概要情報
事件名 |
中越エクスプレス |
事件番号 |
中労委平成25年(不再)第39号 |
再審査申立人 |
株式会社中越エクスプレス(「会社」) |
再審査被申立人 |
全日本建設交運一般労働組合(「建交労」) |
命令年月日 |
平成27年10月7日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、23年度の労働基準法第36条に規定する時間外及び休日労働に関する協定並びに同法第32条の4に規定する1年単位の変形労働時間制に関する協定(「労使協定」)の締結に当たり、会社が従業員代表として取り扱った者(県央営業所のC1係長、新潟営業所のC2)に対して、X1組合員らが監禁、脅迫、詰問を行ったなどとして、会社が、同組合員らに対し懲戒処分又は注意指導(「本件懲戒処分等」)を行ったことが、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして建交労及びX1外7名から救済を申し立てられた事件である。
2 初審新潟県労委は、本件懲戒処分等は不当労働行為に当たるとして、会社に対し、同処分等の取消し及び同処分がなければ得られたであろう賃金相当額等の支払を命じたところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。 |
主文
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本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 争点(1)(本件懲戒処分等は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか)
(1) 不利益性について
本件懲戒処分等は、労組法第7条第1号本文の「不利益な取扱い」に該当する。
(2) 組合活動としての正当性について
ア 本件懲戒処分等の対象となった行為は、X1組合員らの4月11日面談(X2ら組合員5名とC1係長との面談)、4月30日面談(X3ら組合員5名とC2との面談)及び5月7日面談(X1、X3とC2との面談)(「本件面談」)における行為、並びにX1組合員のC2に対する3月30日電話及び5月9日会話(「本件会話」、本件面談と併せて「本件面談等」)における行為である。
イ 労働組合の組合員が、従業員代表に対し、労使協定に関する理解や抱負を問い、知識や自覚が足りないとして従業員代表の辞退等を求めたとしても、このことのみをもって組合活動としての正当性を欠くとはいえない。
ただし、仮に本件面談における行為が強要にわたるなど、C1係長やC2の自由意思を不当に制約するような態様で行われた場合には、職場秩序を乱すものとして就業規則の規定に抵触し、組合活動としての正当性は否定され得るが、本件面談においては、C1係長やC2の自由意思を不当に制約するような態様の行為が行われたとは認められないから、X1組合員らの行為が、就業規則の規定に抵触し、正当な組合活動の範囲を逸脱するものであったとはいえない。
ウ また、本件面談は、会社の施設内で行われたことは認められ、形式的に施設内の組合活動を禁じた就業規則の規定に抵触する場面がなかったとはいえないが、当審審問において、会社の総務部長が、施設内の組合活動について、組合員が従業員代表に質問するのは許される旨証言していること、本件面談は休憩室で夕刻遅くから夜間に行われ、就業に影響することが考え難いこと、本件面談は職場秩序を乱すような態様で行われたものでないこと、会社においては従業員が施設内で従業員代表の選出に向けた活動を行うことは許容されていたと考えられ、このことは従業員が組合員であっても変わるべきものではないことからすると、X1組合員らの行為が、就業規則の規定に抵触し、正当な組合活動の範囲を逸脱するものであったとはいえない。
エ 会社は、X1組合員については、本件会話における発言も懲戒処分の対象としているが、本件会話において会社の主張するとおりの脅迫行為があったと認めることは困難であるから、本件会話における同組合員の発言が就業規則の規定に抵触し、正当な組合活動の範囲を逸脱するものであったとはいえない。 (3) 本件懲戒処分等に至る労使関係等について
23年度の労使協定の締結に当たって、従業員代表の選出をめぐる労使対立が一層深刻化していたことが認められ、会社は、会社が従業員代表として取り扱ったC1係長やC2に対して、組合が働きかけを行い、組合員が従業員代表となることを阻止しようとする強い意向を有していたことが推認される。
(4) 不当労働行為の成否について
本件懲戒処分等は、X1組合員らにとって不利益な取扱いであり、処分等の対象となった本件面談等における同組合員らの行為は、いずれも正当な組合活動の範囲を超えるものとは認められない。しかるに、会社は、本件面談等における同組合員らの行為を組合活動として認識した上で、ことさらにこれを取り上げ、監禁等と位置づけて本件懲戒処分等に及んだ。加えて、会社は、組合員が従業員代表となることを阻止しようとする強い意向を有していたことが推認される。そうすると、本件懲戒処分等は、正当な組合活動を理由とする不利益取扱いとみるのが相当であり、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当する。
2 争点(2)(本件懲戒処分等は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか)
本件懲戒処分等は、組合員を威嚇し、組合活動を萎縮させ、組合の影響力を削ぐためになされたものであったと認めることができるから、組合の運営に支配介入したものとして、労組法第7条第3号の不当労働行為にも該当する。
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掲載文献 |
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