概要情報
事件名 |
全日本海員組合 |
事件番号 |
石労委平成26年(不)第1号 |
申立人 |
全日本海員組合従業員労働組合 |
被申立人 |
全日本海員組合 |
命令年月日 |
平成27年1月29日 |
命令区分 |
全救 |
重要度 |
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事件概要 |
申立人組合が石川県内での団交の開催を申し入れたのに対し、被申立人組合が東京都内での開催を主張し、応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
石川県労委は、被申立人組合に対し、石川県内での団交の応諾及び文書の交付・掲示を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人が平成26年3月4日及び同月10日付けで申し入れた団体交渉について、石川県内において、これに応じなければならない。
2 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の文書を申立人に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートルの白紙に明瞭に記載して、被申立人の従業員らの見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
記(省略)
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判断の要旨 |
1 団交開催場所の指定と不当労働行為についての判断基準
不当労働行為救済制度の目的に鑑みれば、労使関係が展開している場所が複数あり、労使がそれぞれにその1つを指定し、一方当事者がその指定した場所にのみ固執したために団交が開催されなかった場合にあっても、日本モーターボート競走会事件に係る中労委の判断基準を準用して、固執した一方の指定に合理的理由があるか、他方に格別な不利益をもたらさないかどうかという観点から、不当労働行為の成否を判断するのが相当である。
2 労使関係が展開する場所について
本件では、申立人組合は石川県内において、被申立人組合は東京都内において、本来の業務や団交に関する事務を処理しているのであるから、石川県及び東京都はいずれも団交の開催場所の基本となるべき労使関係が展開する場所に当たるというべきである。
3 被申立人組合が石川県内での団交開催を拒否したことの合理性について
被申立人組合は、申立人組合の所在地は組合長X1の自宅にすぎず、組合の看板等も存在しないこと、組合員X2や同X3が出入りしている様子もなく、組合事務が処理されている様子もないこと等を挙げるとともに、団交担当者であるX1及びX2は再雇用職員たる地位を有するか否かが不確定であり、同人らが再雇用職員の地位を有すると裁判上確定したときの労働条件を議するため、被申立人組合の本部所在地から遠く離れた石川県内にて今後、度重なると考えられる団交を行うことは合理性を欠くなどと主張する。
しかし、この主張は、結局のところ、申立人組合には団交の当事者適格がないと主張するのに等しく、もはや団交の開催場所の問題ではなく、団交の開催そのものを否定するもので、合理性は到底認められない。
被申立人組合はまた、申立人組合の都合で組合所在地が変更されると、徒に振り回される可能性があり、非効率かつ不合理である旨主張するが、本件救済申立ては第2回団交の開催に関するものであり、不確定な将来における移転可能性を理由として当該団交の石川県内での開催を否定することはできないというべきである。
以上からすれば、東京都内での団交開催に固執し、石川県内での団交開催を否定する被申立人組合の主張には合理性がないと判断せざるを得ない。
4 石川県内での団交開催を認めないことは従業員組合に格別の不利益をもたらすか
東京都内で団交を開催する場合の申立人組合の不利益と石川県内で開催する場合の被申立人組合の不利益とを比較すると、石川県内での開催は被申立人組合にとって過度な負担とはならない一方、東京都内での開催は申立人組合やその組合員に大きな負担になると認められる。よって、被申立人組合が東京都内での開催に固執し、石川県内での開催を一切認めない場合は、申立人組合に格別の不利益をもたらすものと認められる。
5 結論
上記判断のとおり、申立人組合が東京都内と石川県内での交互開催を前提にして指定した石川県内での団交開催を、被申立人組合が拒否したことには、正当な理由は認められず、むしろ、被申立人組合が多くの組合員から構成される全国的組織であるのに比べて、申立人組合が結成されて間もない小規模な労働組合であり、被申立人組合の指定する東京都内での団交を行うことが大きな負担となることからすれば、被申立人組合は申立人組合に配慮して柔軟に団交の開催場所を指定する必要があったといわなければならない。それにもかかわらず、被申立人組合が東京都内のみでの団交開催に固執したことは、団交の開催を実質的に拒否したものと判断せざるを得ない。
よって、被申立人組合の行為は、正当な理由なくなされた団交の拒否であり、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。 |
掲載文献 |
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