概要情報
事件名 |
全日本海員組合(分離命令) |
事件番号 |
都労委平成25年不第50号 |
申立人 |
全日本海員組合従業員労働組合 |
被申立人 |
全日本海員組合 |
命令年月日 |
平成26年5月20日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人組合Yで再雇用職員として勤務していたX2は、Yから機密文書データの抜取りにかかわったとして事情聴取を受けたことを契機にX1らと申立人組合を結成し、Yにその旨通知した。その後、YはX2に対し、再雇用契約を更新しない旨を通告した。組合はYに対し、X2の再雇用契約の更新等に関する団交の開催を申し入れたが、Yはこれに応じなかった。組合はYの団交拒否及びX2の再雇用契約の不更新について不当労働行為救済申立てを行い、東京都労働委員会は団交拒否に関する申立てを分離して審査することとした。本件は、Yの上記団交拒否が正当な理由のない団交拒否に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委はYに対し、誠実団交応諾、文書の交付・掲示及び履行報告を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人全日本海員組合は、申立人全日本海員組合従業員労働組合が、平成25年4月25日及び5月7日に申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人組合は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、被申立人組合の従業員らの見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
記(省略)
3 被申立人組合は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 |
判断の要旨 |
被申立人組合Yは、申立人組合(以下「組合」)からの団交申入れに応じなかった理由について、①組合の結成目的が組合長X1の私怨を晴らすためであること及び②組合について利益代表者の参加を許す疑いがあることから、直ちに団交に応じることができなかった旨主張する。
そこでまず、上記①の理由について検討すると、X1はかつて3期6年間Yの中央執行委員を務めたが、副組合長選挙に落選した後、解雇され、その後、長期間にわたりYとの間で争訟を行っていることが認められる。しかし、組合は、Yの再雇用職員X2がX1に対する統制違反処分に関する機密文書データの抜取りにかかわったとして、Yから事情聴取を受け、X2がそのことをX1に説明したことから結成されたものと認められ、また、X2の再雇用契約の更新等という義務的団体交渉事項について団交を求めていることが明らかである。したがって、X1がYとの間で長期間にわたり争訟を行っていることを理由に組合の結成目的はX1の私怨を晴らすためであるとして、これをYが団交を拒否する正当な理由とすることはできないというべきである。
次に上記②の理由について検討すると、Yはある特定の管理監督者が組合に参加していることを指摘し、その者が利益代表者に当たると主張するのではなく、単に漠然と、組合員1名の氏名が明かされていないことを理由に利益代表者の参加を許す疑いがあるというにすぎない。また、利益代表者と疑われる者がいることによって、適正な団交が実施できない特別な事情があることも明らかにせず、しかも、実際には利益代表者に当たる者はいなかったのであるから、団交を拒否する正当な理由があったとは到底いえない。
以上のとおり、Yは組合が申し入れた団交に当初は回答すらせず、本件申立て後も正当とはいえない理由を述べて応じなかったもので、このことが正当な理由のない団交拒否に当たることは明らかである。 |
掲載文献 |
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