労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ユアサ商事 
事件番号  中労委平成26年(不再)第27号 
再審査申立人  東京統一管理職ユニオン(「組合」) 
再審査被申立人  ユアサ商事株式会社(「会社」) 
命令年月日  平成27年6月17日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、組合が、平成24年7月3日付けで、会社に対し、「組合員Aの継続雇用後の再雇用拒否について」を議題として、団体交渉を申し入れたところ(以下「本件団体交渉申入れ」)、会社が、組合員Aを再雇用拒否した事実はないこと、それまで5回にわたって団体交渉に応じ、説明を尽くしてきたこと等を理由に本件団体交渉申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、東京都労委に救済申立てを行った事件である。
2 初審東京都労委は、会社が本件団体交渉申入れに応じなかったことは労働組合法第7条第2号の不当労働行為には当たらないとして組合の救済申立てを棄却し、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令の概要  主文
 本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  会社が本件団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるかについて
1 第1回から第5回までの団体交渉の状況
 (1) 第2回目と第3回目の団体交渉の間でビル管理人業務の提案が会社からなされ、それ以降の団体交渉における協議の具体的項目に変化があるものの、実際の団体交渉における実質的な協議の内容に鑑みれば、「契約更新」、「高年法の適用」及び「本件ビル管理人業務の提案」の3項目が5回にわたる団体交渉の主たる議題だったと認められる。
 (2) 会社は、高年法は必ずしも65歳までの雇用を義務づけているものとは解されない、業績評価シートの作成面に手続的な問題があったにすぎず組合員Aに対する人事考課そのものは変更されていない、審査部での組合員Aの評価は高くはない、組合員Aを審査部で勤務させることにメリットがあるとは考えておらず審査部での勤務を前提として契約更新する考えはない旨繰り返し回答していたのであるから、会社としての考え方は、団体交渉の中で説明していたということができる。
 組合は、5回の団体交渉を通じ一貫して、高年法の趣旨に関する組合の解釈、つまり、65歳までの雇用を確保することが原則であるとの主張を主要な根拠として、組合員Aの契約更新を求めていた。高年法の解釈と運用については、会社は、第2回団体交渉において、65歳までの雇用を義務づけるものではないという見解を示し、以後その見解を変えることはなく、この点についても両者の考え方は平行線をたどっていた。当時、高年法については、65歳までの雇用確保を必ずしも義務づけるものではなく、組合員Aの契約更新の可否を判断するに当たり、高年法の解釈と運用に関して、上記のように会社と組合との見解が相違したとしても、そのことをもって、会社の対応を不相当であると断じることはできない状況であった。
 こうした団体交渉の状況に鑑みれば、組合が、能力評価の不相当性や高年法の趣旨を踏まえて組合員Aの契約更新を要求した点は、組合と会社の間で更に交渉を重ねても、それ以上進展する見込みがない段階に至っており、少なくとも第5回団体交渉の時点で、会社と組合の間の団体交渉は行き詰まりに達していたといわざるを得ない。
 (3) 本件ビル管理人業務の提案の点については、会社が、組合員Aについては契約更新をしないとの当初の対応を変更し、新たな2年間の雇用契約を提案したものであり、そこには、組合員Aの雇用を維持しようという配慮があったものとうかがわれる。同提案につき、組合は、第3回団体交渉以降、組合員Aが同業務を嫌がっていることを理由に受け入れることはできないとの態度で一貫していたのであるから、この点についても、組合と会社間の団体交渉は行き詰まりに達していたといわざるを得ない。
 (4) 以上からすれば、少なくとも第5回団体交渉の終了の時点においては組合員Aの再雇用契約の契約更新に関して、5回にわたる団体交渉を経て、組合と会社との話合いは平行線をたどり、これ以上団体交渉を重ねても交渉が進展する見込みはなく、また、その状態になったことが専ら会社の不誠実な対応によるものであったとまではいうことができないから、両者の交渉は行き詰まりの状態に達していたといえる。
2 第5回団体交渉以降、本件救済申立てまでの間について
 第5回団体交渉後、本件団体交渉申入れまでの間に、組合から、新たな提案や要求が示されるなど、会社が組合の本件団体交渉申入れに応じるべきであったといえるような事情は認められないといわざるを得ない。
 したがって、会社が組合の本件団体交渉申入れに応じなかったことには正当な理由があり、これを労働組合法第7条第2号の不当労働行為であるということはできない。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成24年(不)第52号 棄却 平成26年3月18日
 
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