概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成26年(不)第12号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合 |
被申立人 |
Y法人 |
命令年月日 |
平成28年1月5日 |
命令区分 |
全救 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人法人が①申立人組合との間で締結した確認書に違反して、組合と十分に協議することなく、就業規則を改定して労働条件を不利益に変更したこと、②就業規則改定に関する大阪府労働委員会の調停委員会が提示した調停案を受諾しなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
同労委は法人に対し、1 上記調停案を受諾したものとして取り扱うこと、2 文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、大阪府労働委員会平成25年(調)第21号争議調停委員会が平成25年12月13日に提示した調停案を受諾したものとして取り扱わなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X組合
執行委員長 A 様
Y法人
理事長 B
当法人が行った次の行為は、大阪府労働委員会において、(1)については労働組合法第7条第2号及び第3号に、(2)については労働組合法第7条第3号に、それぞれ該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)平成25年5月15日に当法人が貴組合に対して提案した就業規則改定に関する団体交渉において、誠実に対応しなかったこと。
(2)平成25年12月13日に大阪府労働委員会平成25年(調)第21号争議調停委員会が提示した調停案を受諾しなかったこと。 |
判断の要旨 |
1 就業規則の改定に関する団交における対応について
認定した事実によれば、被申立人法人は、①労働条件(年次有給休暇)の不利益変更を含む就業規則の改定に際し、平成25年5月27日の団交において申立人組合から再検討するようにとの要請を受け、自らが持ち帰り検討する旨述べたにもかかわらず、その直後である同年6月初旬には提示した改定案の内容で各職員に同意を求め、また、その次の団交に当たる同月20日の団交の前日には、改定案による就業規則の変更について労基署への届出を行うとの対応をしていること、②同日の団交において、組合との確認書に定める事前協議の認識について、1回でも協議すれば協議である旨述べるとの対応を行っていること、③法人の団交責任者として出席していた理事が同年9月18日の団交において、(i)従前の団交での自らの発言は法人の認識と異なっていた旨述べ、(ii)同月10日の団交での組合との協議の内容及び法人から再提案する等の発言を翻して、翌々日の理事会に同年8月27日付け再提案書の内容で提案するといった対応を行っていることが明らかである。
かかる法人の対応は、いずれも当事者間で合意形成を目指す態度とはいえず、不誠実な対応といえ、組合の団交権を形骸化させるものといわざるを得ない。
また、上記①のようにして組合との協議が調わないまま届出を行ったことは組合との確認書に違反するものであり、そのような対応は労使間の合意事項を殊更軽視することによって組合員からの組合への信頼を損なわせ、組合の影響力を排除しようとするものとみるべきであって、組合を弱体化させる支配介入に当たるものというべきである。
したがって、本件団交における法人の対応は労組法7条2号及び3号に該当する不当労働行為である。
2 就業規則の改定に関する調停委員会の調停案を受諾しなかったことについて
組合と法人との確認書の第4項には「労使双方が誠意をもって充分協議したにもかかわらず、協議が調わず、争議が発生するおそれがあるときは、労使の双方ないしは一方が大阪府労働委員会に対して調停を申請し、その調停案を労使双方が受諾し、解決するものとする」と記載されており、「協議」の文言は第1項から第3項までの各項に記載されているから、第4項は第1項から第3項までのいずれにも適用されるものとみることができる。
そして、有休の付与日数に関して就業規則を改定することは第2項(組合員の業務内容、配置転換、福利厚生、安全衛生などの労働条件や就業にかかわる事項の変更等については法人が組合と事前協議した上で行う旨定めたもの)に該当する事項であるから、法人が調停案を拒否したことは労働協約である確認書第4項に違反したものといわざるを得ない。かかる法人の対応は、確認書の趣旨を損なわせ、労使間の交渉の成果を軽視して組合の交渉上の立場を不安定にするものであって、ひいては組合を弱体化させる行為であるから、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。 |
掲載文献 |
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