労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東海旅客鉄道(減率等適用) 
事件番号  中労委平成25年(不再)第26号 
再審査申立人  ジェイアール東海労働組合(「組合」) 
再審査申立人  ジェイアール東海労働組合名古屋地方本部(「地本」) 
再審査被申立人  東海旅客鉄道株式会社(「会社」) 
命令年月日  平成27年10月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、会社が、① 19年度年末手当について、地本組合員14名に対し「成績率(減額)」を適用して算定した額を支給したこと(以下「減率適用」という。)、② 同20年度夏季手当について、地本組合員14名に対し減率適用したこと、③ 同年度定期昇給にあたり、地本組合員6名に対し定期昇給欠格事項を適用して算定した額を定期昇給額とし、それに基づいて賃金を支給したこと(以下「欠格条項適用」といい、減率適用と併せて「減率等の適用」という。)は、いずれも組合が19年11月4日に行ったストライキ(以下「11.4スト」)に対する報復であり、労働組合法第7条第1号及び同第3号に該当する不当労働行為であるとして、組合が救済申立てを行った事案である。
2 初審愛知県労委は、上記①ないし③会社の行為はいずれも不当労働行為に当たらないとして、救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。 
主文   本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件組合員に対する減率等の適用が11.4ストを理由として行われたものということができるか
 11.4ストは、19年度年末手当の査定対象期間後に行われたものであるから、同手当における本件組合員に対する減率適用が、同ストを理由としたものであるということはできない。また、査定対象期間内に11.4ストが行われた20年度夏季手当及び同年度定期昇給についても、減率等の適用を受けた本件組合員の約半数が同ストに参加していないこと、同ストに参加した本件組合員の過半数が減率等の適用を受けていないこと等に鑑みれば、同手当及び定期昇給における本件組合員に対する減率等の適用が、11.4ストを理由とするものであるとみることはできない。
2 本件組合員に対する減率等の適用が組合らの組合員であること等を理由とするものであるということができるか
 (1) 減率等の適用は、査定対象期間内における社員の平素の勤務成績を、その所属長が十分精査して行うものとされており、減率適用あるいは昇給の有無及びその昇給額を第一次的には所属長の裁量的な判断に委ねているものであるが、他方で所属長の裁量に一定の枠を設けており、恣意的あるいは偏った運用が行われることのないように制度設計されたものと一応いうことができる。
 (2) 社員の平素の勤務成績は、現場の箇所長より報告される社員の平素の勤務状況に基づき判断されるが、平素の勤務状況(非違行為等の有無とその内容)は、現場において社員に対し注意指導等を行った管理者が、原則として注意指導を行った勤務のうちに、注意指導の内容と対象者とのやり取りを、「いつ」「どこで」「誰が」「なぜ」「どのように」を記載する所定の様式に沿って記録して箇所長に報告し、箇所長が半期毎にまとめて報告したものによって把握されている。報告内容に正確を期すため、箇所長は、必要に応じて報告をした管理者に直接事情を聴取を行い、また、各現場では管理者ミーティング等を通じて管理者間で指導等の内容に差異が生じないように統一化を図るなど、勤務状況の報告や日々の注意指導等について恣意的な運用がなされないような対応が取られている。
 (3) 上記(2)のとおり、非違行為等の有無とその内容は、確立された手法と恣意を排除するべく配慮された運用によってほぼ正確に把握されているといえる。そして、本件組合員に対する減率等の適用の理由として挙げられた個々の行為は、いずれも、乗務員あるいは駅員として当然に履践しなければならない事柄について遵守できていなかったことにより生じた、安全・安定輸送の確保に障害となるおそれを生じさせる行為等であって、減率等の適用事由たる非違行為と評価されてもやむを得ないものといえる。
 (4) 上記(3)のとおり、本件組合員が行った行為は、いずれも減率等の適用事由たる非違行為と評価されてもやむを得ないものであり、各査定対象期間内において本件組合員が行った個々の非違行為の軽重とその回数に鑑みれば、減率等の適用を行ったことは、会社が設ける適用基準に合致するものであるから、不合理とはいえない。
 (5) 以上で見たとおり、会社が、本件組合員に対し、合理的な理由が存在しないにもかかわらず減率等の適用を行ったとは認められない。そして、以上の認定・判断によれば、本件減率等の適用に関して、会社に組合らの組合員を不利益に扱うなどの特定の意図や目的があったとすることはできないし、また、会社が、本件組合員と同様の非違行為を行った非組合員や他労組の組合員について、取扱いを異にし、減率等の適用を行わなかったなどという事情もうかがわれない。
3 本件組合員に対する減率等の適用は労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に該当するか
 上記1及び2からすれば、本件組合員に対する減率等の適用は、11.4ストを理由としたものとはいえず、組合らと会社の間に多数の係争が存在し、そこに鋭い対立関係がみられるとしても、組合らの組合員であることや組合活動を行ったことを理由とするものということもできない。そして、会社が減率等の適用を通じて組合らの活動に支配介入したものということもできないから、労組法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に当たらない。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
愛知県労委平成20年(不)第9号 棄却 平成25年3月25日
 
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