労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  吉備学園 
事件番号  中労委平成25年(不再)第27号 
再審査申立人  岡山商科大学教職員組合(「組合」) 
再審査被申立人  学校法人吉備学園(「学園」) 
命令年月日  平成27年11月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、学園と組合が、平成23年5月19日の岡山県労働委員会(「岡山県労委」)における平成21年度期末手当等を調整事項とする別件あっせん(「別件あっせん」)において合意した後、組合が同期末手当に関して23年6月3日付けで申し入れて開催された同年7月8日及び同年8月4日の団体交渉(「7.8団交」及び「8.4団交」、これらを併せて「本件団交」)において、学園が、① 組合が求めた財務資料の詳細を開示しなかったこと、② 8.4団交において、学園のY理事長(「Y理事長」)が出席しなかったことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
2 初審岡山県労委は、団体交渉に実質的な交渉権限を有した者を出席させなかったことは労働組合法(「労組法」)第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、① 理事長等実質的な交渉権限を有する者を出席させ、学園の主張する根拠を明らかにできる財務資料に基づき説明するなど、21年度期末手当に係る団体交渉への誠実応諾及び② 文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、本件再審査申立てを行った。 
主文   本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 本件団交における学園の対応は、説明資料の開示及び出席者の観点から、不誠実な団体交渉に当たるか。
 (1) 財務資料の開示
 別件あっせんでは、学園が、これまで開示したものよりも具体的な資料に基づいて、組合に説明するよう努めるという趣旨で労使双方が合意したと解され、財務資料の小科目まで開示するかどうかは、交渉の内容や進展等の状況によるものといえるから、学園の交渉態度が上記趣旨や交渉の内容及び進捗等の状況を踏まえた誠実なものであったかを検討する。
 7.8団交では、学園は、組合に、財務資料の公開は、大科目及び中科目まで、補助金は小科目までとする旨述べ、8.4団交では、学園は、組合に、質問があれば小科目についても口頭で答えたい旨述べたところ、組合は、要求した資料ではないとして学園が用意した資料を受け取らなかったため、学園から財務資料に基づいた説明は行われなかった。
 こうしたことからすれば、学園は、上記合意の趣旨や交渉の状況を踏まえた対応をとったということができる。そうすると、組合は、財務資料の小科目までの開示にあくまでこだわって、学園が用意した資料を受け取らなかったのであるから、上記学園の対応をもって、不誠実とまではいえない。
 以上のとおり、学園の対応をもって、不誠実な交渉態度であるとまではいえない。
 (2) 団体交渉の出席者
 別件あっせんでは、「団体交渉においては、交渉権限を有する者が出席し」という内容で労使双方が合意した。
 7.8団交では、Y理事長が、財務資料の小科目までの開示について、できるだけ組合のいう方向でやりたいなどと、前向きに検討するような発言をし、学園が持ち帰り検討することとなったにもかかわらず、7.21団交では、Y理事長は体調不良を理由として欠席し、B1理事は、今後、理事長には是非交渉に出てもらうよう努力はするなどと述べ、続く8.4団交においては、Y理事長は理由を明らかにしないまま欠席したほか、B2事務局長は、財務資料の開示に関し、持ち帰って検討した経緯や内容等について、組合に誠意をもった説明をせず、自らの交渉権限に関して組合に疑念を抱かせるような態度をとった。
 上記一連の学園の対応に鑑みると、学園は、組合との団体交渉を具体的に進展させるために必要な実質的な交渉権限を出席者に与えていなかったことにより、団体交渉で誠実さに欠ける対応をとったものといわざるを得ない。
 以上のとおり、学園の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
2 初審命令が命じた救済の内容に、救済の内容を追加して命じることが相当か。
 組合は、本件再審査申立てにおいて、① 団体交渉において、理事長自ら出席すること、② 上記①を明記する謝罪文の手交等の救済の内容の追加を求めているが、不当労働行為に該当する団体交渉の出席者に関する救済について、以下、検討する。
 学園が、組合との団体交渉を具体的に進展させるために必要な実質的な交渉権限を出席者に与えていなかったことにより、団体交渉で誠実さに欠ける対応をとったというような事態は、団体交渉に必要な実質的な交渉権限を出席者に与えることにより解消することが可能であるから、その救済としては、初審命令のとおり、学園に対し、実質的に交渉権限を有する者を団体交渉に出席させることを命じることで足り、理事長の出席までを命じる必要性は認められない。
 なお、初審命令交付後の団体交渉の内容からみれば、学園に手交を命じる文書にあっても、初審命令の救済をもって足りる。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
岡山県労委平成23年(不)第3号 一部救済 平成25年3月14日
 
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