概要情報
事件名 |
ホッタ晴信堂薬局 |
事件番号 |
中労委平成25年(不再)第41、43号 |
再審査申立人 |
株式会社ホッタ晴信堂薬局(「会社」) |
再審査申立人 |
三多摩合同労働組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
三多摩合同労働組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
株式会社ホッタ晴信堂薬局(「会社」) |
命令年月日 |
平成27年7月1日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
|
事案概要 |
1 本件は、会社が、組合に加入して活発に組合活動を行ったA組合員に対し、平成21年11月30日付け業務改善命令及び損害賠償請求、同日付け懲戒処分、同年12月30日付け業務改善命令並びに平成22年2月23日付け解雇を行ったこと等が不当労働行為であるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、① 平成21年11月30日付け業務改善命令及び損害賠償請求、同日付け懲戒処分、同年12月30日付け業務改善命令並びに平成22年2月23日付け解雇をなかったものとして取り扱うとともに、A組合員に解雇の翌日から職場に復帰するまでの間の賃金相当額を支払うこと等、② 文書交付、③ 履行報告をそれぞれ命じ、その余の申立ては棄却する旨の初審命令書を交付したところ、会社は、救済部分を不服とし、また、組合は棄却部分を不服とし、それぞれ再審査を申し立てたものである。
3 なお、本件については、解雇無効を争う別件訴訟が行われていたが、平成25年12月19日、A組合員の解雇を無効とし、同人が、会社に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する東京地方裁判所立川支部の判決が最高裁判所において確定し、平成26年3月18日、A組合員は、解雇期間中の賃金等について、会社から支払を受け、同年4月21日以降、会社に復職している。 |
主文の要旨 |
会社に対し、A組合員に対する平成21年11月30日付け業務改善命令及び損害賠償請求、同日付け懲戒処分並びに同年12月30日付け業務改善命令をなかったものとして取り扱うことを命じたが、解雇の翌日から職場に復帰するまでの間の賃金相当額を同人に支払うことは命じなかった。 |
判断の要旨 |
会社が、A組合員に対し、平成21年11月30日付け業務改善命令及び損害賠償請求、同日付け懲戒処分、同年12月30日付け業務改善命令並びに平成22年2月23日付け解雇を行ったことは、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いに当たるか。
1 会社は、A組合員に対し、業務改善命令及び損害賠償請求に加え、出勤停止3日間及び始末書の提出を求める懲戒処分を行い、最終的に解雇を行ったものであるところ、損害賠償請求、懲戒処分及び解雇はもとより、2度にわたる業務改善命令も、それまで会社から従業員に書面による業務改善命令が発せられたことがなかったことからすれば、これらはいずれも、A組合員に、身分上、経済上及び精神上の不利益を与える取扱いであったと認められる。
2 平成21年11月30日付け業務改善命令及び損害賠償請求並びに同日付け懲戒処分について、A組合員が組合活動を行ったが故のものであったかについて検討する。
業務改善命令及び損害賠償請求は、A組合員の業務の改善及び今後における同様の行為の防止を主眼とするよりは、組合ないしA組合員の活動がさらに精力的かつ活発になる中にあって、これをけん制ないし抑制することを目的としたものであったと推認できる。また、同日付け懲戒処分は、いきなり出勤停止3日間を命じるもので、A組合員の行為の態様、同処分までの経緯等に鑑みると、相当性を欠く上に、過度に性急な処分であったといわざるを得ず、同懲戒処分も、同日付け業務改善命令及び損害賠償請求と同一の目的をもって行われた一連の取扱いであったものと推認できる。したがって、これら一連の取扱いは、A組合員が組合活動を行ったが故に行われたものとみるのが相当である。
3 平成21年12月30日付け業務改善命令について、A組合員が組合活動を行ったが故のものであったかについて検討する。
業務改善命令は、19頁にわたる大部かつ子細なもので、A組合員の些細な言動等を理由とするものであって、不相当な内容であった上、同人の組合活動をけん制ないし抑制するためのものであったとうかがわれることからすれば、このことも、上記2で判断した同年11月30日付け業務改善命令及び損害賠償請求並びに同日付け懲戒処分と同様の意図・目的をもって、同人の組合活動を理由として行った一連の行為の一つとして行われたものとみるのが相当である。
4 平成22年2月23日付け解雇について、A組合員が組合活動を行ったが故のものであったかについて検討する。
解雇の理由がA組合員の些細な言動をあえて指摘したに過ぎないものであったこと、会社がA組合員を会社から追い出したいと考えていたものと推認されること、労使間の対立がピークを迎えていた状況下で同解雇が行われていたものであったことからすれば、当該解雇は、A組合員の活動をけん制ないし抑制することを目的としていた会社が、社内の唯一の組合員であったA組合員を会社から追い出すことを企図し、上記2及び3で判断した業務改善命令及び損害賠償請求を始めとする一連の行為の最後の仕上げを目的として行ったものと認めるのが相当である。
5 以上からすると、会社の平成21年11月30日付け業務改善命令及び損害賠償請求、同日付け懲戒処分、同年12月30日付け業務改善命令並びに平成22年2月23日付け解雇は、いずれもA組合員が組合員であることないし同人の組合活動を理由として行われたものであり、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いに当たる。 |
掲載文献 |
|