労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  全日本海員組合 
事件番号  中労委平成26年(不再)第32号 
再審査申立人  全日本海員組合(「海員組合」) 
再審査被申立人  全日本海員組合従業員労働組合(「従業員組合」) 
命令年月日  平成27年5月13日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 従業員組合が、①海員組合において、従業員組合の組合員A1に対して平成25年6月1日以降の再雇用契約の更新拒否をしたことが労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、②同年4月25日及び5月7日に行った暫定労働協約の締結及びA1の再雇用契約の更新に係る団体交渉の申入れ(「本件団体交渉申入れ)に海員組合が応じなかったこと(「本件団体交渉拒否」)が、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事案である。
2 初審東京都労委は、上記申立てのうち、②の本件団体交渉申入れに応じなかった点に関する審査を分離して進め、本件団体交渉拒否は労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、海員組合に対して、本件団体交渉申入れに係る団体交渉応諾並びに文書交付及び掲示を命じたところ、海員組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令の概要  主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 
判断の要旨  1 本件団体交渉申し入れについて
 (1) 海員組合は、従業員組合からの暫定労働協約の締結及びA1の再雇用契約更新を議題とする平成25年4月25日付け申入れに対し何らの回答をせず、再度の同年5月7日付け申入れに対しても回答をせず、本件救済申立後の同年7月29日に至って、ようやく従業員組合が法適合組合であるか判断のしようがない旨の回答をなしたものである。このような海員組合の対応は、義務的団体交渉事項であることが明らかである本件団体交渉申入れに対し、3か月以上の長期にわたって、何らの回答もすることなくこれに応じなかったもので、団体交渉を拒否したものといわざるを得ない。
 (2) 従業員組合は、A1が、A2に対する統制違反処分に関する機密データの抜き取りに関わったとして海員組合から事情聴取を受けたことをA2に説明したことを契機として結成されたものであり、また、従業員組合の団体交渉申入れは、A1の再雇用契約の更新という組合員の労働条件に関する事項や暫定労働協約の締結という義務的団交事項を議題とするものである。
  これらの事実が認められる以上、海員組合が従業員組合との団体交渉を拒否したことには正当な理由はない。
 (3) 海員組合は、都労委に提出した答弁書の中で、従業員組合が利益代表者の参加を許すものであるとの疑いがある旨記載している。しかしながら、これは、本件団体交渉申入れに応じられない理由として、直接従業員組合に対する回答としてなされたものでない上、その内容も、単に利益代表者がいる疑いがあるというのみで、従業員組合に利益代表者が加入していることを疑うべき根拠を明らかにしてなされたものではない。海員組合は、再審査において、この点につき真摯な分析を加えていたため時間を要した旨主張するが、これを裏付ける証拠はない。
 (4) 以上のとおり、本件団体交渉申入れに対する海員組合の対応は、団体交渉の拒否に該当するとともに、団体交渉の拒否について正当な理由を認めることはできないのであるから、正当な理由のない団体交渉拒否として、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
2 本件団体交渉拒否に関する救済利益の有無について
 (1) 海員組合が、初審都労委第4回調査期日(25年11月18日)において団体交渉に応ずる旨述べたことから、従業員組合は、同月21日、従前の交渉議題に再雇用職員規定等を加えて団体交渉を申入れたが、海員組合は、その直後に、都労委の関与がなければ団体交渉に応じられないと通知したり、開催日時の調整について、自らが提示した日時を譲らず、従業員組合の要求した日時に応じられない理由も明らかにしない上、会場についても、海員組合本部の近郊を候補地としているのに遠方の従業員組合に確保させるなど、第1回団体交渉が開催されるまで、きわめて非協力的な対応をしている。
 (2) 団体交渉当日には、海員組合は、様々なことに疑念があるが都労委の助言もあったので団体交渉の席を設けた旨発言し、留保を付して交渉に応じたと受け取られる態度を示しており、今後の交渉日時や交渉担当者の設定についても、従業員組合の要求や提案に対する回答の根拠やその理由を具体的に説明しなかったのみならず、従業員組合との円滑な団体交渉関係を目指しているとはいいがたい強い不信感がうかがえる発言をしているものといえる。
 (3) 以上のとおり、第1回団体交渉に至る経緯及び当日の交渉の状況を併せて考慮すると、海員組合は、従業員組合との間の団体交渉に留保なく応じているとはいえない状況にあるうえ、今後の団体交渉関係の構築にきわめて消極的な姿勢であるといわざるを得ないものである。
 (4) さらに、第1回団体交渉以降の労使事情をみると、①26年2月5日の従業員組合からの団体交渉ルールの提案に対して、海員組合は、第1回団体交渉において説明したとおりであると回答しているにとどまること、②第2回団体交渉の会場についても、従業員組合は石川県での開催を要求し、海員組合は東京都内を主張して対立し、本件再審査結審時点において第2回団体交渉は実現しておらず、労働委員会において審査されていることからすると、従業員組合と海員組合との間の団体交渉関係が適切に構築されているとはいえない。
 (5) 上記判断のとおり、本件救済申立後の労使事情等をみても、海員組合の対応により、本件団体交渉の不当労働行為によって生じた状況は是正されたとはいえないから、本件団体交渉拒否に関する救済利益は失われていないというべきである。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成25年(不)第50号 全救 平成26年5月20日
 
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