労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第15号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第15号 
申立人  Y市労働組合連合会、Y市従業員労働組合、Y市学校職員労働組合、Y市立学校職員組合、Y市学校給食調理員労働組合 
被申立人  Y市 
命令年月日  平成26年2月20日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人市が、申立人組合らが組合事務所として使用していた市庁舎内の事務室について退去を求め、組合らの平成24年度の使用許可申請に対して不許可としたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は市に対し、文書手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人Y市労働組合連合会に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
   Y市労働組合連合会
    執行委員長 A 様
Y市
市長 D
   当市が、平成24年1月30日、貴組合に対し、本庁舎の組合事務所の退去を求め、同年2月20日、貴組合からの本庁舎に係る行政財産使用許可申請について不許可としたことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

2 被申立人は、申立人Y市従業員労働組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 (省略。内容は、前記1の記と同じ。)

3 被申立人は、申立人Y市学校職員労働組合及び申立人Y市立学校職員組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 (省略。内容は、前記1の記と同様。)

4 被申立人は、申立人Y市学校給食調理員労働組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 (省略。内容は、前記1の記と同じ。) 
判断の要旨  1 Y市労働組合連合会の申立人適格について
 申立人Y市労働組合連合会(市労連)は、労組法が適用される職員又は地公労法4条により労組法が適用される職員を構成員とする労働組合と、地公法が適用される職員等を構成員とする労働組合とを構成団体とする連合団体であるところ、被申立人市は、地公法上、非現業職員で構成される職員団体は明確に労組法の適用が除外され、法的根拠も機能も区別されているため、本来二重の性格を併せ持つことは想定されておらず、よって、職員団体と労働組合が混在し、法体系を異にする労働団体の連合団体である市労連は労組法上の労働組合に該当しない旨主張する。
 しかし、非現業職員、単純労務職員、公営企業職員、民間に雇用された労働者等がともに加入するいわゆる混合組合の、労組法適用者の問題に関する活動は、原則として労組法上の労働組合としての活動であると認めるのが相当であることに照らすと、上記のような連合団体は、労組法が適用される職員が加入している労働団体を構成団体として組織している限り、構成団体中の労組法適用労働者の問題に関して、労働組合として活動することができると解すべきである。
 市はまた、本件は労組法の適用を受ける構成員自身の労働条件に関する問題ではなく、団体としての活動自体に関する問題であって、過去に混合組合の申立人適格を肯定した中労委命令の判断とは射程を異にする旨主張する。
 しかし、市労連は労組法適用者の問題に関して労働組合として活動することができるのであるから、団体的労使関係に係る活動についても、それが非現業職員に限った活動であるなど特段の事情がない限り、直接的又は間接的に労組法適用者の問題を含めた労働組合の活動とみるのが相当である。市労連が行った組合事務所としての使用に係る行政財産の目的外使用許可の申請についてみると、これが非現業職員に限った活動であるとの特段の事情も認められないから、当該申請に係る市の対応について不当労働行為の救済を申し立てることができるというべきである。
 以上のとおりであるから、市労連は不当労働行為救済申立ての申立人適格を有する。
2 市が組合らに対して行った退去通告及び行政財産使用の不許可について
 認定した事実によれば、組合らは市から年度ごとに行政財産の目的外使用許可を受け、市本庁舎の一部分を組合事務所として使用してきたものであって、労使合意の上で組合事務所の貸与を受けていたというものではない。しかし、市が使用許可をしないことに方針を転換すれば、組合の活動や運営を阻害するのであるから、市が方針を転換した経緯、また、市が示す退去通告及び本件不許可処分の理由や組合らへの理由の説明・協議状況によっては、組合活動に対する支配介入に該当する余地があるというべきである。
 市が方針を転換した経緯についてみると、庁舎内での政治活動問題がY市会で取り上げられたことが契機であると推認される。しかし、市は組合らに対し、庁舎内での政治活動問題と庁舎内に組合事務所が置かれていることとの関連性について十分な検討を行わず、また、自らの見解を明らかにして具体的な説明や協議を行うことのないまま、一方的に今後は使用を認めないとの結論だけを通告していたというのが相当である。
 市は、平成23年度から4部署の事務室が狭隘なため事務スペースが必要になったことをもう1つの理由として挙げている。しかし、市が従来、組合事務所として使用されてきたスペースを行政事務スペースとする必要があると判断するに当たって、行政事務スペースの充足度について十分な検討を行ったと解することはできない。また、市が組合らに対し、行政事務スペースの不足について具体的な説明や協議を行おうとしたと認めるに足る疎明もない。
 以上により、市が掲げる退去通告及び本件不許可処分の理由について、合理性があると認めるに足る疎明はなく、また、市はその理由について自らの見解を明らかにして具体的な説明や協議を行っていないというのが相当である。
 そうすると、市は使用許可をしないことにより組合らが被る不利益について代替措置を含む協議も一切なく、また、団交にも応じず、拙速に申立人らに対し、退去通告及び本件不許可処分を行い、もって申立人らが相当の期間にわたり、組合活動の拠点として使用してきた組合事務所について従前どおりに使用できない状況を生ぜしめたと判断される。
 以上のとおりであるから、市が組合らに対し、市本庁舎から事務室の退去を通告し、行政財産使用許可申請に対して不許可処分としたことは組合に対する支配介入に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成26年(不再)第13号 一部変更 平成27年10月21日
 
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