労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪市(組合事務所貸与) 
事件番号  中労委平成26年(不再)第13号 
再審査申立人  大阪市(「市」) 
再審査被申立人  大阪市労働組合連合会(「市労連」) 
大阪市従業員労働組合 
大阪市学校職員労働組合 
大阪市立学校職員組合(「学職組」) 
大阪市学校給食調理員労働組合 
以上、総称して「組合ら」 
命令年月日  平成27年10月21日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事案概要  1 組合らは、市本庁舎地下1階の一部のスペース(「本件スペース」)を、使用許可を受け、組合事務所として継続的に使用してきた。本件は、市が、組合らに対して、本件スペースにつき平成24年度以降は使用許可をしないこととし、同年1月30日に退去を求める旨通告し(「本件退去通告」)、同年2月20日に同年度の使用不許可処分をした(「本件不許可処分」)ことについて、労組法第7条第3号の不当労働行為であるとして、救済申立てが行われた事案である。
2 初審の大阪府労委は、本件退去通告及び本件不許可処分は労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるとして、市に文書手交を命じたところ、市は、これを不服として再審査を申し立てた。 
主文要旨   初審命令主文のうち学職組の救済申立てに係る部分は同救済申立てを棄却し、その余の再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 市労連の申立人適格の有無
 (1) 混合連合団体であっても、労組法が適用される組合員に関わる問題について、不当労働行為救済制度の申立人適格を有していると考えるのが相当であるところ、本件では市労連の組合活動の拠点である事務所の退去要求及び使用不許可が支配介入に当たるとして申し立てられており、労組法が適用される組合員に関わる事項が問題となっているから、市労連に本件の申立人適格を認めるのが相当である。
 (2) 混合組合である学職組も、上記(1)と同様に申立人適格を認めるのが相当である。
2 本件退去通告及び本件不許可処分の労組法第7条第3号の不当労働行為の成否
 (1) 労組法は労使慣行等がある場合は格別、使用者が管理する施設の利用権限や受忍義務を負わせるものではない。また、本件で組合事務所のあった本庁舎は行政財産としての側面を有し、管理者である市長の裁量に基づき1年ごとの目的外使用許可として行われるとの特質があり、労使慣行の破棄等の場合と同様にみることは困難である。しかしながら、組合事務所が基本的に本庁舎の施設の用途を妨げるとはいえないことや地公労法第2条の定めに照らすと、貸与の中止に関しておよそ不当労働行為が成立しないものではなく、特に本件で市が平成24年度以降の使用継続への信頼を組合らに与えたことや継続して組合活動の基盤としてきた中で突如退去を求められた場合の支障の内容や程度等も考慮されるべきことに鑑みると、本件退去通告及び本件不許可処分については、合理的な理由の有無や手続的配慮の有無などの観点からみて施設管理に係る権限の濫用にわたり、組合らの運営に対する干渉となったり支障をもたらしたりするものであって、市に不当労働行為の意思があったと認められる場合には、労組法第7条第3号の不当労働行為が成立するというべきである。
 (2) 本件退去通告及び本件不許可処分に至る経緯をみると、市は平成23年12月26日以降に市長の主導により平成24年度以降も貸与を認める従前の方針を急遽転換し、その主たる理由は労働組合等の政治活動を問題視したものと認められる。市は、本庁舎内で政治活動が行われるおそれを完全に払拭するためとの合理的な理由があったと主張するが、退去を基礎付ける十分な根拠、また目的と手段との間に合理的な関連性はなく、合理的な理由にはならない。市は行政事務スペースとしての利用の必要性があったとの合理的な理由があったと主張するが、行政事務スペースの確保の必要性が一定程度あったとはいえるが、退去を決定するに至る市の検討過程には不十分かつ拙速な部分があり、組合らの退去を基礎付ける程度まで具体的かつ確定的に見込まれる状況はなく、合理的な理由にはならない。さらに、本件退去通告及び本件不許可処分が退去まで切迫した時期になされ、退去の理由の説明も不十分であるなど手続的配慮を欠き、合理的な理由の有無及び手続的配慮の有無のいずれの面からしても市は施設管理に係る権限を濫用したものと認められる。
 本件退去通告及び本件不許可処分は組合らの組合活動に対して干渉となり、団結活動に支障をもたらすものである。また、自ら使用許可を繰り返してきた市は、労使関係を突如壊して組合らに不利益を与えることになることを認識しながら、あえて本件退去通告及び本件不許可処分を行ったといえ、不当労働行為の意思も認められる。以上のとおり、労組法第7条第3号の不当労働行為が成立する。
3 救済内容の当否
 本件の申立事実に係る平成24年度の使用許可の申請の対象期間が終了していること等からすると、初審命令のとおり文書手交を命じるのが相当である。行政処分の公定力や労使関係条例の成立は文書手交を命じることを妨げない。
4 学職組の解散
 学職組は平成27年3月31日をもって解散する旨決議しており、現時点では清算事務を遂行中であるとされ、消滅はしていないが、今後学職組において組合事務所の貸与等がされる余地はなくなったといわざるを得ず、救済の利益は失われたとみるのが相当であり、学職組の救済申立てに係る部分は同救済申立てを棄却する。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成24年(不)第15号 全部救済 平成26年2月20日
 
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