労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成26年(不)第2号 
事件番号  大阪府労委平成26年(不)第2号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成27年9月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   X2は被申立人法人の設置・運営する大学で准教授として勤務していたが、平成25年2月、大学の経営学部臨時教授会において、同人は教育職員としての適格性に欠けている旨の決議が行われた。本件は、①同年3月、X2が申立人組合に加入し、団交が開始されたところ、法人が同人を解雇したこと、②法人が解雇事由の1つとした学生の成績評価に関する確認結果を団交で説明せず、解雇について組合とは十分に協議したとして団交再開を拒否したこと、③事前に協議を行い、組合の同意を得る努力を行うとの労働協約に違反して解雇を強行し、X2に解雇を認めるよう直接、働きかけたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2の解雇について
 認定した事実によれば、X2の解雇事由は、①平成23年度の授業等に関するシラバスの記載を発端とする同人の一連の対応、②同年度に学生がハラスメント相談室に相談した2件の事案に関するX2の言動及びその後の対応、③同年度に行われたファカルティ・ディベロップメント(大学の授業内容・方法を改善し、向上させるための取組み)に基づく授業参観についての経営学部長からの申出へのX2の対応、④同年度に行われたインターネットへの一連の書込みに同人が関与していること、であるとみられるところ、被申立人法人は同人の申立人組合加入を了知する以前から一貫して、同人のこれらの解雇事由に係る言動を問題視していたものといえる。
 組合は、24年2月に法人がX2に対し、懲戒解雇されるか、依願退職するかを迫ってきたものの、その後は何らの対応もしてこなかったにもかかわらず、25年3月、同人が組合に加入し、組合が団交申入れを行ったところ、急遽、2年以上前の出来事について解雇につながる事案だとして解雇手続を進めてきた旨主張する。
 しかし、同年2月に教授会でX2が教育職員としての適格性に欠ける旨の決議が行われたことは就業規則に定める解雇手続の第一段階であり、法人はその後、評議会を開催するなど解雇手続を順次進めていったとみるべきであるから、組合のこの主張は採用できない。また、このほか、組合活動を行ったが故に同人を解雇したと認めるに足る事実の疎明もない。
 以上のとおりであるから、本件解雇はその余を判断するまでもなく、組合活動を行ったが故の不利益取扱いに当たるとはいえず、また、支配介入に当たるともいえない。
2 平成25年3月の団交申入れへの対応について
(1)解雇事由についての説明等
 組合は、X2の解雇事由とされた4点がいずれも事実に反するもの又は解雇に相当しないものであると組合が指摘したにもかかわらず、法人が組合を納得させるための資料提示や説得努力を行わなかった旨主張する。しかし、認定した事実によれば、法人は上記の4点に関し、団交で一定の説明を行い、対応を行っているものということができるから、組合の主張は採用できない。
(2)労働協約に違反して解雇を強行したこと
 25年9月3日付けの組合と法人との協定書には、組合員の労働条件の変更について、法人は事前に組合と協議し、組合の同意を得られるよう努力する旨の記載があることが認められるところ、法人は同年12月5日に行われたX2による学生の成績評価に関する再検証の後、組合と改めて協議することなく、同人の解雇を最終的に決定し、解雇予告を行ったことが認められる。しかし、少なくとも同年8月27日の団交以後は、法人がX2を解雇する意思を明確に有していることを前提として、組合と法人の間で同人の解雇についての協議が進められていたものとみるのが相当であること、一連の団交及び事務折衝の内容をみても、法人は前記2の判断のとおり、一定の説明及び対応を行っていたこと等からすれば、法人が上記協定書に違反して解雇を強行したということはできない。
(3)団交を打ち切り、再開を拒否したこと
 組合は、25年10月30日の団交で法人が解雇事由の①に関連して、学生の成績評価に関する確認結果を踏まえ、次回団交でX2の身分上の扱いについて提案すると回答したにもかかわらず、これを反故にし、解雇について組合とは十分に協議したとして団交を打ち切り、再開を拒否した旨主張する。しかし、その後、組合から上記の確認結果を踏まえた団交の申入れがなかったこと等が認められるから、組合の主張は採用できない。
(4)結論
 以上を総合的に判断すると、法人の一連の対応は団交拒否に当たるとはいえず、組合に対する支配介入に当たるともいえない。
3 X2に解雇を通知したことについて
 組合は、法人がX2に直接、解雇予告通知を行ったことは、同人に解雇を認めさせるよう働きかけたものであって、組合員を組合から引き離し、組合を弱体化させる支配介入に当たる旨主張する。
 しかし、解雇予告は法人が本人に通知する必要があり、それが行われなければ、効力が生じないのであるから、解雇予告通知自体が組合に対する支配介入になり得るものではない。さらに、上記のとおり、法人が協定書に違反して解雇を強行したということはできないこと、法人はその後、組合にも通知していること、法人がX2に対し、解雇を認めるよう特段の働きかけを行ったと認めるに足る事実の疎明がないことなどからすれば、組合の主張は採用できない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成27年(不再)第43号 棄却 平成29年9月6日
 
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