労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本アイ・ビー・エム 
事件番号  都労委平成24年不第80号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合、同東京地方本部、全日本金属情報機器労働組合日本アイビーエム支部 
被申立人  日本アイ・ビー・エム株式会社 
命令年月日  平成25年8月6日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社は、平成24年9月18日から20日にかけて、組合員X4ら3名に対し、技能や業績が低いとの理由による普通解雇を予告した。その際、会社は、指定する日までに自主退職の意思を示せば、自主退職扱いとすると通知し、X4ら2名に係る当該指定する日は同月21日とされていた。申立人組合は、同日に別件で団交が予定されていたことから、その団交の議題に上記2名を含む組合員に対する解雇予告の件も加えるよう求めた。本件は、会社が当該解雇予告の件を上記団交の議題としなかったことが、正当な理由のない団交拒否に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は会社に対し、文書の交付・掲示及び履行報告を命じた。 
命令主文  1 被申立人日本アイ・ビー・エム株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人全日本金属情報機器労働組合、同全日本金属情報機器労働組合東京地方本部及び同全日本金属情報機器労働組合日本アイ・ビー・エム支部に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社本社内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
年  月  日
   全日本金属情報機器労働組合
   中央執行委員長 X1 殿
   全日本金属情報機器労働組合東京地方本部
   執行委員長 X2 殿
   全日本金属情報機器労働組合日本アイ・ビー・エム支部
   中央執行委員長 X3 殿
日本アイ・ビー・エム株式会社
代表取締役 Y1
   当社が、平成24年9月18日から20日までの間に行った貴組合らの組合員に対する解雇予告の件を、同月21日に予定されていた団体交渉の議題としなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
    (注:年月日は、文書を交付又は掲示した日を記載すること。)

2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 被申立人会社が団交を拒否したかについて
 会社は、申立人組合の要求する解雇予告の件は、9月24日以降に団交に応じると回答したのであるから、団交を拒否してはいない旨主張する。
 しかし、X4ら組合員3名はわずか3日ないし5日という極めて短期間の間に自主退職か解雇かの選択を迫られていたのであり、団交が自主退職の意思を示す期限の後になってしまえば、自主退職か解雇かの選択に資することができないのであるから、本件においては、自主退職の期限までに団交を行うことに緊急の必要性があったと認められる。会社は、本件解雇予告の対象組合員に対し、従前から勤務成績の問題点を指摘してきたから、団交で解雇事由を説明しなくても自主退職の選択は可能であるとも主張するが、毎年の業績評価の説明は解雇理由の説明としてなされているものではないから、この主張は採用できない。
 以上から、会社は、可能な限り、自主退職の期限の前に団交に応じるべきであったということができ、同月21日の団交の議題としなかったことに正当な理由が認められない場合には、同月24日以降に団交に応じると回答していたとしても、正当な理由のない団交拒否に当たるといわざるを得ない。
2 9月21日の団交の議題としなかったことに正当な理由があるかについて
 会社は、9月21日の団交ではA部門の解散に伴う人事問題を協議し、時間延長はしない予定であったと主張する。しかし、同部門の解散が同月30日であったのに対し、組合員の自主退職の期限は同月21日又は24日であり、本件解雇予告の件のほうが緊急性が高かったことや、それまでの団交において「2時間延長なし」とされていた場合でも30分程度延長されることが多かったこと等からすれば、会社は交渉時間の延長を検討するなどして本件解雇予告の件を団交議題に加えるよう努力する必要があったというべきである。そして、実際、21日の団交ではA部門の人事問題について1時間40分ほど交渉した後、本件解雇予告の件について1時間程度のやり取りをしていることからすれば、会社が組合の申入れを受けた時点で本件解雇予告の件を議題とするよう調整することは十分に可能であったといえる。そうすると、会社の主張する事情は、本件解雇予告の件を団交議題としなかった正当な理由とは認められない。
 会社はまた、交渉担当者がA部門の解散への対応で極めて多忙であったから、交渉時間の延長は行わないこととしていたとも主張する。しかし、会社は多忙なことを承知の上で、その時期に解雇予告通知をしたとみざるを得ず、その場合には組合が団交を申し入れてくることは十分に予測可能であったと考えられること等を考慮すれば、会社の主張する事情は正当な理由とは認められない。
 なお、上記のとおり9月21日の団交で本件解雇予告の件についてのやり取りがなされているが、組合が要求した議題に係る実質的な交渉が行われたと認めることはできないから、このことは会社の対応が正当な理由のない団交拒否に当たるとの判断を左右するものではない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第61号 棄却 平成27年6月17日
 
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