労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪YMCA 
事件番号  中労委平成25年(不再)第85号 
再審査申立人  大阪YMCA労働組合(「組合」) 
再審査被申立人  学校法人大阪YMCA(「学校法人」) 
命令年月日  平成27年7月15日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、学校法人が、24 年4月に行われた学校法人の事業再編(「本件事業再編」)に際し、①組合員が勤務する教育事業部を23年度限りで廃止したことが労組法第7条第3号の不当労働行為に、②本件事業再編の計画に関する4回の団体交渉(「本件団交」)において十分に協議を尽くさなかったことが同条第2号及び第3号の不当労働行為であるとして、救済が申し立てられた事件である。
2 初審大阪府労委は、上記1の組合の救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
主文   本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 学校法人が、教育事業部を23年度限りで廃止したことは、労組法第7条第3 号の不当労働行為に当たるか。(争点1)
 (1) 教育事業部では大学等から委託されて入学試験問題を作成する事業を行っていたところ、同事業の内容は大学入試に係る文部科学省の通知に沿うものではなく、運営面でも組織としての責任管理体制や事業の継続性に支障を来しかねない事情があった。また、元々教育事業部の事業は予備校事業の一環として行われていたところ、予備校事業は労使合意の下20年度末をもって廃止され、教育事業部等一部の予備校事業のみが進学事業部門において継続されていたものが、本件事業再編では同部門に属する従前の予備校事業は全て廃止され、同部門自体が廃止された。こうした経過からすれば、教育事業部の廃止は予備校事業廃止という労使間で確認された方針に基づく一連の対応の中で実施されたものといえる。そして、教育事業部をめぐる上述の諸事情からすれば、学校法人が進学事業部門の廃止後も教育事業部をあえて存続させるという方針をとらず、23年度末をもって廃止したことが経営判断として不合理であるとまではいえない。
 (2) 学校法人が本件事業再編の計画自体は組合との協議事項ではないとの姿勢を示したことは、予備校事業廃止の際の交渉姿勢とは異なる面があったが、それまでに労使関係が悪化していたとの事情は窺われないこと、本件団交で同事業再編の計画について組合の求めに応じ一定の説明を行っていることを併せ考慮すると、学校法人が組合を嫌悪し弱体化を企図していたとは推認できない。また、教育事業部の事業の運営に当たっていた組合の交渉委員A1及び問題作成担当者であった委員長A2は23年度末をもって退職したが、学校法人はA1らの雇用継続に配慮しており、教育事業部の廃止によりA1らを退職に追い込むことを意図していたとは認められない。
 (3) 労使は20年度末の予備校事業の廃止に際し、教育事業部を含む一部の予備校事業の継続について合意したが、それは当該事業を恒久的に継続する旨ないし組合の同意なく教育事業部を廃止することができない旨の合意とは解されない。したがって、教育事業部の廃止が労使合意に違反し組合を無視する行為であるとはいえない。
 (4) 以上からすれば、教育事業部の廃止は組合を嫌悪し弱体化を図る目的でなされたものと認め得る特段の事情があるとはいえず、労組法第7条第3号には該当しない。
2 本件団交における学校法人の対応は、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるか。(争点2)
 (1) 本件事業再編の計画自体は組合との協議事項ではないとの学校法人の交渉姿勢は、予備校事業廃止の際の交渉姿勢とは異なる面があったが、組合がとりわけ問題とした進学事業部門の廃止は予備校事業廃止という労使間で確認された方針に基づく一連の対応の中で実施されたこと、学校法人は本件団交で同事業再編の計画自体についても一定の範囲で交渉に応じていること等を併せ考慮すると、上記学校法人の対応は不誠実なものとはいえないとともに、組合の弱体化を目的としたものとも認められない。
 (2) 学校法人は、本件事業再編に伴う労働条件の変更については協議するとの姿勢を示し、本件団交の早い段階で教職員の配置先等労働条件の変更内容を提示し、その後も同事業再編の計画に関する説明や資料の提示に時間を割く一方で、不利益を被る労働者への対処案を示し、交渉を打ち切る態度はとらなかった。また、委託契約関係にあった問題作成担当者への補償についても相応の回答をしていた。以上を考慮すると、本件事業再編後の労働条件や処遇に関する団交における学校法人の対応は不誠実なものとはいえないとともに、組合の弱体化を目的としたものとも認められない。
 (3) 以上のとおりであるから、本件団交における学校法人の対応は、労組法第7条第2号にも第3号にも該当しない。
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成24年(不)第9号 棄却 平成25年11月19日
 
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