概要情報
事件名 |
大阪市(組合事務所団交) |
事件番号 |
中労委平成25年(不再)第74号 |
再審査申立人 |
大阪市(「市」) |
再審査被申立人 |
大阪市労働組合連合会(「市労連」) |
再審査被申立人 |
大阪市従業員労働組合 |
再審査被申立人 |
大阪市立学校職員組合 |
命令年月日 |
平成27年2月18日 |
命令区分 |
全部変更 |
重要度 |
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事案概要 |
1 組合らは、市本庁舎地下1階の一部を、使用許可を受け、組合事務所として継続的に使用してきた。本件は、市が、組合らに対して、上記スペースにつき平成24年度以降は使用許可をしないこととし、退去を求める旨通告したこと等を受け、組合らが市に対して申し入れた団体交渉(以下 「本件団交申入れ」) に市が応じなかったことが労組法第7条第2号の不当労働行為であるとして、救済申立てが行われた事案である。
2 初審の大阪府労委は、 本件団交申入れに応じなかったことはいずれも労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、市に誠実団交応諾及び文書手交を命じたところ、市は、これを不服として再審査を申し立てた。 |
命令の概要 |
1 主文要旨
初審命令主文を変更し、市に、組合らが申し入れた本件団交申入れにつき、交渉事項を確認することなく拒否してはならない旨及び文書手交を命ずる。
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判断の要旨 |
1 市労連は、本件の申立人適格を有するか。
(1) 労組法第7条の不当労働行為救済制度の申立人適格を有する労働団体は、労組法上の労働組合に限られているところ(労組法第5条第1項)、労組法上の労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体のことであり(同法第2条)、同条において、連合団体は、申立人適格を当然に認められている。
労組法の適用が除外されている一般職の地方公務員も、憲法第28条の「勤労者」であり、かつ、労組法第3条の「労働者」であるといえるところ、ただ、その職務の性質に鑑み、例外的に労組法の適用が除外されているにすぎない。 連合団体が、そのような地方公務員を組織する職員団体が加入するいわゆる混合連合団体であっても、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的としている点で、その他の連合団体との間に違いはない。
そして、実態として、混合連合団体は、単位労働組合の組合員のために使用者と団交するなどの活動をしており、使用者が団交を不当に拒否すれば、当該組合員らの団結権を侵害する結果となるのであるから、労組法適用組合員に関わる問題について、不当労働行為救済制度の申立人適格を有していると考えるのが相当である。
(2) 本件は、市労連の組合活動の拠点に関わって申し入れられた団交を市が拒否したとして申し立てられた事件であって、労組法が適用される組合員に関わる事項が問題となっているから、市労連に本件の申立人適格を認めるのが相当である。 2 市が本件団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか
(1) 地公労法が適用ないし準用される地方公務員を組織する労働組合との間の団交における交渉事項は、 地公労法第7条本文に規定されている事項に限られるものではなく、労使関係の運営に関する事項についても義務的団交事項となり得るものと解されるが、管理運営事項そのものについては団交の対象とはなし得ないと解される。
(2) 組合らによる本庁舎スペースの組合事務所としての使用に関しては、毎年度ごとの使用許可を受けて、長年継続的に使用されてきたのみならず、市側から組合らに対して使用料の減免率の見直しを申し入れ、協議の上、合意し確認書が取り交わされてきたこと、さらに、組合らに対する23年度の使用許可書には、24年度以降の使用料の減免率についても記載し、24年度以降における組合事務所の継続使用の方針を示すなど、組合事務所をめぐる労使関係は、市側においても積極的な関わりをもって形成されてきたものといえる。 そして、市が組合らに対して、上記スペースからの退去を求めることは、従前の方針を一転させ、現実に形成されてきた労使関係事項を市側から急激に変更させるものであるところ、地公労法第2条の趣旨にも照らせば、市としては、労使関係の安定への配慮が求められ、その理由を説明したり、労使関係の円滑な運営に向けた協議を行うなどして組合らに理解を求めるといった対応をとることが本来的に要請される立場にあったというべきである。
本件団交申入れに係る申入書の記載は、団交事項について幅広い記載がなされ必ずしも明確ではないものではあるが、市は、積極的な関わりをもって形成してきた組合事務所をめぐる労使関係事項を変更するに当たって、労使関係の安定に配慮した対応をとることが求められてしかるべき立場にあったところ、また、市の方針転換によって、組合らに様々な問題が生じ得ることも予想されるといった状況の中、市が組合らから受けた各申入書の記載内容は、行政財産の使用許可を与えるか否かという事項に限定されるものとは断じ難く、当時の市の担当者も申入書の記載には、いろいろ含まれ得るとの認識であった上、市が作成した労働組合等との交渉等に関するガイドラインでは、交渉等に関して疑義が生じた場合は、総務局と連携を図りながら対処するものとされていたなどの本件事情の下では、市としては、少なくとも組合らが求める団交事項が、行政財産の目的外使用許可を与えるか否かという事項に限られるものかどうか、管理運営事項に該当しない交渉事項としてどういったものがあるのかを確認するなど団交事項を整理した上で団交に応じるべきかを判断するなどといった対応をとることが求められていたというべきである。それにもかかわらず、本件団交申入れについて、そうした確認をすることもなく、全体が管理運営事項に該当すると決めつけて、団交に応じなかったという市の対応は、正当な理由のない団交拒否であったといえ、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 |
掲載文献 |
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