概要情報
事件名 |
言語交流研究所 |
事件番号 |
中労委平成25年(不再)第59・64号 |
再審査申立人 |
一般財団法人言語交流研究所(「研究所」) |
再審査申立人 |
全国一般大阪地方労働組合言語交流研究所職員労働組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
全国一般大阪地方労働組合言語交流研究所職員労働組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
一般財団法人言語交流研究所(「研究所」) |
命令年月日 |
平成27年2月18日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、研究所が、①団体交渉に誠実に対応しなかったこと、②組合を非難する発言等をしたこと、 ③組合員らに対して担当業務の変更、手当の減額、自宅でのレポート作成及び雑用を命じたこと、降格及び手当の減額をしたことが不当労働行為であるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、組合が労組法上の労働組合であると判断した上で、①団体交渉への誠実応諾、②組合を非難しないこと、③組合員らに対する担当業務の変更、手当の減額、降格がなかったものとしての取扱い及び手当の既払額との差額支給、④文書掲示等を命じ、その余の申立ては棄却する旨の初審命令書を交付したところ、研究所と組合は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。 |
命令の概要 |
1 主文(初審の主文を変更)の要旨
組合に対する4つの発言等のうち、2つの発言等は救済申立て期間を徒過したものとして却下し、研究所の団体交渉における対応及び組合員に対して自宅でのレポート作成を命じたことは不当労働行為ではないこと並びに組合員が退職したことから初審命令の主文を変更した。 |
判断の要旨 |
1 各種手当の引下げに関する団体交渉における研究所の対応は、不誠実な団体交渉に当たるか。
組合は、就業規則の改定は不利益変更になると反対しながらも、組合としての意見書を提出せず、また具体的な意見を述べたり、対案を示すなどして改善を求めていた様子はうかがえない。他方、研究所としては、3か月余りの間に5回開催された団体交渉において、組合の意向を確認しつつ一定の説明を行ってきたと考えられるところであるから、不誠実な団体交渉には当たらない。
2 管理部長らが組合の結成等について発言したことは、支配加入に当たるか。
(1) 平成21年6月26日の発言及び同年11月19日の書簡については、平成22年12月1日の本件救済申立て時点で既に1年間の申立期間を徒過していることから、却下する。
(2) 平成21年12月28日に開催された組合員を含む研究所のほぼ全職員45名が参加した研究所の納会において、管理部長が、組合の結成は卑劣なだまし討ちであるなどと発言したことは、同人の個人的な感想であったとみることはできず、その内容及び上記発言の場所等を併せ考えれば、組合の結成を非難したものである。また、同部長は、組合の結成以来、上記発言に至るまで、研究所の代表の意を体して、組合非難する発言を繰り返している。
これらからすれば、管理部長の納会における上記発言は、研究所の職員に対し、代表の意を体して、組合への加入を妨げるものであり、支配介入に該当する。 3 研究所が組合員らに対して担当業務の変更、手当の減額、自宅でのレポート作成及び雑用を命じたこと、降格及び手当の減額をしたことは、不利益取扱い及び支配介入に当たるか。
(1) 研究所が、一旦A2の能力を認めて受付・印刷業務から会員管理業務に従事させたものであるにもかかわらず、組合の結成以後、組合を非難する発言を繰り返す中で、業務上特段の落ち度もない同人に、合理的な理由もなく従前の受付・印刷業務に戻したのであるから、A2が書記長であることを嫌悪して精神上の不利益を与えた不利益取扱いに該当する。
(2) 研究所は、組合の結成以後、組合を非難する発言を繰り返す中で、A1に対し、課長としての待遇のまま、同人の経験を生かした配置転換をした後、合理的な理由もなく、役職手当と資格手当を引き下げ、月例賃金で9000円を減額したのであるから、A1が副執行委員長であることを嫌悪して経済上の不利益を与えた不利益取扱いに該当する。
(3) 研究所は、組合の結成やその活動を非難する中で、A3に自宅でのレポート作成を命じたが、同人が組合員であると認識していたとはいい難いから、不当労働行為ではない。 しかしながら、A3が組合への加入を明らかにし、職場復帰した後、合理的な理由もなく付随業務である台所掃除等の雑用のみを命じたことは、同人が組合に加入したことを嫌悪して業務上や精神上の不利益を与えた不利益取扱いに該当する。
(4) 元理事であったA3及びA4に対する降格及び役職手当の減額については、同人らと現理事体制との経営方針を巡る争いの面もうかがえなくはないが、組合への加入を非難するとともに、合理的な理由もなく降格し、役職手当を減額したのであるから、A3及びA4が組合に加入したことを嫌悪して身分上や経済上の不利益を与えた不利益取扱いに該当する。
(5) また、上記(1)ないし(4)は、組合に加入したり組合活動を行ったりすると、合理的な理由もなく従前の担当業務に戻される、賃金を減額される、雑用のみを命じられる、降格や役職手当が減額されるというような不利益な取扱いが行われるということを示すことによって、組合員や他の職員への見せしめとなり得るものであるから、それぞれ組合の勢力を削ぎ、その弱体化を図ったものでもあり、支配介入にも該当する。
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掲載文献 |
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