労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  吉備学園 
事件番号  岡委平成23年(不)第3号 
申立人  岡山商科大学教職員組合 
被申立人  学校法人吉備学園 
命令年月日  平成25年3月14日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が、大学教職員に係る平成21年度期末手当を巡る団交において、①岡山県労委によるあっせんでの合意にもかかわらず、申立人組合が求める財務資料の詳細を開示せず、②大学の学長を兼ねる法人の理事長Y1が平成23年8月4日開催の団交に出席しなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 岡山県労委は法人に対し、1 団交に理事長等を出席させ、誠実に対応すること、2 文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人学校法人吉備学園は、申立人岡山商科大学教職員組合が申し入れた平成21年度期末手当に係る団体交渉において、理事長等、実質的な交渉権限を有する者を出席させ、被申立人の主張の根拠を明らかにできる財務資料に基づき説明するなど、誠実に対応しなければならない。
2 被申立人学校法人吉備学園は、申立人岡山商科大学教職員組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
  岡山商科大学教職員組合
   委員長 X1 殿
学校法人吉備学園
理事長 Y1
  当学園が、貴組合が申し入れた平成21年度期末手当に係る団体交渉に対して誠実に対応しなかったことは、岡山県労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。
  今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
  (注:年月日は文書を手交した日を記載すること。)

3 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 財務資料の提示について
 認定した事実によれば、当委員会のあっせんより前に行われた団交においては、被申立人法人が期末手当支給率の引下げの理由を説明したのに対し、申立人組合は引下げの合理的根拠がないとし、財務内容の詳細の提示を求めたが、法人は理事会等で承認されているものや公表されているものは提示できるなどと消極的な姿勢を示していた。
 平成23年5月19日に行われた当委員会によるあっせんにおいては、「団体交渉においては、交渉権限を有する者が出席し、より具体的な資料に基づき説明を行うよう努めること」という文言を含むあっせん案を労使双方が受諾し、あっせんが終結した。
 組合は、上記あっせん案の合意にもかかわらず、法人は組合が要請した資料を提示していないと主張する。しかし、あっせん案における「より具体的な資料」の内容については、財務資料の小科目までの開示を含め今後の労使交渉の進展に委ねたものであり、口頭説明だけでなく資料に基づき、また、これまで提示したものよりも具体的な資料に基づいて、法人が誠意をもって組合に説明することが合意されたものというべきであり、組合の主張は当たらない。
 また、法人は団交において、小科目を特定しての質問があれば、個人情報や重要な経営上の秘密に該当する情報等に該当しない限り回答するとしており、一応、上記あっせんの「より具体的な資料に基づき説明を行う」との合意を踏まえたものと認められる。組合としては、まずは口頭での説明を聞き、それではやはり不十分であるとなった段階で改めて文書開示を請求するという手続も十分に可能であったと考えられ、法人が財務資料の小科目について口頭開示をまず申し入れたことについては不誠実とまではいえない。
2 団交の出席者について
 認定した事実によれば、前述のあっせん後、23年7月8日に開催された団交では、財務資料の小科目までの開示について法人の理事長Y1が前向きな発言をし、法人が持ち帰り検討することとなったが、続く同月21日の団交にY1は出席せず、法人は財務資料の開示範囲は従前どおりで理事会で決定したものであるなどと説明した。しかし、このような場合、前回の団交で前向きな発言をしたY1自身が出席して、検討の経緯を説明して組合の理解を求めることが誠実な対応であったと考えられる。
 また、この団交に出席した法人の理事Y2は「一歩も歩み寄る余地はないということである」「今後、理事長には是非交渉に出てもらうよう努力はする。そうでないと、不当労働行為になる」などと発言しているが、これらは誠実交渉義務に照らして不適切な発言であり、本件あっせん合意の趣旨にも反し、また、団交出席者の交渉権限について疑念を抱かせるものであったと認められる。
 そして、8月4日の団交には、Y1は出席せず、Y2及び大学の事務局長Y3らが出席したが、Y3は21年度3月期末手当について計0.2か月分支給で合意する権限を与えられていると、交渉権限を限定するような発言をし、さらに組合から、交渉前にY1との間で決められたことを伝達しているにすぎないのではないかと問われたのに対し、特段の反論をしていない。
 その後の同年12月の団交では、組合が法人の財政状況の説明のため、法人の事務局長の出席を求めたのに対し、法人側出席者は、それは大学との交渉が決裂し、法人全体で対応せざるを得なくなった場合のことである旨回答している。しかし、組合が法人全体の財政状況の説明を求めるのは当然であり、上記の法人の対応は誠実なものとはいえず、交渉担当者の適格性についても疑念を抱かざるを得ないものである。
 上記の事実によれば、Y3やY2らに、事前に準備したもの以外の譲歩や判断をするような権限が与えられているとは認められず、同人らは実質的な交渉権限を有していないと判断せざるを得ない。
 以上のとおり、法人が23年7月21日以降の団交に実質的交渉権限を持つ者を出席させなかったことは、不誠実な団交である。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第27号 棄却 平成27年11月18日
 
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