労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第9号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第9号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成25年11月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人法人の運営するA学院の一組織である教育事業部は、平成23年度末をもって廃止されるまでの間、大学等の入試問題の作成業務を受託する事業を行っており、申立人組合の主要幹部の一人でもあった非常勤講師B2が同事業部の中心的人物であった。本件は、法人が①事業再編に伴って、組合員が多数所属する教育事業部を廃止したこと、②事業再編計画及び同計画により変更される労働条件等を議題とする団交に誠実に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 教育事業部を平成23年度限りで廃止したことについて
 申立人組合は、被申立人法人が合理的な理由なく教育事業部を廃止し、組合員B2をはじめ同事業部の事業にかかわっている多数の組合員の収入の途を閉ざして組合弱体化を図った旨主張する。
 しかし、B2についてみると、確かに、教育事業部の閉鎖によって同人は少なからず不利益を受けることになったといえるものの、法人は同人に対し、24年度における週5コマの授業を打診するなど同事業部の閉鎖によって同人が受ける不利益について一定の対案を示した上で、雇用の継続を打診したが、同人はこれを受け入れずに退職したとみるべきであり、また、同事業部の事業は同人が設立した新会社に顧客とともに引き継がれており、法人はこれに協力する姿勢を示していたといえるから、同事業部の廃止によって同人の実質的解雇や法人からの排除を図ったなどとみることはできない。
 また、B2以外の組合員については、組合は法人に対して誰が組合員であるかを通知していなかったところ、教育事業部の業務にどの程度の数の組合員が携わっていたかを法人が認識し得たのかという点について、認めるに足りる事実の疎明はない。そして、同事業部の事業を含む「進学事業」に従事していた非常勤講師及び常勤職員33名についてみると、自ら退職したB2ら4名を除く者は24年度も引き続き法人と雇用契約を結んでいるのであるから、B2以外の組合員についても、法人からの排除による組合弱体化を図ったなどとみることはできない。
 組合はまた、組合と法人との間で教育事業部の存続をうたった覚書が21年2月に交わされているのであるから、同事業部の廃止は当該覚書に反する行為である旨主張する。しかし、同覚書は財政的な展望等において見解の相違があることを確認した上での当面の合意事項を記載したものとみることができるところ、社会経済情勢、使用者の財政状況等の変動により、それらの変動を踏まえた対応がなされることはあり得るのであって、また、法人は同事業部を廃止する理由を説明した上でその影響を受ける組合員の労働条件について交渉を行う姿勢を示していたといえるから、法人が同覚書に反する対応をとったとはいえない。
 組合はまた、法人の中でも数少ない黒字部門であった教育事業部を突如廃止したことは合理性に欠ける旨主張する。しかし、認定した事実によれば、同事業部の単独での収支は判然としないものの、進学事業全体では毎年度赤字が続いており、23年11月の折衝における組合側の発言によれば、同事業部の収支が赤字であったことは組合自身も認識していたと考えられるのであるから、同事業部が黒字であるとの組合の主張は採用できない。
 さらに、法人は教育事業部の収支状況のみでなく、リスク、将来性等を勘案しているところ、19年7月頃、文部科学省から、入試問題の作成を外部の機関等に行わせることは好ましくないとする通知が国公私立大学長あてになされていることなどからみて、入試問題作成業務が法人にとって潜在的なリスクを有していることは否定できない。したがって、法人が収支状況、リスク、将来性等からの経営判断として、教育事業部を23年度限りで廃止したことが不合理とまではいえない。
2 団交における対応について
 組合は、法人が①対外告知によって教育事業部の廃止を既成事実化するまで同事業部の財務資料を提出せず、また、提出された財務資料や同事業部廃止の理由説明も組合を納得させるものではなかったこと、②重大な労働条件の変更を伴う状況であったにもかかわらず、23年12月19日開催の団交まで労働条件の変更案を出さず、また、その内容も不十分であったことが不誠実団交に当たる旨主張する。
 しかし、認定した事実によれば、法人は教育事業部を閉鎖した理由について一定の説明を行ったとみることができ、また、閉鎖は財務上の理由のみによるものではないところ、財務資料についても組合の求めに応じて作成し、説明したのであるから、これらの点について法人の対応が不誠実であったとはいえない。
 労働条件の変更案の提示時期等については、法人は、同年12月15日の団交申入れの前の折衝の段階から、一貫して、教育事業部の廃止や本件事業再編に伴う労働条件の変更について、組合と団交を行う姿勢を示していたといえ、この点についても法人の対応が不誠実であったとはいえない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成24年(不)第9号 棄却 平成25年11月19日
 
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