労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  尚美学園 
事件番号  中労委平成26年(不再)第50号 
再審査申立人  学校法人尚美学園(「学園」) 
再審査被申立人  尚美学園勤労者労働組合(「組合」) 
命令年月日  平成27年10月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、学園が、① 大学改革再編構想に伴う雇用等への影響に係る事前協議等の要求、A副執行委員長の解雇等組合員らの処遇に関する原状回復の要求等を議題とする3回の団体交渉(「本件団交」)に誠実に対応しなかったこと、その後、② 大学改革再編構想についての説明の要求等に係る組合の団体交渉申入れ(「第4回団交申入れ」)に応じなかったことなどが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
2 初審埼玉県労委は、学園が、(1) 本件団交の要求事項のうち、上記①の要求に対して、本件団交において誠実に対応しなかったこと、(2) 第4回団交申入れに応じなかったことが、それぞれ労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、上記(2)で不当労働行為とされた議題に関する団交応諾及び文書手交(上記(1)及び(2)に関して)を命じ、その余の申立てを棄却する旨の初審命令を交付したところ、学園は、上記の救済部分を不服とし、再審査を申し立てたものである。  
主文   本件再審査申立てを棄却する。
ただし、初審が命じた手交文書の文言の一部を訂正する。 
判断の要旨  1 前記事案概要1①の要求に係る本件団交における学園の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
 (1) 上記①の要求は、組合員の労働条件その他の待遇に関する事項ないし組合と学園との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって、学園によって処分可能なものが含まれていると認められ、義務的団交事項に当たると認められる。
 (2) 学園は、本件団交の申入れに対し、組合が求める期限内に回答したり、各団交において相応の時間を費やすなど、それなりの対応を行ったことは認められる。
 しかし、本件団交において、義務的団交事項に当たる上記①の要求について、本件団交の前に組合へ送付した回答書以上の具体的な内容を示さなかったこと、同回答書に直接記載されていない内容については、団交ではなく、文書でのやり取りを求めるという姿勢をとったこと、組合が求めたA副執行委員長の解雇の無効に伴う学園の措置等について、学園は後で示すなど述べていたにもかかわらず、いずれも追って具体的な内容等を示した事実はうかがわれないことが認められる。そうすると、学園は、3回にわたる本件団交において、上記の要求について、組合に対し、未だその理解を得るよう十分な協議や説明をしたとはいえず、団交での議論が深まることはなかった。
 (3) このように、学園は、上記①の要求について、組合の理解を得るよう十分な協議や説明を行っていないのであるから、誠実な団交を尽くしたとまでいうことはできず、当該学園の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
2 学園が、前記事案概要1②の要求に係る第4回団交申入れに応じなかったことは、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
 (1) 大学改革再編構想についての説明の要求は、同要求及びそれに伴う雇用等への影響に係る事前協議等の要求の一環として、学部の廃止による教員の解雇など、同構想に伴う組合員の雇用等への影響を懸念して団交を申し入れたと認められるから、その限りにおいて義務的団交事項といえる。
 (2) 大学改革再編構想についての説明の要求に関して、学園は、第2回団交において、今後話すと述べたにもかかわらず、同団交以降、説明しておらず、本件団交において、組合に対し説明を行ったことは認められない。
 また、学園は、同要求について、第4回団交申入れ前に、「申入れがなされた時点で検討する」と回答しているので、正当な理由なく第4回団交申入れを拒否したわけではない旨主張するが、第4回団交申入れ後の回答書をみると、学園は、同要求に対して、書面で回答する意思を有していたとは認められるが、団交申入れに応じる意思を有していたとまでは認められない。
 (3) このように、学園は、大学改革再編構想についての説明の要求について、必要な対応を行ったとはいえず、第4回団交申入れを拒否したことについて、正当な理由はない。
 (4) 以上からすると、学園が、上記②の要求に係る第4回団交申入れに応じなかったことは、正当な理由なく組合の団交申入れを拒否するものであり、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
埼玉県労委平成25年(不)第7号 一部救済 平成26年8月28日
 
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