労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成27年(不再)第11号
全日本海員組合(石川団交拒否)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y組合(「組合」) 
再審査被申立人  X従業員労働組合(「従業員組合」) 
命令年月日  平成28年2月17日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 組合が、従業員組合が要求した暫定労働協約の締結、組合員の再雇用契約の更新等に係る2回目の団体交渉について、従業員組合からの石川県内での団体交渉開催申入れに対し、東京都内での団体交渉開催を主張して応じなかったことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事案である。
2 初審石川県労委は、組合の対応は労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、組合に対して、文書交付及び掲示並びに石川県内での団体交渉応諾を命じたところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文の要旨  初審命令を変更して組合に文書交付のみを命じた。(その余の再審査申立ては棄却。) 
判断の要旨  1 不当労働行為の成否について
 (1) 第2回団交申入れの議題は、暫定労働協約の締結、組合員の再雇用契約の更新等、いずれも組合員の労働条件あるいは労使関係事項に該当するもので、使用者たる組合に処分可能な事項であるから、義務的団交事項に該当し、組合は、正当な理由のない限り、上記議題に係る団体交渉に応諾すべき義務を負っていた。
 (2) 団体交渉開催場所は、労使双方の合意によって決められるべきものである。
 組合の希望どおり東京都内で開催された第1回団体交渉において、従業員組合は、第2回以降の団体交渉を東京都内と石川県内で交互に開催することを提案したが、組合は、東京都内での開催を強く主張して合意には至らなかった。後日従業員組合が、上記交互開催を前提としつつも、第2回団体交渉に限り、組合の要請があれば東京都内での開催に応じる意向を明らかにしたにもかかわらず、組合が上記主張を譲らなかった。そのため、従業員組合は、第2回団交申入れにおいては石川県内を開催場所として指定し、その後本件救済申立てに至った。
 以上の経緯に照らせば、第2回団交申入れの時点において、団交開催場所について労使間での協議が整っておらず、合意が存在しなかったことは明らかである。
 (3) 従業員組合が指定した石川県内は、労使交渉の中心を担っていた従業員組合の組合長が居住し、同所を拠点に組合活動を行っていて、同所は従業員組合の唯一の拠点としての従業員組合の所在地であるということができ、また、第1回団体交渉は、組合側の希望どおりその本部所在地たる東京都内で開催されている。これらの事情に照らせば、従業員組合が、自らの唯一の拠点たる石川県内と組合の本部所在地である東京都内との交互開催を提案し、これを前提に第2回団体交渉を石川県内で開催するよう求めたことについては、相応の合理性があると評価できる。
 (4) しかしながら組合は、上記(3)の提案を検討する姿勢を見せることなく東京都内での開催を強硬に主張し、場所の折り合いがつかないなら第2回団体交渉の予定は入れられないとの態度を示した。第1回団体交渉後に従業員組合が、上記交互開催を前提に第1回に引き続いて第2回団体交渉も東京都内での開催に応じる旨の妥協案を提案したにもかかわらず、組合は、第1回団体交渉で説明したとおりであると回答するのみであった。このような経緯を踏まえ、従業員組合は、26年3月4日及び同月10日の第2回団交申入れにおいて、上記交互開催を前提に石川県内での団交開催を要求するに至ったが、組合は、これについても自らの主張には合理性がある旨回答するのみであった。
 (5) 上記の一連の経緯に鑑みれば、従業員組合側が団体交渉の場において相応の合理性があると評価できる提案をし、また、事後にはそれなりの譲歩をしているのに対し、組合側は団体交渉において相手方の提案を検討する姿勢もなく、後日においても自らの主張を繰り返すのみで、提案を受け入れられない理由を十分説明しているとは到底いえない。組合のこのような対応は、労働組合側からの提案としては相応の合理性のある従業員組合の交互開催という提案を真摯に検討することなく、東京都内での団交開催という自らの見解に固執したというべきであって、対等な団交当事者としての従業員組合を軽視して第2回団交申入れに応じなかったものといわざるを得ない。
 (6) 以上によれば、組合は、東京都内と石川県内の交互開催という労働組合側からの提案として相応の合理性を有する提案を前提に、第2回については石川県内を団交開催場所とする従業員組合の第2回団交申入れに対し、上記提案を真摯に検討せず、また、石川県内において団体交渉を開催できない理由について十分な説明をすることもなく、東京都内での開催に固執して本件救済申立てまで第2回団体交渉を開催しなかったのであり、結局、第2回団交申入れから約1年が経過した本件初審命令発出後である27年4月10日まで第2回団体交渉が開催されなかったことも勘案すれば、上記組合の対応は、労組法第7条第2号の正当な理由のない団交拒否に当たる。
2 救済利益及び救済方法について
 本件初審命令発出後、組合は、団体交渉を毎回石川県内にて行う義務を負っていたとまではいえないにもかかわらず、従業員組合の希望に応じて第2回ないし第4回団体交渉を石川県内において開催しており、第2回団交申入れに係る議題について労使間で継続的に協議が行われていることを勘案すれば、組合に対し、現時点において、石川県内を団交開催場所とする第2回団交申入れに関する団交応諾及び文書掲示を命ずることまでは必要ないが、従前の経緯に鑑みれば、今後の労使関係正常化のため文書交付を命ずることはなお必要である。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
石川県労委平成26年(不)第1号 全部救済 平成27年1月29日
 
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