労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  山陽測器 
事件番号  広労委平成26年(不)第3号・第5号 
申立人  広島連帯ユニオン 
被申立人  株式会社山陽測器 
命令年月日  平成27年9月11日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社で正社員として勤務していたX2は、平成26年3月11日、会社の総務部長Y2から、勤務態度不良等を理由に解雇されることになった旨の説明を受け、同月15日、申立人組合に加入した。組合は、同月25日、アポイントなしで会社を訪れ、X2に対する退職強要等を議題とする団交を申し入れた。4月9日、第1回団交が開催され、会社はその場でX2を同月30日付けで解雇する旨発言したが、同月18日の第2回団交において組合からの要求を受け、当該解雇の撤回を決定した。
 本件は、①26年3月25日の業務終了後、Y2がX2を呼び出して面談を実施し、組合に対する誹謗・中傷を行ったこと、②会社が決算賞与を同年4月25日の支給日にX2に支給しなかったこと及びその後、支給することに改めたものの、同年5月30日に支給した決算賞与の額が前年度の半額であったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 広島県労委は会社に対し、文書交付及び決算賞与の追加支給を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社山陽測器は、本命令書受領の日から2週間以内に、下記の文書を申立人広島連帯ユニオンに交付しなければならない。
  広島連帯ユニオン
    執行委員長 X1 様
株式会社山陽測器
代表取締役 Y1
  当社が、貴組合所属の組合員X2に対して、平成26年3月25日に実施した面談における言動は、広島県労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないようにします。
  (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)

2 被申立人株式会社山陽測器は、平成26年5月30日に支給した11万円の決算賞与について、少なくとも19万8千円を超える額を支給することとし、支給済額との差額を本命令書受領の日から30日以内に、申立人組合員X2に支払わなければならない。
3 申立人広島連帯ユニオンのその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人会社の総務部長Y2と組合員X2との面談における言動について
 認定した事実によれば、本件面談は、平成26年3月25日に申立人組合が突然来社したため、会社がその場にいた役員で対応を協議し、①組合がアポイントなしで来社したことを不快に感じたこと及び今後もアポイントなしで来社されては困ることをX2に伝えること、②団交の場で同人の会社での悪いエピソードや個人情報等を話してもよいかを確認することを目的として、同人1人を呼び出して実施したものである。しかし、上記の①及び②の目的は、いずれも組合と協議することなく、同人1人を呼び出して面談を実施したことを正当化することはできない。
 また、面談で組合の悪印象を強調する発言や威圧的な発言があったこと及び面談実施後、会社の営業部長Y3からX2に対し、威圧的な発言があったことが認められる。
 以上のことから、本件面談は組合とX2との離反を図ったものと推認されるため、労組法7条3号の支配介入に該当する。
2 決算賞与の不支給及び減額について
(1)X2に対する不利益取扱い
 決算賞与を不支給としたこと、その後に前年度より著しく減額した額を支給したこと及び他の社員より概ね1か月遅れて支給したことから、経済上の不利益取扱いがあったと認められる。
(2)決算賞与不支給の決定
 本件決算賞与不支給の決定は、客観的な評価基準に基づいて決定されたものではないこと、過去に在職中に不支給となった事例は著しい非違行為を理由とするものが1件であったこと、X2の勤務態度等は芳しいとまではいえないものの、過去の在職中の不支給事例と比べて均衡を失していることからすれば、同人の勤務態度等を理由とする正当なものとは認められない。
(3)組合活動の正当性
 X2の組合加入から本件決算賞与不支給の決定に至るまでの間、組合及び同人の組合活動に関し、正当な組合活動を逸脱した行為があったとは認められない。
(4)不当労働行為意思の存否
 本件決算賞与不支給の決定は、X2の組合加入前になされたものであり、会社の不当労働行為意思に基づくものとは認められない。
 しかし、会社は、同人に解雇予告を行った26年3月11日においては解雇日を半年程度猶予していたが、同人の組合加入の告知(3月21日)から第1回団交(4月9日)までの間に当初の方針を変更して4月30日付けで解雇することとしている。組合加入の告知の日と解雇日を4月30日付けとした時期とが極めて近接していること、本件決算賞与不支給の決定が解雇撤回後も撤回されず、本来の支給日に支給されなかったことから、会社の不当労働行為意思が推認される。
 また、後日、決算賞与を減額して支給したことについては、X2の勤務態度等が本件決算賞与前に特段悪化していない状況においては、少なくとも25年4月支給以前の過去5年間の平均額に準じた額を支給すべきであったところ、組合との関係を意識した状況の下で、他の社員と比べて著しく低い支給額が決定されたものであり、この決定は不当労働行為意思に基づいてなされたものと推認される。
(5)不当労働行為の成否
 以上のとおりであるから、本件決算賞与を不支給としたこと及びその後に前年度より減額して支給したことは労組法7条1号の不利益取扱いに該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広島地裁平成27年(行ウ)第36号 請求一部棄却・命令一部取消 平成28年7月6日
 
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