労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ジャレコ外1社 
事件番号  中労委平成25年(不再)第31・34号 
再審査申立人  連帯労働者組合(「組合」) 
再審査申立人  X(個人) 
再審査申立人  株式会社EMCOMホールディングス(「EM社」) 
再審査被申立人  株式会社EMCOMホールディングス(「EM社」) 
再審査被申立人  株式会社ジャレコ(「会社」) 
再審査被申立人  連帯労働者組合(「組合」) 
再審査被申立人  X(個人) 
命令年月日  平成27年2月18日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事案概要  1 本件は、会社及びEM社が、①X組合員に対する解雇予告(以下「本件解雇予告」)に関する団体交渉(以下「団交」)に応じなかったこと、②X組合員を解雇したことが不当労働行為であるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、上記①は労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たり、会社がX組合員を解雇したことは労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たると判断して、会社に対し、本件解雇がなかったものとしての取扱い、Xの原職相当職への復帰、バックペイ並びに本件解雇及び団交拒否に関する文書交付、EM社に対し、団交拒否に関する文書交付を命じたところ、組合ら及びEM社は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。 
命令の概要  1 初審命令のうち、EM社に対し文書交付等を命じた部分を取り消し、同社に係る救済申立てを棄却する。
2 組合らの本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 EM社の労働組合法第7条の使用者性について
 (1) 労働組合法第7条にいう「使用者」は、同法が助成しようとする団交を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味し、労働契約上の雇用主が基本的にこれに該当するものの、必ずしも同雇用主に限定されるものではない。 雇用主以外の者であっても、 当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、その限りにおいて同条にいう 「使用者」 に当たると解される。
 (2) 本件解雇予告当時、EM社は、会社の全株式を保有する等して、資本関係及び役員の派遣を通じて、親会社(純粋持株会社)として会社に対し、その経営について一定の支配力を有しており、子会社の意思決定に対する事前承認制度に基づいて会社の経営に関与していたが、これは、EM社が純粋特株会社として、株式の所有を通じて子会社の事業活動を支配することを主たる事業としていたことによるものであり、EM社は、株主の権限を越えて会社の経営に関与していたとはいえない。
 (3) 会社の従業員であるX組合員の基本的な労働条件に対するEM社の支配力の有無についてみると、組合員の賃金等の労働条件については、組合と会社による団交を経て、両者の協定によりその内容が決定されていたから、会社が主体となって決定しており、EM社はこれに関与していない。 また、EM社が、会社の従業員の業務遂行に対して指揮命令等を行ったという事実はうかがえない。 さらに、子会社の従業員の人事、労働条件の決定に関しては、EM社の事前承認は必要とされておらず、子会社が自ら決定すべきものとされていたといえる。以上によれば、会社の従業員の労働条件については、会社のみがこれを支配し決定することができる地位にあったというべきであって、EM社が会社の従業員の基本的な労働条件等について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を及ぼしていたとはいえない。
 (4) 本件解雇に対するEM社の支配力の有無についてみると、本件解雇は、会社がゲーム事業のうちモバイル事業から撤退したことによるものであって、このことは、業績不振に陥ったEM社が経営改善策の中で、ゲーム事業をグループの中核事業から外したことを契機としたものであることは否定できない。 しかし、EM社の経営改善策は、ゲーム事業のどの部分を縮小あるいは廃止するかを具体的に示したものではなく、また、会社のモバイル事業からの撤退は、EM社の事前承認の対象とはされていなかったことからすれば、モバイル事業からの撤退や本件解雇については、会社が決定すべきものとされていたとみるべきである。 以上のことからすると、モバイル事業部を廃止し、X組合員を含む同事業部に所属する従業員を解雇することを決定したのは、会社であって、本件解雇について、EM社が雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を及ぼしていたとはいえない。
 (5) 以上のとおりであるから、EM社が、X組合員の基本的な労働条件や本件解雇について、労働組合法第7条の使用者に該当するということはできない。 したがって、初審命令主文のうち、EM社に対し文書交付を命じた部分を取り消し、それに伴い、同社に対し上記文書交付の履行報告を命じた部分も取り消し、EM社を被申立人とする組合らの本件救済申立てを棄却するとともに、本件について同社を再審査被申立人とする組合らの再審査申立てを棄却する。
2 会社の団交拒否及びその救済方法等について
 (1) 組合らは、初審命令の救済方法として団交応諾が命じられていないことを不服として再審査を申し立てたものであるが、救済方法の当否を判断する前提として、会社の団交拒否に係る不当労働行為の成否を判断すると、当委員会も、初審と同様、会社の団交拒否は労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当すると判断する。
 (2) 団交議題とされた本件解雇については、初審命令主文において、X組合員の雇用主である会社に対し、解雇がなかったものとして取り扱うこと等、解雇に対する救済としては必要かつ十分な原状回復措置が命じられており、団交応諾を命じるまでの必要性はない。 したがって、会社の団交拒否の救済としては、今後の同種の不当労働行為の再発を防止するべく、初審命令主文のとおり文書交付を命じるのが相当であるから、組合らの再審査申立てには理由がない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成19年(不)第93号 全部救済 平成25年3月19日
 
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