概要情報
事件名 |
言語交流研究所 |
事件番号 |
都労委平成22年不第115号 |
申立人 |
全国一般大阪地方労働組合言語交流研究所職員労働組合 |
被申立人 |
一般財団法人言語交流研究所 |
命令年月日 |
平成25年7月16日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
①賃金の改定等に関する団交における被申立人法人の対応、②法人が申立人組合の結成等について組合及び組合員を非難したこと、③法人が組合の書記長X3の担当業務の変更、副執行委員長X2の賃金の減額などをしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
東京都労委は法人に対し、1 賃金の改定に関する団交に誠実に応じること、2 上記②の行為による組合の組織及び運営に対する支配介入の禁止、3 X3の担当業務の変更をなかったものとして取り扱うこと等、4 X2に対する賃金減額をなかったものとして取り扱うこと等、5 組合員X4及びX5に対する降格人事をなかったものとして取り扱うこと等、6 文書の交付・掲示、7 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人一般財団法人言語交流研究所は、申立人全国一般大阪地方労働組合言語交流研究所職員労働組合が申し入れた、平成22年4月1日から改定実施した就業規則による職員の賃金改定に関する事項に係る団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人法人は、申立人組合の結成、申立外全国一般大阪地方労働組合への加盟などについて、申立人組合や申立人組合の組合員を非難するなどして、申立人組合の組織及び運営に支配介入してはならない。
3 被申立人法人は、申立人組合書記長X3に対する担当業務の変更をなかったものとして扱い、同人を全国運営本部総合デスク部会員管理業務に復帰させなければならない。
4 被申立人法人は、申立人組合副執行委員長X2に対する22年5月分以降の賃金引下げをなかったものとして扱い、同人に対し、従前支払われていた賃金額に基づいて算出した22年5月分以降の賃金相当額と、既支払賃金額との差額を支払わなければならない。
5 被申立人法人は、申立人組合の組合員X4及び同X5に対する22年10月1日付降格人事をなかったものとして扱い、同人らに対し、同日から23年5月31日までの間に、降格がなければ支払われるべきであった賃金相当額と、既支払賃金額との差額を支払わなければならない。
6 被申立人法人は、本命令書受領の日から1週間以内に下記の内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、法人本部内の法人職員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
記
年 月 日
全国一般大阪地方労働組合言語交流研究所職員労働組合
執行委員長 X1 殿
一般財団法人言語交流研究所
代表理事 Y1
当法人が、平成22年4月1日から改定実施した就業規則による職員の賃金改定に係る貴組合との団体交渉において不誠実な対応をしたこと、貴組合の結成、全国一般大阪地方労働組合への加盟などについて貴組合及び貴組合の組合員を非難する言動を行ったこと、貴組合書記長X3氏に対して担当業務を変更したこと、同副執行委員長X2氏に対して賃金を減額したこと、同組合員X4氏及び同組合員X5氏に対する22年10月1日付降格並びにX4氏に対して自宅でのレポート作成及び台所掃除等の雑用を命じたことは、東京都労働委員会において、いずれも不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
7 被申立人法人は、第1項及び第3項ないし第6項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
8 その余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 団交における被申立人法人の対応について
平成22年3月25日の団交において法人の管理部長Y2が各種手当の改定については9月の決算の状況も加味して実施したいと述べたにもかかわらず、法人は同年5月10日、全職員に対し、家族手当等の改定を6月から行うことなどを通達した。このような対応は、団交における説明内容を後日、一方的に覆すものといわざるを得ない。また、申立人組合が5月19日の団交で、一方的な改定就業規則の実施だとして抗議し、実施の理由について説明を求めたのに対し、法人は国の子ども手当支給が6月実施だからと回答するのみで他に明確な理由について説明しなかった。以上のような法人の対応は、不誠実な団交に当たる。
2 組合の結成等について非難したことについて
平成21年6月、法人の職員を対象とした「経営状況に関する報告」の説明会において、Y2らは組合の結成趣意書や構成員に問題があるなどと述べるとともに、法人の代表理事Y1が組合が嫌悪していると思われる旨を指摘し、さらに組合三役について降格もあり得ることを示唆するような発言をした。これは組合結成を非難する言動であり、また、部長職にある者が公式の場で述べたものであるから、個人的見解とは到底みられない。
この発言のほか、同年11月のY2から組合の執行委員長X1への書簡の送付、同年12月の東日本本部納会におけるY2の挨拶などは、いずれも法人が組合の影響力が高まることを懸念し、これを抑制することを企図したものであり、組合の組織及び運営に対する支配介入に当たる。
3 組合の書記長X3の担当業務を変更したこと等について
平成21年12月、法人はX3に対し、会員管理業務担当から受付・印刷業務担当への変更を命じた。その際、告げられた理由は、会員管理業務は法人の機密情報を扱う業務であり、それを組合員、ましてや書記長であるX3に任せるわけにはいかないというものであった。
しかし、法人が機密性の高い情報を保護するためにX3の担当業務を変更する必要があったとは認められない。そうだとすれば、前記2の判断を併せ考えると、組合員ないし組合幹部が法人の秘密を漏洩するおそれが高いと殊更に問題視することによって、組合員の配置される職域を不当に狭めるものであり、組合の組織及び運営に対する支配介入に当たる。
21年12月、組合の副執行委員長X2は、Y2から役職手当と職務(資格)手当の減額を言い渡された。法人は、その理由について、20年10月のX2の配置転換後、同人の業務の見直しを行った結果、課長職の行う業務内容ではないと判断した、職務(資格)手当が突出して高いので是正が必要であったなどと主張する。しかし、当該配置転換は同人のキャリアアップのために行ったものとみられるのであるから、後でその業務を見直したところ、課長職の業務内容とはいえないのでそれに見合った賃金とするという説明は、およそ合理性のあるものとはいえない。また、法人全体の職について職務(資格)手当の見直しを行った事実は認められない。
X2の賃金減額の時期は組合が結成されてから、法人が前記2のとおり支配介入を行った時期に重なっている。このことと上記のとおり賃金減額の理由に合理性がないこととを併せ考えると、当該賃金減額は同人が組合員であるが故に行われた不利益取扱いであり、また、組合の組織及び運営に対する支配介入にも当たる。
4 組合員X4及び同X5に対する降格人事について
法人が、X4及びX5を降格し、役職手当を減額したことには、業務上の必要性及び合理的な理由があったとは認められず、同人らが組合員であることを理由として行われたことは明らかである。したがって、本件降格及び役職手当の減額は、同人らが組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、こうした取扱いを通して組合活動に打撃を与えることを企図したものであり、組合の組織及び運営に対する支配介入にも当たる。 |
掲載文献 |
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