・通称事件名 |
都労委平成25年不第59号・第63号 川崎陸送不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合 |
被申立人 |
Y会社 |
命令年月日 |
平成28年1月12日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
平成22年以降、申立人組合と被申立人会社は、会社の経営悪化を背景として、給与制度の改定について交渉を行っていた。23年5月、会社は非組合員に対して改定後の給与制度を適用したが、組合との交渉は妥結に至らないままであった。24年12月、会社は組合に対し、組合員の所属するB部門の閉鎖を提案した。その後、当該閉鎖に伴う組合員の退職について労使間の協議が継続し、主に解決金について交渉が行われたが、妥結に至らないまま、25年3月、会社は閉鎖を実施した。また、組合と会社との交渉が終了するまでの措置として、組合員を人事総務部付けとし、自宅待機とした。
本件は、会社が①組合に対して上記の解決金を支払わないこと、②25年5月以降、組合員に対し、基本給及び通信費補助しか支給しなかったこと、③24年12月以降、組合員に対し、新給与制度に基づく給与と旧給与制度に基づく給与との差額を支払っていないことが不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 申立人組合に解決金を支払わないことについて
組合は、被申立人会社がB部門の閉鎖に関する団交等において解決金の支払を提示し、その後も、代理人を介してその支払を約束しながら、結局は支払わないことが不誠実な団交及び支配介入に該当する旨主張する。
しかし、認定した事実によれば、会社は組合との交渉の途中で解決金の支払に言及したことがあったものの、支払を約束したとは認められない。そして、本件申立て後、本件組合員全員が会社との間に債権債務がない旨を自書した退職届を作成し、会社に提出したことなど、その後の状況の変化を踏まえると、会社が解決金を支払わないことは不誠実な団交又は組合の運営に対する支配介入には該当しない。
2 平成25年5月以降、本件組合員に基本給及び通信費補助しか支給しなかったことについて
組合は、会社が25年5月以降においても本件組合員に対して従前の給与全額を支払う義務があったと主張し、会社が基本給等しか支給しなかったことは組合員であるが故の不利益取扱いや支配介入に該当する旨主張する。
しかし、本件組合員はB部門の閉鎖を受けて、人事総務部付けとされ、自宅待機となり、就労していない状態であったところ、会社の規程上、基本給及び通信費補助以外の手当は不支給とされている。したがって、基本給等しか支払わなかった会社の取り扱いは、会社の規程に従った対応であったと認められる。
また、当時、本件組合員は近いうちに退職するということが労使の共通認識となっていたこともあり、従前の給与を引き続き確保すべく、例えば、会社の他の部署等で就労するなどの具体的な方策は労使間において検討事項とされていなかった。
そして、会社の対応は規程に沿うものであって、非組合員であったとしても、基本給及び通信費補助以外の手当が支給されたとは認められない。
これらのことを踏まえると、会社が25年5月以降、本件組合員に対して基本給等しか支給しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合の運営に対する支配介入に該当するとはいえない。
3 会社が24年12月以降、組合員に対し、新給与制度に基づく給与と旧給与制度に基づく給与との差額を支払わないことについて
25年2月、組合と会社は、①24年11月までは本件組合員に旧給与制度が適用されていたとし、会社は差額分を支払うこと、②組合と会社は同年12月以降に本件組合員に支給する給与の新給与制度への移行について誠実に交渉し、25年3月末日までに解決することなどを内容とする協定を締結した。組合は、24年12月以降、会社が本件組合員に対して差額を支払わないことはこの協定に違反し、不利益取扱いや支配介入に該当する旨主張する。
しかし、上記協定は、24年12月以降、本件組合員にいずれの給与制度が適用されるかについて触れるものではない。また、会社は新給与制度の適用について組合との交渉を拒絶していたわけではない。
24年12月以降、会社は組合の同意を得ずに新給与制度を本件組合員に適用しているが、そのこと自体は上記の協定に反するとまではいえず、会社は組合との交渉を継続的に行っていたことや、上記協定以降、労使間の懸案事項がB部門の閉鎖に関する問題に移行したことを踏まえると、会社の対応が不誠実であり、組合の弱体化を図ったものとまでは認められない。
また、非組合員には既に23年5月から新給与制度が適用されており、24年12月以降の給与において、組合員が非組合員よりも不利益に取り扱われたわけではない。
これらのことからすると、会社が本件差額を支払わないことは、組合員に対する不利益取扱い又は組合の運営に対する支配介入に該当しない。 |
掲載文献 |
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