労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本アイ・ビー・エム 
事件番号  中労委平成25年(不再)第61号 
再審査申立人  日本アイ・ビー・エム株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  全日本金属情報機器労働組合 
再審査被申立人  全日本金属情報機器労働組合東京地方本部 
再審査被申立人  全日本金属情報機器労働組合日本アイビーエム支部(「支部」、3組合を総称して「組合」) 
命令年月日  平成27年6月17日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 会社は、平成24年9月18日から20日にかけて、支部の組合員A1ないしA6(以下「A1ら6名」)に対し、おおむね1週間後を解雇日とする解雇予告を順次行うとともに、解雇予告後の出社等を禁止した。また、会社は、解雇予告と併せて、会社が設定した期限(解雇日よりも前に設定されていた。以下「自主退職期限」)内に上記解雇日付けで自主退職を申し出れば、解雇を撤回して退職加算金の付加や再就職支援等を行う旨も通知した。組合は、組合員に対する解雇予告通知が行われる都度会社に抗議するともに、別議題を協議する場として直近の9月21日予定の団体交渉(以下「9.21団交」)の議題にA1ら6名に対する解雇予告通知問題を追加して9.21団交で協議するよう申し入れた。
 本件は、組合が、9.21団交においてA1ら6名に対する解雇予告通知問題に関する実質的な協議を行わずに組合の申入れを拒絶した会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たると主張して、救済申立てを行った事案である。
2 初審の東京都労委は、会社の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、文書掲示及び交付を命じたところ、これを不服とした会社は再審査を申し立てた。 
命令の概要  主文の要旨
 本件再審査申立てを棄却する。(ただし、初審命令主文第1項の記を一部訂正)  
判断の要旨  1 会社は、組合の指定した9.21団交においてA1ら6名に対する解雇予告通知問題を実質的に協議すべき義務を負っていたか
 (1) 本件の解雇は、労務提供の不能や労働能力等の欠如という個別的事情を理由とする就業規則に基づく解雇であるから、労働者がその合理性・相当性を検討するのに必要な具体的な事情を確認するのは当然である。まして、本件では、解雇に比べて有利な条件となる自主退職という選択肢が与えられていたから、なおさら事前に解雇理由や自主退職条件を確認する必要があった。しかし、会社が解雇予告の際に示した解雇理由は具体性に欠ける一般的・抽象的な内容であり、自主退職条件も明らかにされていなかった。また、会社は自主退職期限を通告から3日ないし5日(2ないし3営業日)後に設定しており、A1ら6名は短期間で自主退職を選択するか否かを強いられる状況にあったところ、解雇予告通知後の出社等が禁じられていたA1ら6名において、自ら具体的な解雇理由や自主退職条件等について協議や交渉等する機会は実質的に奪われていた。そうすると、組合が、自主退職期限までの喫緊の問題として、組合の指定した9.21団交において、組合員の解雇理由や自主退職条件等について協議や交渉等を行う必要性は極めて高かった。
 (2) 会社は、9.21団交前においては、団交時間に合意がある場合でも平均30分程度延長して交渉を行っていたこと、別の組合員の解雇日前の団体交渉要求には応じていたこと、実際の9.21団交は予定時間を超過して行われたこと、喫緊の必要性のある解雇予告通知問題を協議するための時間延長ができない具体的事情を説明していないことなどを総合すると、9.21団交の時間延長は十分可能であった。また、会社は、通告時点で各人の具体的な解雇理由の詳細を把握していたこと、自主退職期限や解雇日が迫った時点で解雇予告通知を行えば、直近に予定されていた9.21団交において、A1ら6名の解雇理由や自主退職条件等について協議するよう組合が要求することは予測可能であったことからすれば、会社は,組合の指定した9.21団交において、時間を延長し、あるいは時間配分を工夫するなどしてA1ら6名に対する解雇予告通知問題について実質的な協議を行うことが可能であった。
 (3) 以上によれば、A1ら6名に対する解雇予告通知問題は、自主退職期限が差し迫った状況にある9.21団交で協議すべき高度の必要性があったといえ、他方、9.21団交の議題として同問題を実質的に協議することは可能であったから、会社は,組合の指定した9.21団交において、同問題について実質的に協議すべき義務があった。
2 9.21団交において、A1ら6名に対する解雇予告通知問題について実質的な協議が行われたか
 (1) 会社は、9.21団交において、解雇予告に関する組合の抗議等に一応の対応をしているが、その内容は、具体的な説明を行わず結論のみを述べたり、抽象的かつ同一内容の説明を繰り返すものであったといえ、また、A1ら6名が自主退職を選択するかどうかの重要な要素である解雇理由や自主退職条件についても具体的に明らかにせず、A1ら6名に対する解雇予告通知問題については、そもそも9.21団交における協議対象とはしないとの姿勢に固執していたのであるから、9.21団交において同問題に関する実質的な協議を行うという組合の申入れの目的は達せられていない。
 (2) 会社は、組合の指定した9.21団交において同問題を実質的に協議すべき義務を負っていたのにこれを行わなかったのであるから、1名を除くA1ら5名の退職届提出後に開催された後の団体交渉で同問題が協議されたとしても、会社の対応に関する不当労働行為の成否は左右されないし、9.21団交後の3回の団体交渉を念のため検討しても、会社は、解雇理由の具体的説明を行っておらず実質的な協議を行ってもいない。
3 結論
 会社は、組合の指定した9.21団交において、A1ら6名に対する解雇予告通知問題を議題として実質的に協議すべき義務があったにもかかわらず、同問題について実質的な協議を行わずに組合の申入れに応じなかったのであるから、このような会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成24年(不)第80号 全部救済 平成25年8月6日
 
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