概要情報
事件名 |
ヤンマー |
事件番号 |
中労委平成25年(不再)第54号 |
再審査申立人 |
びわ湖ユニオン(「組合」) |
再審査申立人 |
X(「個人」) |
再審査被申立人 |
ヤンマー株式会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成27年4月15日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、会社が、① 業績悪化を理由に雇止めとした組合員A及びX(以下「Aら」)に対して、業績が回復し期間従業員の募集を再開した以降において、再雇用しなかったこと、② Aらに対する雇止めの撤回要求を趣旨とする団体交渉の申入れに応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審滋賀県労委は、本件救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。再審査において、組合はXを当事者として追加するよう申し立て、当委員会は、前記1の①の部分に限り、 Xを再審査申立人に追加することを決定した。 |
命令の概要 |
主文
本件各再審査申立てをいずれも棄却する。
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判断の要旨 |
1 会社が、業績悪化を理由に雇止めとしたAらに対して、業績が回復し期間従業員の募集を再開した以降において、再雇用しなかったことは、労組法7条1号の不当労働行為に当たるか。
(1) 会社がAらに対して平成21年2月15日付けで雇止めとした理由は、リーマンショックに端を発する不況による受注の落ち込みであったところ、雇止めとした同月時点においても、受注の回復について見通しが立たない状況にあり、会社が期間従業員の募集を再開したのは雇止めから約2年も経過した後であって、その間に、会社が、Aらに対して個別に、再雇用やその申込み等をする旨約するなど、景気回復後の再雇用を期待させるような言動をとった事実は認められない。
また、Aらが雇止め当時所属していた会社の小形エンジン事業本部において、Aらと同時期に雇止めとされた期間従業員は約300名であったところ、募集再開後、会社の募集に応じて採用された者の中に含まれていた元期間従業員は数名にすぎない。しかも、これらの者は、ハローワークの募集に応募して採用されたものであり、会社が、Aらと同時期に雇止めとした元期間従業員に再雇用の申込み等をし、あるいは、ハローワークにおける募集手続外で元期間従業員からされた再雇用の申込みに応じたなどの事実は認められない。 加えて、会社において、Aらと同時期の雇止めを含めて不況や業績悪化等を理由に雇止めとされた元期間従業員が、募集再開後に希望すれば、特段の事情のない限り再雇用されていたなどといった事実は認められない。
以上によれば、Aらが、期間従業員の募集再開以降において、会社に再雇用されることにつき合理的な期待を有していたと認めることはできない。また、以上に加え、期間従業員の募集を再開した後、会社が再雇用の申込み等をせず、あるいは、雇止め撤回又は再雇用の要求に応じなかったことが、従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないなどの特段の事情があるとして労組法7条1号にいう不利益な取扱いに該当するものと認めるに足りる証拠はない。
(2) 会社は、平成24年5月30日の団体交渉においても回答しているとおり、 期間従業員を新たに採用する場合、ハローワークを通じて広く一般に募集を行い、所定の手続を経て選考の上採用していたところ、募集再開後、Aらと同時期に雇止めとされた元期間従業員のうち数名が会社に期間従業員として雇用されたのは、ハローワークを通じて応募したからであるのに対し、Aらが雇用されなかったのは、ハローワークを通じて応募しなかったからである。
そして、本件全証拠によっても、会社が、Aら以外の元期間従業員に対しては再雇用の申込み等をする一方で、Aらに対してのみこれらを行わなかったなど、雇用に関して、Aら以外の元期間従業員に対する取扱いと差別して、Aらのみを殊更不利益に取り扱ったというような事実は認められないのであるから、会社が再雇用の申込み等をしなかったことが、Aらが組合の組合員であることを理由とするものであると認めることはできない。
(3) よって、会社が、Aらに対して再雇用しなかったことは、労組法7条1号の不当労働行為に当たらない。 2 会社が、Aらに対する雇止めの撤回要求を趣旨とする団体交渉の申入れに応じなかったことは、労組法7条2号の不当労働行為に当たるか。
裁判所や労働委員会において、Aらに対する雇止めが合理的な業務上の必要性もなく行われたものであるということはできないことや、権利濫用に当たるとも不利益取扱い等の不当労働行為に当たるとも認められないことが重ねて判断され、Xが提起した民事訴訟やAらが雇止め当時所属していた別組合が申し立てた不当労働行為審査手続においては、判決や命令が既に確定していた。そうすると、平成24年8月3日付け本件団交申入れ当時、Xが提起した民事訴訟とほぼ同内容の事案であったAに係る民事訴訟(当時、最高裁係属)についても、遠くない時期に最高裁の判断が示され、しかも、その結論が変わり得る可能性はかなり低いと会社が考えたとしてももっともな状況にあったということができる。そうした中で、従前から組合により繰り返しなされてきた雇止め撤回要求に応じてこなかった会社が、同年5月30日に行われた団体交渉の場で、Aらに対する雇止めについて、民事訴訟において請求棄却の判決が出され、現在、Xについては上告却下等がされ、Aについて最高裁で審議中であることから、裁判で解決を図るものと認識しており、団体交渉で解決する考えはない旨回答し、組合の要求を受け入れなかったことは不当であるということはできない。そして、それまでの経緯に鑑みれば、雇止めの撤回という要求事項については、上記団体交渉の時点で、実質的に決着済みの状態になっており、交渉を行っても別異の解決がされる見込みはなかったものと認めるのが相当である。
それにもかかわらず、組合は、雇止めは滋賀労働局に対するAの申告を理由とするものであるという従前の主張を前提として本件団交申入れをしたものであるから、会社が本件団交申入れに応じなかったことに、正当な理由がないとはいえない。よって、会社が本件団交申入れに応じなかったことは、 労組法7条2号の不当労働行為に当たらない。 |
掲載文献 |
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