労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  尚美学園 
事件番号  埼労委平成25年(不)第7号 
申立人  尚美学園勤労者労働組合 
被申立人  学校法人尚美学園 
命令年月日  平成26年8月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が、(1)①組合員の人事異動、懲戒処分等に係る事前同意等、②組織変更、組合員の労働条件の変更等に係る事前同意等、③大学の改革再編構想の説明及びそれに伴う雇用等への影響に係る事前同意等、④解雇無効判決に伴う組合員の原状回復及び法人役員の責任追及等に係る団交申入れに対し、団交の前に文書で拒否の回答をした上、第1回から第3回までの団交においてこれと同様の拒否の回答を繰り返したこと、(2)第4回団交を拒否したこと、(3)申立人組合との間で第2回団交を平成25年1月下旬に行うことに合意したにもかかわらず、同年2月28日まで開催を引き延ばしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 埼玉県労委は法人に対し、1 第4回団交申入書に係る議題のうち一部のものについての団交応諾、2 文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、平成25年7月8日付け第4回団体交渉申入書に係る議題のうち、以下のものについて、申立人との団体交渉に応じなければならない。
(1) 尚美学園大学の改革再編構想に関する説明の要求
(2) 尚美学園大学の改革再編に伴い、組合員の雇用及び労働条件に影響がある場合には、事前に時間的余裕をもって申立人に通知し、協議の上、同意を得ることの要求
(3) 申立人の副執行委員長の解雇処分が無効との判決が確定したことに伴う、同人及び申立人の執行委員長の原状回復のための措置の要求
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を本命令書受領の日から7日以内に手交しなければならない(下記文書の中の年月日は、手交する日を記載すること。)。
記(省略)
3 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員の人事異動、懲戒処分等に係る事前同意等の要求に係る法人の対応について
 当該要求は、団体的労使関係の運営に関する事項であるので、義務的団交事項である。本件に関して、被申立人法人は申立人組合に対し、第1回団交の前に文書で回答しただけでなく、同団交において組合の要求を改めて拒否した上、その理由も述べた事実が認められる。また、組合が団交の場で何らかの代替案を提示したり、法人の回答について質問を重ねたりした事実は認められない。本件に関しては、法人から代替案を提示することが難しい上に、組合による交渉を進展させるための対応が十分でなかったため、結果的に、法人が人事権に係るものであるとの理由を述べて拒否の回答をした後は組合による抗議と法人による拒否回答を繰り返すだけになり、団交が早々に行き詰まったものと考えるのが相当である。したがって、法人の対応は労組法7条2号の不当労働行為には当たらない。
2 組織変更、組合員の労働条件の変更等に係る事前同意等の要求に係る法人の対応について
 当該要求は、いずれも団体的労使関係の運営に関する事項であるので、義務的団交事項である。組織変更に係る事前同意等の要求に係る対応については、法人がその組織、事業の解散、譲渡、再編、縮小、統廃合等は法人の専権事項であると述べた点を除き、前記1で述べたのと同様の事実が認められるから、法人の対応が不誠実であるとはいえない。組合員の労働条件の変更等に係る事前同意等の要求に係る対応については、第2回団交において組合が事前の通知及び協議を拒否する理由を質問したにもかかわらず、これに回答しなかった事実が認められ、このような法人の対応は不誠実であると解するのが相当である。 
3 大学の改革再編構想の説明及びそれに伴う雇用等への影響に係る事前同意等の要求に係る法人の対応について
 大学の改革再編構想の説明は組合員の労働条件に影響がある場合にのみ義務的団交事項に当たり、本件では雇用等への影響についての説明が求められているのであるから、義務的団交事項に当たる。また、事前同意等の要求については団体的労使関係の運営に関する事項であるから、義務的団交事項に当たる。
 大学の改革再編構想に伴う雇用等への影響に係る事前同意等の要求に関しては、前記2で述べたのと同様に第2回団交において法人が組合の質問に回答しなかった事実が認められるから、法人の対応は不誠実であると解するのが相当である。
4 解雇無効判決に伴う組合員の原状回復及び法人役員の責任追及等の要求に係る法人の対応について
 解雇無効判決に伴う組合員の原状回復の要求は、組合員の労働条件に密接に関係する事項及び組合員の個別の権利に係る紛争に関する事項であり、義務的団交事項である。法人は第1回から第3回までの団交において、組合の要求を拒否するのみで、何らかの代替案を提示するなどして本件紛争の解決を図るべく努力したとの事実は認められない。このような法人の対応は不誠実である。
 役員の責任追及の要求は、義務的団交事項には当たらず、これに係る法人の団交での対応は不当労働行為に当たらない。
5 第4回団交の拒否について
 本件団交に係る組合の要求のうち、①大学の改革再編構想の説明、②大学の改革再編に伴い、組合員の雇用及び労働条件に影響がある場合の事前の通知等、③解雇無効判決に伴う組合員の原状回復に係るものについては、前記3及び4で述べたとおり、第3回までの団交において法人が十分な説明を行っていないこと、組合の質問に回答していないことなどからすると、法人の団交拒否に正当な理由があるとはいえず、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。
6 第2回団交の開催日が平成25年2月28日になったことに係る法人の対応について
 法人が当該団交の開催の延期を求めたのは、この時期が年度末を控えて多忙であった上、大学の学部再編のため、文部科学省と折衝をしなければならないという特別の事情があったためであると認められる。法人が団交を嫌がって、故意に延期したとまでは認められない。したがって、本件に係る法人の対応は不当労働行為には当たらない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成26年(不再)第50号 棄却 平成27年10月21日
 
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