概要情報
事件名 |
株式会社中越エクスプレス |
事件番号 |
新労委平成23年(不)第4号 |
申立人 |
全日本建設交運一般労働組合、X1~X8(個人) |
被申立人 |
株式会社中越エクスプレス |
命令年月日 |
平成25年5月15日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
|
事件概要 |
被申立人会社では、平成23年3月以降、会社に近い立場で36協定締結等に係る従業員代表に立候補し、会社によって承認された従業員に対して、組合側がその地位の正当性等について説明を求め、最終的には代表からの辞退を求めるということが繰り返されるようになった。
本件は、こうした中で会社が①同年6月、組合員8名に対し、上記従業員に対して監禁、脅迫等を行ったことを理由に懲戒処分等を行ったこと、②同年7月、組合員X5に対し、県央営業所から燕営業所への異動を命じたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
新潟県労委は会社に対し、上記①の懲戒処分等の取消し等を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社中越エクスプレスは、
(1)申立人X2に対し、
①平成23年6月2日付けの懲戒処分を取り消し、
②別紙明細書記載の金員の支払いをしなければならない。
(2)申立人X3に対し、
①平成23年6月28日付けの懲戒処分を取り消し、
②別紙明細書記載の金員の支払いをしなければならない。
(3)申立人X4に対し、
①平成23年6月28日付けの懲戒処分を取り消し、
②別紙明細書記載の金員の支払いをしなければならない。
(4)申立人X5に対し、
①平成23年6月28日付けの懲戒処分を取り消し、
②別紙明細書記載の金員の支払いをしなければならない。
(5)申立人X6に対し、平成23年6月28日付けの懲戒処分を取り消さなければならない。
(6)申立人X7に対し、平成23年6月29日付けの懲戒処分を取り消さなければならない。
(7)申立人X8に対し、平成23年6月28日付けの注意指導書の交付行為を取り消さなければならない。
(8)申立人X9に対し、平成23年6月29日付けの注意指導書の交付行為を取り消さなければならない。
2 申立人らのその余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合員に対する懲戒処分等について
被申立人会社は、組合員による「詰問」、「脅迫」、「監禁」及び「強要」を懲戒処分等の事由としているが、「詰問」は暴力行為を伴ったようなものでない限り、本来懲戒処分の対象になるものではなく、また、「脅迫」等については、認定した事実によれば、組合員の行った行為をそれらに当たると評価することは適切ではない。
したがって、本件懲戒処分等は、社会通念上又は本件証拠上、いずれも懲戒処分又は何らかの不利益取扱いを科するだけの合理的な根拠を見出し難い不当なものであると判断される。
次に、不当労働行為意思については、会社の組合や組合活動に対する反感、嫌悪は本件調査、審問の全趣旨によって明らかであるが、加えて①会社の就業規則には従業員の懲戒に関する手続規定がなく、事実の認定及び処分の決定が会社の一方的判断でできるシステムになっており、本件懲戒処分等も必ずしも客観的な証拠、資料に基づくことなく、片側のみの資料を根拠としてなされたものであること、②会社には、利益追求を重視するあまり、従業員の労働条件を軽視する体質がうかがわれ、労働者の利益の方を強く主張するような従業員代表は排除の対象になるという発想に傾くであろうと推認されること、③平成23年度の従業員代表の選出につき、県央営業所におけるX10の選出、新潟営業所におけるX2の選出については組合側からみれば正当性を相当程度まで肯定できる事情があったと考えられるのに、会社はこれを考慮せず、誠実な対応をしていないこと、④会社は組合の執行委員長であるX2に対しては真っ先に、それも他と比べ断然早い時期に懲戒処分を断行していること(しかも、これに係る処分対象事実の認定はずさんなものであった。)、⑤本件懲戒処分等が全体として、急に過ぎ、厳に過ぎ、粗雑に過ぎて、組合ないし組合員に対する不信、嫌悪が明らかであることなどが挙げられる。
このような状況の中で、会社は8人の組合員に対し、根拠の認められない不利益な取扱い(本件懲戒処分等)をしたのであるから、そこに会社の不当労働行為の意思を看取することができる。したがって、本件懲戒処分等は労組法7条1号に該当する不当労働行為であり、同時に組合の弱体化を図ったものでもあると考えられるから、同条3号の不当労働行為でもある。
2 X5に対する異動について
本件異動は、会社の業務上の都合による通常の配置転換であったと認められ、X5にとって通勤距離の延長など不利益になることがないとは言えないとしても人事異動に伴う通常の範囲内のものであると考えられるし、通勤費の上昇に対する配慮もなされていて、同人自身がこれに黙示のうちに同意していたと解されることからすれば、労組法7条1号該当の不当労働行為性を見出すことはできない。
また、組合の執行委員であるX5を県央営業所から遠ざけようとしたのではないかという疑いがないわけではないが、会社は当時の2人の乗務員のうち重要な取引先であるT社の業務に詳しいもう1人の乗務員を県央営業所に残したいという事情があったことからすると、本件異動をもって労組法7条3号該当の不当労働行為と評価することは適切ではない。 |
掲載文献 |
|