労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ホッタ晴信堂薬局 
事件番号  都労委平成22年不第36号 
申立人  三多摩合同労働組合 
被申立人  株式会社ホッタ晴信堂薬局 
命令年月日  平成25年5月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社で主任として勤務していたX2は、上司から会社の新体制移行に伴い経営に参加するよう誘われたが、その場合には年収が減額となる可能性があることを示唆されたため、参加を断った。そして、上司らから再度参加を求められて困惑し、申立人組合に加入した。
 本件は、組合がX2の組合加入を会社に通知し、団交申入れをした後、会社が①X2を営業会議に出席させなかったこと、②同人の主任業務を停止したこと、③労働者の過半数代表選挙に際して組合の要求を拒否するなどしたこと、④X2の賞与を減額したこと、⑤同人に対し、業務改善命令、損害賠償請求、懲戒処分及び解雇を行ったこと、並びに⑥団交における会社の対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は会社に対し、1 X2に対する主任業務停止、冬期賞与減額、業務改善命令、損害賠償請求、懲戒処分及び解雇をなかったものとして取り扱うこと等、2 文書交付、3 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社ホッタ晴信堂薬局は、申立人三多摩合同労働組合の組合員X2に対する、平成21年6月18日付主任業務停止、21年冬季賞与減額、11月30日付業務改善命令、同損害賠償請求、同懲戒処分、12月30日付業務改善命令及び22年2月23日付解雇を、それぞれなかったものとして取り扱い、同人に対し、以下(1)ないし(3)の措置を講じなければならない。
(1) 主任としての業務に復帰させること。
(2) 21年冬季賞与として金260,000円を支払うこと。
(3) 解雇の翌日から職場に復帰するまでの間の賃金相当額を支払うこと。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、申立人組合に対して、下記内容の文書を交付しなければならない。
年  月  日
   三多摩合同労働組合
   執行委員長 X1 殿
株式会社ホッタ晴信堂薬局
代表取締役 Y1
   当社が、貴組合の組合員であるX2氏に対し、平成21年6月18日付けで主任業務を停止したこと、21年冬季賞与を減額したこと、11月30日付けで業務改善命令を発し、損害賠償請求、懲戒処分を行ったこと、12月30日付けで業務改善命令を発したこと、22年2月23日付けで解雇を行ったこと、及び貴組合が21年4月6日付けで申し入れた要求事項に係る団体交渉において、就業規則やX2氏の勤務時間及び有給休暇の取得状況の分かる資料を提示して誠実に対応しなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
   (注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。)

3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2を営業会議に出席させなかったことについて
 被申立人会社が申立人組合から団交申入れ等を受け、当日予定されていた営業会議においてそれへの対応を緊急に検討しようと考えたこと、及びX2は相手方当事者であることから、出席を拒んだという会社の主張は特に不合理であるとはいえない。また、X2が出席して行われた営業会議において同人と他の参加者との意見の対立により議論が紛糾し、収拾がつかなくなることがあったことからすると、昼の営業会議が開催されなくなったことにはやむを得ない事情があったというべきである。以上のとおり、会社が昼の営業会議を開催しなくなったこと等にはそれ相応の事情が認められ、組合を嫌悪してのものであったとの事情は認められない。
2 X2の主任業務を停止したことについて
 会社は約8年にわたり主任の地位にあったX2について、同人が活発に組合活動を行うようになり、労使関係が悪化しつつあった時期に同人の主任業務を停止したものであり、その理由として会社が挙げたものは疑問が残るものであったことからすると、会社が主任業務を停止した真の理由は、組合員である同人を事実上降格させ、他の一般従業員に対して、同人の担当カテゴリーの業務に関する指示を行うことを禁止することにより、同人の社内での影響力を削ぐことを企図したものとみざるを得ない。したがって、当該主任業務の停止は組合嫌悪の表れと推認することができる。
3 労働者の過半数代表者選挙に際して組合の要求を拒否するなどしたことについて
 過半数代表者選挙に際して組合が求めた選挙管理委員会の設置、東京都労働相談情報センター職員の投票・開票への立会い、広報活動の実施は、いずれも必須の手続とされるものではなく、会社が当然に要求を受け入れるべきであったとはいえず、また、要求を採用しないことをもって立候補者であったX2を不利に取り扱おうとしたものであるとも認められない。
4 X2の賞与を減額したことについて
 平成21年冬季賞与の査定は、X2が活発に組合活動を行い、労使関係が悪化するとともに、会社によって同人に対する主任業務の停止等一連の処分がなされた時期に行われたものであること、会社による査定に問題が認められることを併せ考えると、同人の支給額が夏季賞与の0.7倍の14万円にとどまったことは、同人の組合活動を嫌悪して行われた不利益取扱いに当たると解するのが相当である。
5 X2に対し、業務改善命令、損害賠償請求、懲戒処分及び解雇を行ったことについて
 X2に対する平成21年11月30日付けの業務改善命令は出勤停止及び損害賠償請求とともに行われたものであるが、このような厳しい処分を行ったにもかかわらず、会社は同人の提案した再発防止策については一顧だにせず、再提出を求めており、同人の落ち度を責めることに主眼が置かれていたといわざるを得ない。さらにその他の事情も考慮すると、会社による業務改善命令等の一連の行為は組合を嫌悪し、会社における唯一の組合員であるX2を退職に追い込むために行われたものであり、その帰結として解雇が行われたものと解するのが相当である。そうすると、これらの業務改善命令等及び解雇は、一体として、活発な組合活動により会社と対立していたX2の組合員としての存在及び組合活動を嫌悪して行われた、同人に対する不利益取扱いに当たるというべきである。
6 団交における会社の対応について
 組合の平成21年4月6日付け要求事項においては、X2の労働条件の不利益変更や有給休暇の日数及び未払残業代が議題となっていたため、就業規則を参照しなければ、中身のある団交を行うことが困難であったと考えられる。同要求事項に関する各団交において、会社が就業規則を提出しなかったこと、勤務時間及び有給休暇に関する資料を提出することなく、残業代や有給休暇が労基法どおりに与えられているかについて組合の納得を得ようとする説明を行わなかったことは、不誠実な団交に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第41、43号 一部変更 平成27年7月1日
 
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